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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2021年7月27日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
「この前のプロジェクトのお疲れ様会を兼ねて、今週末、ドライブでもしようよ」
G君(24歳・会社員)は同僚の女性をドライブデートに誘った。彼女とは以前から非常に親密で、社内でもほぼ公認の仲だったのだが、G君はこれを機に正式に交際を申し込むつもりでいた。幸い彼女も「うん、いいわよ」と嬉しそうにOKをくれた。
当初、自分のクルマを持たないG君はレンタカーを利用するつもりだった。ところが、ネットで近所のレンタカー屋さんにアクセスしたところ、週末はすべて予約でいっぱい。かなり焦ったものの、ふと中学時代からの親友が最新のSUVを買ったばかりであるのを思い出し、「そうだ、あいつのクルマを借りればいい」と考え、すぐに電話をかけた。
「あのさ、今週末、お前のクルマを貸してくれない? ちょっと大事なデートがあるんだよ」
少しの間を置いて、親友はこう答えた。
「大事なデートねぇ。まあ、その日はどこにも行く予定がないから貸せないことはないんだけど、オレが入っている自動車保険って本人限定なんだよな。つまり、お前が運転すると無保険車ってことになるわけさ。それだと怖くて運転できないでしょ?」
保険を理由に断ろうという意図は明白だった。しかし、G君は諦めなかった。最近聞いたばかりの保険の知識を持ち出して説得を試みた。
「知ってるかな。今はオレみたいにクルマを持っていない人間が他人のクルマを運転するときに加入できる1日自動車保険っていう便利なものがあるんだよ。オレ、それにちゃんと入るから保険の件はぜんぜん心配しなくていいよ。もちろん、返すときはガソリン満タンにして洗車もしておくし、お土産もつける。だからお願い、貸してくれよ」
断る理由をなくした親友は、渋々ながらも了承してくれたのだった。
そんなこんなで、デート当日の朝がやってきた。
G君は親友の家にクルマを取りにいく前に1日自動車保険の契約を済ますべく、スマホを操作した。登録と契約申し込み自体は難しくなかったが、ひとつ問題があった。クルマを損傷した場合の車両補償があるプランは、最低7日前までに個人情報を登録しておかないと契約できない規則になっていたのだ。当日になってから登録と契約に臨んだG君は、車両補償のない最安のプランしか契約できないことになっていたのである。
「そんな規則があったのか。うーん、知らなかった。最安なのは嬉しいけど、クルマを傷つけたときのことが心配だな。どうしよう」
一瞬、親友のクルマを諦めることも頭をよぎった。しかし、同僚女性との待ち合わせ時間が迫っており、ほかの方策を見つける余裕はなかった。G君は「とにかくクルマを傷つけないよう気をつけよう。もともと彼女を乗せて安全運転するつもりだったから大丈夫だろう」と考え、最安プランで契約を済ませた。そしてクルマを取りに行き、親友には保険の契約内容について詳しく話さないまま、彼女との待ち合わせ場所であるコンビニの駐車場へと急いだ。
待ち合わせの時間まで10分少々あったが、対向車線側にあるコンビニ前の歩道に彼女は立っていた。G君は右折ウインカーを出しながら窓から右手を大きく振り「着いたよー!」と合図を送った。彼女もそれに気づき、ニッコリしながら胸の前で小さく手を振ってくれた。G君は、彼女のかわいらしい仕草を見つめたまま対向車線を突っ切るべくアクセルを踏み込んだ。
が、その瞬間、悲劇が起こる。キキーッとブレーキ音が響き、軽い衝撃がクルマのフロントの左側を襲った。G君は彼女に気をとられるあまり、対向車が走ってくるのをすっかり見落としており、軽微な衝突事故を起こしてしまったのだ。
当然、ドライブデートは中止となり、彼女に正式な交際を申し込むことはできなくなった。それどころか、彼女から「G君は仕事の肝心なところでミスすることがときどきあるけど、私生活でも同じなんだね」と呆れられ、これまでの親密な関係に大きなヒビが入ることとなった。
もちろん、クルマを借りた親友との間にも大きな亀裂が走った。
1日自動車保険のおかげで事故の相手への賠償はまかなえることになったものの、車両補償が付いていなかったために、クルマの修理にかかる費用はすべてG君が自費で出さなければならない。その見積もりは数十万円。とてもすぐに払える額ではなかった。そこで親友に「車体は凹んだけど、走れることは走れるから、修理するまでに少し時間をくれないかな。3ヵ月後のボーナス時期にある程度まとまったお金を用意できたら必ず修理するからさ」と頼んでみたところ、親友は顔を真っ赤にして怒鳴った。「ふざけんな! 会社に給料とボーナスを前借りしてでもすぐに直せ! そもそもお前、1日自動車保険があるから大丈夫って言ってたじゃないか。話がぜんぜん違うだろ。嘘をついてまで他人の大事なクルマを借りてるんじゃないよ!」
1日自動車保険に車両補償を付けないまま事故を起こし、結果として大事な人たちとの仲が危うくなり経済的にも窮することとなったG君。今後のリカバリーはかなり大変そうだ……。
人気の1日自動車保険。
累計契約件数は2,000万超
1日自動車保険は、その名のとおり1日単位で契約できる自動車保険です。
他人のクルマを借りる場合、自分がそのクルマに付いている自動車保険の対象外であっても、1日自動車保険を別途契約すれば万が一の際に補償されるため、安心して運転できるようになります。
必要なときに必要な日数分だけ契約すればいいので非常に便利。比較的新しくできた保険ですが、運転免許証は持っていてもマイカーを持たない人たちを中心に契約者が年々増えています。
2012年に国内で初めて1日自動車保険として発売された東京海上日動火災保険の「ちょいのり保険」は、累計契約件数がすでに700万件を突破(2020年9月末時点)。他社の保険商品も合算すると2,000万件は優に超えていると見られています。
10代~20代の契約が約80%
1日自動車保険の契約者の中で、最も割合が多いのは若年層です。
例えば「ちょいのり保険」では、10代~20代による契約が約80%を占めています。
なぜ、これほどまでに若年層が多いのでしょうか?
第一に、10代~20代はほかの年代と比べてクルマの保有率が圧倒的に低いという事実があります。
そして、彼らが身近な友人や親からクルマを借りることがあったとき、持ち主が保険料を低く抑える目的で自動車保険に「運転者本人限定特約」「運転者本人・配偶者限定特約」「運転者の年齢条件特約」のいずれかの特約を付けているため、借り手は補償対象外となるケースがよくあります。
クルマを持っていない若者が、他人のクルマを安心して運転するためには、どうしても1日自動車保険が必要になるというわけです
今回の事例に登場したG君もそうした20代の一人。親友が自動車保険に運転者本人限定特約を付けていたために、1日自動車保険を別途契約してクルマを借りました。それ自体は非常に賢明な措置でした。ドライブデート実現のために必死だったのでしょうが、よくぞ1日自動車保険の存在に気づいたといえます。
ただ、彼はちょっとだけ契約の手順を間違えました。そのため、車両補償の付いたプランを選ぶことができませんでした。結果、非常に残念な事態に陥ることに……。G君は、いったいどういうプロセスを踏んで契約すべきだったのでしょうか。
続く後編では、1日自動車保険の概要と、契約の際に気をつけるべきことについて解説します。
便利で安い1日自動車保険。契約7日前に登録を済ませて車両補償も付けよう!(前編)
便利で安い1日自動車保険。契約7日前に登録を済ませて車両補償も付けよう!(後編)
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