ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2018年7月13日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
主婦C子さん(33歳)は、結婚後10年を共にしてきた夫の不貞が許せなかった。
相手が見知らぬ女性ならまだしも、C子さんの学生時代からの親友と深い仲となっていた。しかも、その事実を突きつけたときに夫は「すまない、彼女を深く愛してしまったんだ」とまでいった……。
離婚はまぬがれなかった。
当初、C子さんは、裁判沙汰にして不貞の二人をこてんぱんにしてやろうかと思った。だが、夫が素直に自分の非を認め、慰謝料の支払いや家をはじめとした財産分与もしっかり行うと約束したため、当事者間で離婚手続きを粛々と進めた。そして、C子さんは、約束どおりに相応の現金を手にし、きれいさっぱり別れる運びとなった。
ただ、新婚時代に夫名義で購入したクルマだけは現金化せずにC子さんが現物でもらい受けることにした。C子さんはとりあえず郊外にある実家に身を寄せることにしたので、当面の日常の足としてクルマは必須と考えたからだ。古いクルマだが、すぐに使えるのは都合がいい。
籍を抜いたあとでクルマを引き取りにいったとき、元夫はこういった。
「廃車も近いことだから、わざわざ名義変更することもないだろう。面倒だし。イヤじゃなかったら、そのまま廃車になるまで乗り続けてくれ」
「あと、自賠責はあと2年分残っているので、これも満期までそのままにしておいても大丈夫だろう」
「問題は任意保険だけど、ずうっと無事故できたから割引率がかなり大きい。いまのまま付けておくのが一番だろう。なので、これもオレが自賠責の期限に合わせて2年間は延長して払い続けることにするよ。お詫びのひとつとして…」
C子さんは、「当然よ」と思ったが、「ありがとう、助かるわ」と大人の対応をし、その申し出を素直に受け入れた。
それから数ヵ月、C子さんは、まだ癒えぬ心の傷を抱えながらも親元でそれなりに元気に暮らした。知り合いのつてで近隣の会社への就職も決まった。時間の経過とともになんとか自分なりの充実した生活が営めそうな予感があった。
が、油断大敵。ある日、C子さんは交差点で信号待ちしていたクルマに追突するという事故を起こしてしまう。相手のクルマのドライバーは重度のむち打ちとなり、双方のクルマがそれなりに損傷するという事態となった。
C子さんに100%の過失責任がある事故であることは明かだった。そのこと自体が悲劇的だったわけだが、以降に起きたことは、C子さんにとってはさらに悲劇的なことに思えた。
なんと、任意保険で事故の補償が降りないことが判明したのだ。実は、元夫がかけ続けていた任意保険は夫婦限定のもの。赤の他人となったいまでは、対人賠償も対物賠償も車両保険も一切使えないということが分かった。
不幸中の幸いというべきか、被害者のむち打ちの治療費および慰謝料については自賠責で限度額までは出ることになったものの、限度額をオーバーした分とクルマの修理代などはすべてC子さんが支払わなければならなかった。
C子さんは、元夫の不手際と自分の確認不足を呪った。そして、元夫からの慰謝料や財産分与のお金が大きく目減りすることを悲しんだ。
それにも増して、なによりイヤだったのは、元夫名義の自賠責を使う手続きのために、別れたての元夫に協力を仰がなければならないことだった。あんな奴に助けを乞うなんて……。
元夫の新しい自宅に電話をすると、コール3回で相手がでた。
「はい、もしもし、◎◎です…」
それは元親友の声だった。
おざなりになりがちな
自動車保険の扱い
離婚による財産分与の形は、離婚の原因によってさまざまあるようですが、それ自体はけっこう厳密に行われます。預貯金・有価証券などはもちろん不動産なども、当然その対象となります。
クルマも、結婚生活のなかで購入したのであれば、一方の名義であっても共有財産とみなされ、財産分与に組み込まれるようです。
(C子さんの場合、クルマの価値は無いも同然なので、正確には財産分与とはちょっと違い、譲渡ということになります)
さて、財産分与や譲渡などについてはかなり細かく行いながら、枝葉のところでおざなりになるものがあります。
たとえばクルマでいえば、売却して分与とせず、C子さんのように乗り続けるという場合、自動車保険などがどうもおざなりになってしまう……そういうことがあるようです。
そして、事故などが起きたとき、保険が効かないといった事態を招き、天を仰ぐことになるわけです。
名義変更をしなくても
自賠責の補償はでるが……
まず、自賠責保険のことから見て行きましょう。
C子さん、本来であれば、クルマを譲り受けたときに、間を置かずクルマの名義を自分の名前にしておくべきでした。「廃車が近いので変更しなくていい」という話はまったく筋が通りません。罰則はないせよ、これは明らかな法律違反ということになります。
そして、同様に自賠責の名義変更もしておくべきでした。じつは、自賠責はクルマに付けるものなので、名義がだれであれ、事故で相手を死傷させたときの補償は限度額まではでるようになっています。
しかし、だからといって、名義変更しなくてもいいということにはなりません。後に起こるかもしれない事故のことを考えれば、やはりすぐに名義変更をしておくべきだといえます。
もし、C子さんのように、自賠責の名義が変更されていないままに事故で相手を負傷させたとすれば、その補償のためには、手続き上、名義人(=別れた相手)の協力がどうしても必要となります。そうなれば、まさに弱り目に祟り目。「もう二度と顔も見たくない」と思っていたとしたら、事故のショックに加えてさらなる精神的苦痛を味わうことになります。
ということで、離婚するときにクルマを譲り受けたのであれば、面倒ではあっても、クルマと自賠責の名義変更を忘れずに行うことです。心情的にも、名義変更でさっぱりした方が気持ちよくクルマに乗れるというものです。(後編に続く)
離婚のとき、クルマの保険はどうすべき?(前編)
離婚のとき、クルマの保険はどうすべき?(後編)
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
【今回の「どういうこと?」ストーリー】Kさん(60歳・店舗経営)は、パラサイト・シングルの息子(30歳・会社員)を家から追い出すことに決めた。息子は一応、小…
2021.11.25更新
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
飲酒運転事故の被害者は加害者の保険で救われる前編で紹介したとおり、Qさんは、法律違反の酒気帯び運転によって他人のクルマに損害を与えてしまいました。さて、こ…
2017.07.11更新
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
【今回のやっちゃったストーリー】免許取り立てB子さん。はじめての遠出の目的地は春の息吹が感じられる山奥の温泉地。冬の疲れと日ごろの疲れを一気に癒やすためのベス…
2016.03.18更新
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
今回のやっちゃったストーリーEさん(50歳男性・会社員)は運転歴30年。これまで壁をこする小さな自損事故を起こすことはあったし、駐車違反やちょっとしたスピー…
2016.06.14更新
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
前編のストーリーに出てきた男の手口は、典型的な非接触系の当たり屋のものといえます。Pさんは、そうと気づかず、男の演技と口車にまんまと乗せられ、示談金として1万円…
2022.07.07更新
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
借りた代車で事故などを起こしてしまったとき、どうなるのか?……そのときに大きく関係するのは、その代車の自動車保険がどうなっているのかということです。一律ではな…
2022.03.10更新