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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2018年4月13日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
休日のロングドライブが趣味のZさん(48歳・会社経営)は、最近、話題になっているドライブレコーダーを愛車に装着させた。万が一の事故の際に役立つということもあったが、なにより、ロングドライブの映像を思い出の記録として残したいという思いが強かったからだ。
ところが、はじめてそのドライブレコーダーを装着してのロングドライブの日、Zさんは、主目的ではないほうのころでドライブレコーダーの威力を知ることになる。
それは、家をでて3時間ほど走った、まったく人気の少ない風景明媚な県道の交差点での出来事だった。走行方向の信号が青だったので、Zさんはそのまま走り抜けようとしたところ、突然、左側から信号無視のクルマが走ってきた。
ガシャーン!
Zさんのクルマはノーズを大破させて横に約1回転半してストップした。Zさんはといえば、エアバッグが開いたお陰で大きなケガはなかったものの、しばし茫然自失。数秒して、じわじわと怒りがこみ上げてきて、ヒビの入ったフロントガラス越しに相手のクルマのほうをキッと見やると、やはり同じような状態で止まっていた。そして、周囲を見わたすと、ほかに走行しているクルマがなかったので、それ以上の事故が起こる恐れはないということも確認できた。
「もう、なにやってんだよ、バカモノが……」と独りごちながら、相手のクルマのドライバーに詰め寄るべく外にでようとすると、ドアが開かない。「あれ?」。仕方がないので、助手席側のドアから外にでようと、もそもそしていたのだったが、そのうちに相手の30代らしき小太りの男性ドライバーが外にでて、Zさんのクルマに近づくなり、こう大声でいい放った。
「おい、あんた、信号無視してんじゃないよ! どうしてくれるんだ、オレのクルマ、ええ?」
そして、その男はそのまま「あのお、信号無視して走ってきたクルマとぶつかっちゃいまして……」と、薄ら笑いの顔でZさんを眺めながら警察に電話を入れはじめたのだった。
Zさんは、呆気にとられた。
〈いったい、なにをいっているんだ、こいつは?〉
これまで、会社を経営するなかで、数々の非道な連中に出会ってきたが、これほどストレートな悪と遭遇するのははじめてのことだった。Zさんのカラダは激しく震えた。それは、怒りからなのか、恐ろしさからなのか、自分でもよくわからなかったが、とにかく尋常ではないマイナス感情に全身が包まれていた。
〈ど、どうしてくれようか!〉
Zさんは、クルマのなかに座ったまま、警察になにをどう話すかの練習を頭のなかで必死にはじめたのだった。
しかし、その練習はムダになった。
真実が、じつにあっけない形で明らかになったからだ。
やってきた警官が、車中に閉じ込められたZさんを助けだしてくれたとき、ひび割れたフロントガラスの上部にドライブレコーダーが設置されてあるのを発見。「あ、このドライブレコーダー、ちゃんと動いているんですか?」と聞いてきたので、Zさんは「あ、はい、たぶん」と答えた。
すると、それまで「あいつが悪いんだ」「オレはちゃんと信号を守っていた」などと騒ぎどおしだった例の悪漢ドライバーが、急に押し黙った。そして、ほどなくして、自分が信号を無視したかもしれないことを問わず語りにポツリポツリとしゃべりはじめた。「なんか、オレ、事故のショックで混乱してたのかもしれない」と見苦しいいい訳をしながら……。
Zさん、正直なところ、自分がなにか特別なことをしたという自覚はなかった。だが、まるで逆転満塁ホームランでも打ったかのようなスカッとした気分になっていた。
うーむ、ドライブレコーダーって、すごい!
2017年10月と11月は
対前年比2倍の売り上げ
Zさんの事例を検証する前に、まずはドライブレコーダーの普及について見ていきましょう。
このところ、ドライブレコーダーの販売は活気づいています。マーケティングリサーチ会社GfKジャパンの調べでは、2017年、年間販売台数は前年比38%の109万台となり、リサーチを開始した2013年以降5年連続での伸長となりました。
この伸びの要因の一つとして、「2017年6月5日の夜に、東名高速道路であおり運転をされ、さらに追い越し車線上で進路妨害を行ったクルマによって停止させられたワゴン車が、後続のトラックに追突され、ワゴン車に乗っていた夫婦が死亡してしまう」という悲惨な事故の報道が盛んになされたことが挙げられます。
このとき、被害を受けたワゴン車自体にドライブレコーダーは設置されていなかったものの、事故が起こる前後に周囲を走っていたほかのクルマがドライブレコーダーを設置していて、その映像が残っていたことから犯人が特定されました。
そして、この報道に接した多くの人たちがドライブレコーダーの必要性を痛感し、購入を急いだという次第です。
購入意向の要望1位は
「前方、後方の両方にカメラがついていること」
事実、GfKジャパンが2017年の11月に行った全国のドライバー約13,500人を対象にした調査によると、事故の報道を受けて、ドライブレコーダーを設置していない半数近くの人が今後の購入を前向きに検討するようになったと回答しています。
そして、その人たちの多くは、ドライブレコーダーを購入する場合の条件として、「前方、後方の両方にカメラがついていること」「夜間・暗所対応」「360度カメラ」を挙げており、この事故の要因となったうしろからのあおり運転への警戒心をいかに強めているかが窺えます。
じつは、現在販売されているドライブレコーダーはおもに前方を中心としてワイドに撮影記録するものがほとんどです。360度をカバーすると謳った商品もありますが、まだ性能が十分とはいえません。後方をしっかりカバーするには、もう一台設置する必要があるわけです。
ただ、こうした問題があるにせよ、多くの人たちがドライブレコーダーの必要性をはっきり意識しだし、実際に設置が進んでいくということは、悪いことではないでしょう。たとえ後ろがカバーできないとしても、ほかの多くのクルマにドライブレコーダーが設置されていれば、ある意味、全方向の監視が効くことにも繋がるからです。
ドライブレコーダーのますますの普及による、交通社会における悪質かつ無謀な運転の抑止効果の高まりを期待したいところです。
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