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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2021年12月7日更新
前編に掲載したKさんの事例を、もう一度振り返っておきましょう。
Kさんは、独立心を養わせるためにパラサイト・シングルの息子(30歳)を別居させました。同時に、息子がKさんのクルマを運転できないように、保険の運転者の限定を図りました。
本当は「運転者限定特約」を〈本人限定〉もしくは〈本人・配偶者限定〉にしたいところでした。しかし、妻だけでなく、お店のアルバイトをしてくれているおばさんたちも運転する事情があったため、やむなく〈限定なし〉を選びました。
そこで、Kさんは「運転者年齢条件特約」の〈35歳以上〉という年齢条件を付けることにしました。そうすれば、妻やアルバイトのおばさんたちが運転できても、30歳の息子は運転できなくなると踏んだのです。
ところが、この目論みは見事に外れます。Kさんの保険に関する知識が間違っていたのです。
息子がKさんに指摘したとおり、保険のルールでは、別居している子どもは「運転者年齢条件特約」の年齢条件より下でも、ちゃんと補償の対象になるのです。つまり、息子は安心してKさんのクルマを運転できる状態となっていたのです……。
一般的に見て、このルールはまるでミステリーのよう。どうしてこんなルールになっているのでしょうか?
年齢条件の適用対象は
本人・配偶者・同居の親族
基本的なことを押さえながら、順を追って謎を解明していきましょう。
保険の規約上、「運転者年齢条件特約」の年齢条件が適用されるのは以下の人たちとなっています。
①記名被保険者(主にクルマを運転する者)
②記名被保険者の配偶者
③記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
具体例を挙げると、以下のようになります。
ある人が「運転者限定特約」を〈限定なし〉にしていて、「運転者年齢条件特約」の年齢条件を〈35歳以上〉に設定していたとすると、その場合、①~③の人が全員35歳以上であれば、すべてが補償の対象となる。
しかし、②の配偶者が34歳で、③の同居している娘が21歳だったとしたら、たとえ「運転者限定特約」が〈限定なし〉になっていても、その二人は保険の補償の対象外となります。
これは、そんなに難しい話ではないと思います。
では、同様のケースで別居している30歳の息子、あるいは35歳に満たない友人などが運転する場合は、どうなるのでしょうか。
一般的な感覚からすると「もちろん35歳に満たないわけだからNGに決まってる」となりそうです。
ところが、そうはなりません。実は「運転者限定特約」が〈限定なし〉になっていれば、ちゃんと保険の補償の対象になり、安心してクルマの運転ができるのです。
その理由は、意外にシンプルです。35歳に満たない子どもも友人も、同居ではなく別居している存在だから運転OKなのです。上掲の「運転者年齢条件特約」の年齢条件の適用対象には「同居の親族(子ども含む)」と書かれていますが、「別居の親族」あるいは「別居の友人」とは一言も書かれていません。つまり、別居の子どもや友人は年齢条件の適用外となるのです。
では、なぜ保険会社は、別居の人間を「運転者年齢条件特約」の適用外にし、補償対象として認めているのでしょうか。
これは保険会社が明言しているわけではないのですが、以下のような解釈が一般的です。
「別居している子どもあるいは友人は、同居している親族と違って実家のクルマを運転する回数がわずかなので、事故を起こすリスクが低く、保険の補償を発生させる頻度も少ない存在といえる。年齢条件の設定で保険料を下げている保険会社側からすれば、そうした別居の人たちは自社に損失を与えにくい存在ということになる。そのため、年齢条件が設定されていても補償の対象にしてかまわない――」
どうでしょうか、そう言われてみれば「なるほど……」という理屈です。
別居の息子や娘が帰省したときは…
現実の世の中ではKさんのような例はレアでしょう。しかし、遠方に住む息子や娘が帰省して、実家のクルマを運転しようとするケースは少なくないはずです。そうした際には、まず自動車保険の「運転者限定特約」がどうなっているかを確認してください。それが〈限定なし〉になっていれば、「運転者年齢条件特約」で年齢条件を設定していても、帰省した息子や娘は安心して実家のクルマを運転することができます。
もし「運転者限定特約」が〈限定なし〉でない場合は、①「運転者限定特約」を〈限定なし〉に変更する、②「運転者限定特約」はそのままとし、帰省した息子や娘がクルマを使う時には1日自動車保険を利用する、といった対応を状況に応じて講じることになります。いずれの方法も当日対応では無理がありますので、帰省の前から検討して準備するのが賢明です。
自動車保険の年齢条件〈35歳以上〉なのに、別居している30歳の息子はOK!? どういうこと?(前編)
自動車保険の年齢条件〈35歳以上〉なのに、別居している30歳の息子はOK!? どういうこと?(後編)
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