ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」

クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.96(前編)走行中にドライバーが失神。助手席のあなたはその危機をどう切り抜ける?

2024年9月17日更新

もしも_健康起因事故_1-1

【今回のもしもストーリー】

Mさん(60歳・主婦)は、自動車免許を持っているけれど、運転が好きではなかった。運転能力が劣っているという自覚もあったが、家のクルマが先進の安全装置が付いていない古い軽自動車であることも理由のひとつだった。ということで、夫婦でクルマで出かけるときは、ほとんど70歳の夫に運転を任せることにしていた。

ある日、家電購入のためにドライブをした際も運転手は夫だった。Mさんはスマホを眺めるなどしながら助手席でのんびりしていた。しかし、買い物を終えた帰り道、住宅街の道路を30㎞/hほどのスピードで走っている最中に思いがけない危機に直面する。

「目当ての炊飯器、安く買えて本当によかったわ」

いい買い物ができたことを喜ぶMさん。それは独り言のようで、夫からの「うん」とか「そうだね」といった相づちを求める発言だった。ところが、聞こえてきたのは「ううう……」という奇妙なうなり声。あれっと思って夫を見たら、なんと夫は顔をしかめて目をつむっていた。そして、そのままハンドルに顔を突っ伏して失神した。えっ、えっ、えっ!?

クルマが進む先はT字路の突き当たり。このまま行けば住宅の塀に正面衝突してしまう。

Mさんはパニックに陥ったままブレーキを踏もうとした。だが、足が届かない。そこでハンドルに手を伸ばして左に切って衝突回避を試みた。しかし、曲がりきれずに、クルマの右ノーズが石造りの塀にガツンと衝突。それでもクルマは止まらず、さらに向かいの家の塀に左ノーズをゴンとぶつけた。

低速での衝突ながら、運転席と助手席のエアバッグが展開するほど衝撃は大きかった。ただ、それによってスピードは減退し、また夫の足がアクセルから外れたことで、クルマはほどなく停止した。

事故現場には救急車が駆けつけ、夫婦は病院に搬送された。ともに軽傷で命に別状はなかった。夫が失神した原因として狭心症が疑われたが、重篤ではなく、とりあえず数日入院して経過を見守ることになった。

とはいえ、もう夫にクルマの運転を任せるのは難しくなりそう。免許返納だって十分にあり得る。今後、夫婦でクルマでどこかに出かけるときは、自分がドライバーを務めるしかない……。Mさんは、結構重い気分で覚悟を決めたのであった。

健康起因事故は
毎年相当数発生

運転中のドライバーの病気が原因で起こる交通事故。

専門用語で健康起因事故と呼びますが、これは毎年、相当数発生しています。

以下は、国土交通省が事業用自動車(トラック、タクシー、バスなど)の2013年から2022年までの健康起因事故の件数を示すグラフと、疾病別の内訳を示したグラフです。発生件数は毎年300件前後で、原因となる疾病は心臓疾患、脳疾患が多くなっています。

もしも_健康起因事故_1-2

もしも_健康起因事故_1-3

自家用自動車の健康起因事故については、はっきりとした件数は把握できませんが、やはり相当数の事故が発生しているものと思われます。

こうした事故の防止には、健康管理を徹底する必要があります。

しかし、人間の体は不可知。限界はあります。

もし、クルマが高度なレベルの自動運転車であれば、ドライバーが失神したとしても事故には至らないという期待は持てますが、それもまだ現実的な話とはなっていません……。

そうしたことを踏まえ、後編では次善策ではありますが、「もし、あなたが助手席に座っていて、ドライバーがなんらかの原因で失神してしまったらどう対処すればいいのか」について概説します。

走行中にドライバーが失神。助手席のあなたはその危機をどう切り抜ける?(前編)

走行中にドライバーが失神。助手席のあなたはその危機をどう切り抜ける?(後編)

  • ロータスカードWeb入会
  • ロータスカードWeb入会
  • 店舗検索
  • 店舗検索
  • 楽ノリレンタカー
  • 楽ノリレンタカー

あわせて読みたい

  • Vol.81(前編)ずっとゴールド免許だったのに、たった一度の軽微な違反でブルー免許に!

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.81(前編)ずっとゴールド免許だ…

    【今回のやっちゃったストーリー】郊外に住むXさん(38歳・主婦)は、ある夜、2人の子ども(10歳男子と7歳女子)をクルマの後部座席に乗せ、ショッピングセンター…

    2023.03.14更新

  • Vol.38 豪雪で立ち往生して命の危機に。どうすれば助かる?(後編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.38 豪雪で立ち往生して命の危機…

    豪雪となったときはどんなタイヤでも立ち往生!?豪雪による交通トラブルを避けるにはどうすればいいのか、Iさんのケースを元にして考察してみましょう。まずタイヤ…

    2019.01.29更新

  • Vol.64 便利で安い1日自動車保険。契約7日前に登録を済ませて車両補償も付けよう!(前編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.64 便利で安い1日自動車保険。…

    【今回のやっちゃったストーリー】「この前のプロジェクトのお疲れ様会を兼ねて、今週末、ドライブでもしようよ」G君(24歳・会社員)は同僚の女性をドライブデート…

    2021.07.27更新

  • Vol.80(前編)年2回の保険事故で等級が6つダウン。来年から保険料は大幅アップ!?トホホ

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.80(前編)年2回の保険事故で等…

    【今回のやっちゃったストーリー】「スポーツカーって若い独身時代にしか乗れないクルマだよ。結婚して子どもができたら、普通はワンボッスカーになっちゃう。あと、今の…

    2023.02.09更新

  • Vol.62 タイヤ切り裂き事件勃発!なのに、なぜ車両保険で補償されないの?(前編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.62 タイヤ切り裂き事件勃発!な…

    【今回のやっちゃったストーリー】肉食系女子のEさん(32歳・自営業)は、つい最近、半年ほど付き合っていた7歳年下の男性を振った。もっと魅力的な同年代の男性が現…

    2021.05.27更新

  • Vol.52 フードデリバリーの自転車が増える中、「自転車の保険」の義務化が急!(後編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.52 フードデリバリーの自転車が…

    コロナ禍中の4月1日から東京都で自転車の保険が義務化2020年春、報道はコロナ禍一色となりました。その間、ほかの重大なニュースもいろいろ流れましたが、なかな…

    2020.07.21更新

< 前のページへ戻る