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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2021年6月9日更新
わずかな金額で大きな安心を買う
さて、Uさんの保険的悲劇に話をもどしましょう。
Uさんは、補償上限額が1000万円の対物賠償責任保険を契約していました。わずかでも保険料を安くしようという意図があったのと、もし対クルマの事故を起こしても、そのなかで十分に補償できると踏んだうえでの選択でした。
しかし、ご覧のとおり、その選択は凶とでました。
高級輸入スポーツカー3台を巻き込む玉突き事故を起こしたことで、2000万円以上もの補償が必要となりました。1000万円は保険からでるにしても、残りはすべて自腹で支払うことに……。
もし、補償上限額が無制限の対物賠償責任保険を契約していたとしたら、こんな状況に陥ることはありませんでした。年間1万円に満たない差額を払うのを惜しんだことで、その後十数年の生活に天国と地獄ほどの差が生まれることになったのです。
結局、塵(わずかな差額)は積もっても、その山(貯めた総額)は、万が一の事故のときの自腹補償の額ほどには高くはなりません。そのわずかな差額は、より大きな安心を買うため必要経費と理解し、しっかりと払って無制限を選ぶほうが絶対に賢明です。
億単位の物損補償となることも・・・
ちなみに、物を壊す事故は、対クルマ以外でも起こり得ます。しかも、その補償額は高級輸入スポーツカー3台の修理代をはるかに上回る金額になることもあります。
たとえば、1991年に起きた事故で、道路のセンターラインを越えて対向車線に進入した乗用車が、大型トラックともう1台の乗用車に衝突し、これによって事故車両などが沿道のパチンコ店に突っ込んだ事故の裁判では、最初にセンターラインを越えて事故原因となった乗用車のドライバーに1億3,450万円の損害賠償が命じられています。
こうなると、とても対物賠償責任保険1000万円では足りません。もし、保険の補償上限額が低い状態でこうした事故を起こしてしまえば、Uさんの悲劇どころではなくなります。自腹補償のためだけに一生を費やす可能性さえでてきてしまいます。
皆さん、カーライフそして人生そのものをゆたかに楽しくするために、事故には十分に気をつけて運転しましょう。そして、万が一のときのことを考え、対物賠償責任保険の補償上限額をぜひ無制限にしておきましょう!
玉突き事故の過失割合、どうなる?(前編)
玉突き事故の過失割合、どうなる?(後編)
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