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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.67 身内のモノを壊したときは、対物保険で補償されないの!?(後編)

2021年10月26日更新

対物保険(身内のモノを破損) 2

前編では、「対物賠償責任保険は、身内のモノ(財産)に損害を与えた場合、補償の対象外になる」というルールについて簡単に説明しました。後編では、対物賠償責任保険について再確認しつつ、そのルールについて考えてみたいと思います。

モノ(財産)の損害賠償に備える保険

クルマによる事故で、他人のモノ(財産)に損害を与えた場合には、法律上の損害賠償責任が発生します。

この場合、モノ(財産)として即座に思い浮かぶのは相手のクルマですが、それ以外でも、電柱やガードレールなどの公共物、住宅やお店などもモノ(財産)ですし、お店を壊した場合にはそこで販売していた商品なども対象となります。さらに、修理に時間がかかれば、その間の休業も損害となり、それを賠償しなければなりません。

こうした万が一の事故による損害賠償に備えるのが、対物賠償責任保険(以下、対物保険)です。

ちなみに、加入が義務付けられている自賠責保険には、モノ(財産)に損害を与えた場合の補償はありません。

ですから、クルマを運転する人は、事故発生時のモノ(財産)に損害を与えた場合のリスクヘッジを自分自身で考えて自動車保険の対物保険への加入と、その支払い限度額を決めることになります。

過去の事例では、お店への突入、線路の踏切事故などで1億円を超える損害賠償が発生したこともあり、その辺を考慮して対物保険の支払い限度額を「無制限」にしている人も多いわけです。

誰のモノが補償対象外となるのか?

今回の事例は、この対物保険に例外があるというお話です。

なぜ例外が有るのかといえば、対物保険は、「法律上の賠償責任が発生する場合に、それを補償する」保険であるからです。言いかえれば、法律上の賠償責任が発生しない場合は補償対象外となり、保険金が支払われません。

誰のモノを壊してしまった場合に、対物保険の補償対象外となるのでしょうか。保険の約款に基づいて考えると、以下のようになります。

対物賠償責任保険の補償が発生しないことになるモノの所有者・管理者
①記名被保険者(※契約の対象となるクルマを主に運転する人)
②次のいずれかに該当する者
 ア.保険を契約しているクルマを運転中の者
 イ.上記アの父母、配偶者または子
③次のいずれかに該当する者
 ア.被保険者(※保険の補償が受けられる人)
 イ.上記アの父母、配偶者または子

専門用語と回りくどい表現のせいで、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、書かれていることはシンプルです。要は、自動車保険を契約している自分のモノはもちろん、自分の父母・配偶者・子のモノを壊した場合は補償対象外ということです。

ちなみに、前編に登場したJさんの奥さんのケースは③のイに該当します。被保険者である奥さんが、実の父か母が所有する門を壊してしまったので、対物賠償責任保険の補償が出ないことになったのです。

そのモノの所有者は誰なのか?

さて、最後にクイズです。

前述の内容を踏まえ、以下の問題を解いてみてください。



〈問題〉
ある日、赤ちゃんが生まれた若夫婦の家に、以下の4人がお祝いで集まることになりました。

①夫の父(妻の義父)
②夫の母(妻の義母)
③妻の父(夫の義父)
④妻の母(夫の義母)

この4人のうちの1人がクルマの運転を誤って若夫婦の家の塀を壊してしまいました。
この場合、対物賠償責任保険の補償が受けられないのは、①②③④のうちの誰でしょうか?

さて、答えは……①と②?

いえ、正解は「一概にはいえない」です。

どういうことでしょうか?

若夫婦の家が夫名義であれば、①と②が補償を受けられないことになります。しかし、若夫婦の家が妻の名義であれば、③と④が補償を受けられないことになります。そして、若夫婦の家が夫と妻の両方の名義の場合は、①②③④すべてが補償を受けられないことになります。だから、「一概にはいえない」となるわけです。

ちょっと意地悪な引っかけ問題でしたね。でも、対物保険について掘り下げるきっかけになったのではないでしょうか?

保険の規約は一つでも、補償が発生しないことになるモノの所有者・管理者は、人(記名被保険者・被保険者)ごとにさまざま。それによって補償の可否が変わってくるというわけです。

身内のモノを壊したときは、対物保険で補償されないの!?(前編)

身内のモノを壊したときは、対物保険で補償されないの!?(後編)

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