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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2024年9月17日更新
【今回のもしもストーリー】
Mさん(60歳・主婦)は、自動車免許を持っているけれど、運転が好きではなかった。運転能力が劣っているという自覚もあったが、家のクルマが先進の安全装置が付いていない古い軽自動車であることも理由のひとつだった。ということで、夫婦でクルマで出かけるときは、ほとんど70歳の夫に運転を任せることにしていた。
ある日、家電購入のためにドライブをした際も運転手は夫だった。Mさんはスマホを眺めるなどしながら助手席でのんびりしていた。しかし、買い物を終えた帰り道、住宅街の道路を30㎞/hほどのスピードで走っている最中に思いがけない危機に直面する。
「目当ての炊飯器、安く買えて本当によかったわ」
いい買い物ができたことを喜ぶMさん。それは独り言のようで、夫からの「うん」とか「そうだね」といった相づちを求める発言だった。ところが、聞こえてきたのは「ううう……」という奇妙なうなり声。あれっと思って夫を見たら、なんと夫は顔をしかめて目をつむっていた。そして、そのままハンドルに顔を突っ伏して失神した。えっ、えっ、えっ!?
クルマが進む先はT字路の突き当たり。このまま行けば住宅の塀に正面衝突してしまう。
Mさんはパニックに陥ったままブレーキを踏もうとした。だが、足が届かない。そこでハンドルに手を伸ばして左に切って衝突回避を試みた。しかし、曲がりきれずに、クルマの右ノーズが石造りの塀にガツンと衝突。それでもクルマは止まらず、さらに向かいの家の塀に左ノーズをゴンとぶつけた。
低速での衝突ながら、運転席と助手席のエアバッグが展開するほど衝撃は大きかった。ただ、それによってスピードは減退し、また夫の足がアクセルから外れたことで、クルマはほどなく停止した。
事故現場には救急車が駆けつけ、夫婦は病院に搬送された。ともに軽傷で命に別状はなかった。夫が失神した原因として狭心症が疑われたが、重篤ではなく、とりあえず数日入院して経過を見守ることになった。
とはいえ、もう夫にクルマの運転を任せるのは難しくなりそう。免許返納だって十分にあり得る。今後、夫婦でクルマでどこかに出かけるときは、自分がドライバーを務めるしかない……。Mさんは、結構重い気分で覚悟を決めたのであった。
健康起因事故は
毎年相当数発生
運転中のドライバーの病気が原因で起こる交通事故。
専門用語で健康起因事故と呼びますが、これは毎年、相当数発生しています。
以下は、国土交通省が事業用自動車(トラック、タクシー、バスなど)の2013年から2022年までの健康起因事故の件数を示すグラフと、疾病別の内訳を示したグラフです。発生件数は毎年300件前後で、原因となる疾病は心臓疾患、脳疾患が多くなっています。
自家用自動車の健康起因事故については、はっきりとした件数は把握できませんが、やはり相当数の事故が発生しているものと思われます。
こうした事故の防止には、健康管理を徹底する必要があります。
しかし、人間の体は不可知。限界はあります。
もし、クルマが高度なレベルの自動運転車であれば、ドライバーが失神したとしても事故には至らないという期待は持てますが、それもまだ現実的な話とはなっていません……。
そうしたことを踏まえ、後編では次善策ではありますが、「もし、あなたが助手席に座っていて、ドライバーがなんらかの原因で失神してしまったらどう対処すればいいのか」について概説します。
走行中にドライバーが失神。助手席のあなたはその危機をどう切り抜ける?(前編)
走行中にドライバーが失神。助手席のあなたはその危機をどう切り抜ける?(後編)
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