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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2023年6月19日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
ある夜、Yさん(40歳・会社員)のスマホに、父が行きつけにしている小料理屋の女将から電話が入った。
「お父さま、だいぶ酔ってらっしゃいます。お迎えにきていただいたほうがよろしいかと……」
風呂上がりでビールを飲む寸前だったYさんは、すぐにジャージに着替えてクルマで小料理屋へと向かった。
店内の父は確かにベロベロで、一人で歩ける状態ではなかった。
もう70歳。ずいぶん酒に弱くなったもんだ……。そんなふうに思いつつ、Yさんは女将にお礼を言って勘定を済ませ、父をクルマの後部座席に押し込んだ。そして、強い口調で言った。
「父さん、家まで10分だからちゃんと起きててな。あと、シートベルトをしっかり締めてな」
すると父は、焦点の定まらない目を見開き、大声で反論してきた。
「何を言っとるか、ばかたれが。後ろの席の人間は、シートベルトなんかせんでええんだ。お前はそんなことも知らんのか!」
やれやれ、いつの時代の話をしてるのだか。Yさんは、相手をするのが面倒なので、シートベルトをしないままの父を乗せて家路を急いだ。が、それが大きな間違いだった。
青信号の交差点を通過しようとしたとき、右から信号を無視した乗用車がYさんのクルマにぶつかってきたのだ。シートベルトをしていたYさんは軽傷で済んだが、シートベルトをしていなかった父は大ケガを負ってしまった。
悲劇はそれだけで終わらなかった。
本来、こうしたもらい事故での過失割合は、違反した側が100%で被害を受けた側が0%になるのが普通。その例に基づけば、Yさんのクルマの修理代や父のケガの治療費などは、ぶつかってきた相手の自動車保険ですべて補償されるはずだった。ところが今回、父が負ったケガの原因の一つに「シートベルトをしていなかった」ことが挙げられたことから、父の治療費などの補償が5%ほど減額されることになったのである。
Yさんは後日、ある程度回復していた入院中の父にこの事実を告げた。
自分に過失があったと知らされた父は、ぽつりとこう言った。
「すまん。俺、もう酒はやめるわ」
いやいや、お父さん、問題は酒じゃなくてシートベルトですから!
同乗者の不装着も
ドライバーの責任
まずは、シートベルトに関する交通法規のお話から――。
2008年までは、シートベルトの装着義務があるのは運転席と助手席に乗る人だけでした。
しかし、2008年からは後部座席に乗る人も必ずシートベルトを装着しなければならなくなりました。
そのときに改正された道路交通法第71条の3には、こんな主旨のことが書かれています(原文はもっと難しい表現です)。
1.ドライバーは、シートベルトをしないで運転してはならない。
2.ドライバーは、シートベルトをしない者を乗せて運転してはならない。
これに違反すると「座席ベルト装着義務違反」になります。
ただし、違反の罰則対象はドライバーのみ。ドライバー自身が不装着のときはもちろん、助手席や後部座席に座る人のシートベルト不装着も、すべてドライバーの責任となります。
ドライバーは、自分が運転するクルマに同乗する人たちに必ずシートベルトを装着させなければならない義務があるのです。
罰則はなくても違反は違反
「座席ベルト装着義務違反」を犯して取り締まりを受けた場合、違反点数と反則金は次のようになります。
「座席ベルト装着義務違反」では反則金は設定されておらず、違反が「運転席」あるいは「助手席」の場合は一般道路でも高速道路でも違反点数は1点となり、「後部座席」の違反の場合は一般道路では違反点数はカウントされないが高速道路の場合は1点なる……というわけです。
「後部座席」の違反の場合、一般道路では違反点数が付かないので、「一般道での後部座席のシートベルト不装着は違反ではない」と考える人がいますが、それは誤解です。道路交通法に違反していることはまぎれもない事実です(取り締まりを受けた場合は、口頭での注意を受けるはずです)。
もらい事故で後席乗員が大ケガ。ところがシートベルト不装着だったため治療費補償が減額に!(前編)
もらい事故で後席乗員が大ケガ。ところがシートベルト不装着だったため治療費補償が減額に!(後編)
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