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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2021年2月18日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
都市部に住んでいるAさんは、数ヵ月前に、愛車を売り、免許も返納した。
まだ68歳。別に認知機能が衰えたわけではない。足腰もピンピンしている。それでもあえてクルマレスの生活を決めたのは、こんな風なことを思ったからだった。
「オレは老後を豊かなものにするために、会社を定年で退職してからもずっとコンビニのバイトを続け、わずかに出た退職金と年金を目減りさせないよう努めている。なのに、週末にたまにしか乗らないクルマの税金やら保険料やら整備代やらで、けっこうな額のお金を毎年払い続けている。これは大いに問題アリだと思われる」
「自分は都会で暮らしているので移動の足には困らない。だったら、クルマは売ってしまうのが得策というものだろう。それに、どうせなら免許も返納してスッキリさせてしまうことにしよう。もともと70歳過ぎたら返納するつもりだったんだから、その時期をほんの少し早めるだけだ……」
かくしてAさんは、妻の同意を得て、半世紀とちょっとぶりにクルマと免許のない生活を始めたのであった。
事前に予想していたとおり、移動に困ることはほとんどなかった。まとまった支出が減ったことで経済面と精神面のストレスもなくなった。売却と返納から数ヵ月の間、Aさんは自分の英断に心の底から拍手を送っていた。
しかし、そんなある日、Aさんは思わぬ災難に遭ってしまう。
電車でバイト先のコンビニまで行こうとしていたときのこと。Aさんは座席でウトウトしてしまい、うっかり降りる駅を寝過ごしそうになる。寸前でそれに気付いたAさんは、慌てて立ち上がって閉まる寸前のドアに突進し、なんとかホーム側に上体を出すことができた。が、閉まるドアに片足が挟まり、そのまま大転倒。固いコンクリートに左肩と顔面をしたたかに打ちつけた。ウガッ。結果、Aさんは鎖骨とほお骨を折る全治3ヵ月の重傷を負うことになってしまったのである。
この思わぬケガは即、経済的な打撃をもたらした。
治療費などが出る医療保障の保険には入っていたが、実際にかかる費用の補填には十分とはいえなかった(月に保険料が数千円かかるので最低限の契約に留めていた)。しかも、ケガがケガだけにコンビニのバイトは当面できなくなり、収入がいったんストップするという状態に陥った。Aさんは、もっとも恐れていた“退職金と年金の取り崩しライフ”を数ヵ月にわたって続けなければならなくなったのである。
鬱鬱とした気持ちのままの静養を強いられたAさん。会社時代の元同僚が見舞いに訪ねてきたとき、自分がケガを負ったときの状況と、いま陥っている窮状を苦笑いしながら説明し、グチグチと愚痴った。「ほんと、まいっちゃうよ」。
すると元同僚はこう応えてきた。「うん、災難だったな。同情するよ……。だけどなAよ、もうクルマに乗らない身なんだったら、『交通事故傷害保険』に入っておいたほうがよかったよな。あれ、月に1,000円ちょっと払うだけで、ほとんどの交通関係の事故で負ったケガの入院費やらに補償がおりるようになっていて、けっこう役に立つんだよ。そう、医療保障の保険の足しにもなるわけさ。やっぱりさ、世の中、人がケガをするときって交通絡みのシーンが多いわけだからさ、それに備える保険への加入は必須であり不可欠だと思うんだよな、オレは」
Aさんは初めて交通事故傷害保険なるものの存在を知って、「え、そんな保険があるんだ」と、ちょっとビックリした。そして、そのことを教えてくれた元同僚に関しては「こいつはもともと優秀な社員だったけど、いまも世の中のいろんなことを知っててすごいな。こういう奴こそ、豊かな老後を送るんだろうな、きっと」と思うに至り、羨望やら敗北感やら後悔やらがないまぜの複雑な心境となったのであった。
交通事故限定の傷害保険
Aさんならずとも、世の中に「交通事故傷害保険」のことを知っている人はそう多くはいません。この単語を聞くと「なに、それ?」となるケースがほとんどです。
このあまり知られていない交通事故傷害保険は、いったいどんな保険なのでしょうか?
実はこれ、傷害保険の一種です。ただ、補償対象が限定されていて、基本的には交通に関係するさまざまなアクシデントで死傷したり後遺障害が残った場合に補償(死亡補償、後遺障害補償、手術費の補償、入院・通院費の補償など)してくれる保険なのです。
どんな人が利用しているのかというと……数が多い例としては、学校の遠足や修学旅行の行事に参加する生徒たちが挙げられます。それら行事の際にはたくさんの生徒たちがバスや電車に乗って長距離を移動するので、誰かが事故の被害に遭うリスクは相応に高まります。そのため、学校側としては交通事故傷害保険やその他の傷害保険を利用することがあるのです。
もちろん個人での加入例もさまざまあります。
免許を返納した高齢者の加入はそのうちの一つ。クルマに乗っていたときは自動車保険によって事故や損害に備えていたわけですが、そうでなくなったときの歩行時や公共交通機関の利用時に事故に遭って死傷した場合にどうするか、そうした事態を想定して交通事故傷害保険に加入する人もいます。
今回のAさんは、残念なことにこの保険の存在をまったく知らず、結果、思わぬ経済的損失を自身に招いてしまったというわけです。
皆さんの中で、あるいは皆さんの周りで、この交通事故傷害保険への加入が必要な人はいませんか?
交通事故傷害保険は、例えば免許返納済みの高齢者にオススメ!(前編)
交通事故傷害保険は、例えば免許返納済みの高齢者にオススメ!(後編)
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