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2024年7月30日更新
天気予報によれば、決勝がはじまる午後1時30分には雨が降っているはずだった。
だが、時間が近づいても雨は一粒も落ちてこなかった。
蒸し暑いながらもドライのコンディション。各チームにとっては不意のアクシデントが少なくなるという点においては好都合だった。ただ、同時に選べる作戦が少なくなるという難点もあった。
レース規定では、3時間の間に2回のドライバー交代を必須とし、給油する場合は10分間のピットストップを義務付けている。排気量の小さなクルマであれば、このルールを逆手にとった無給油作戦の採用が有効と考えられた。燃費管理が厳しくなるにしても、3時間中10分間ピットに留まる必要がなくなるのはかなり大きなアドバンテージになる……。
しかし、この日のように、しばらく雨が降らないとなれば、全体的にレースのペースは上がり、必然的にガソリン消費が多くなる。それを考えると、小さなクルマといえど無給油作戦はなかなか採りづらかった。各チーム、それを踏まえたレース戦略を練る必要に迫られた。
Racing Project LOTAS CLUBの2台は、早々に無給油作戦の放棄を決めていた。
12番グリッドからスタートする「ロータスクラブ鈴木モータースYaris」号(#242)は完走を目指すべく、1回給油を挟み、余裕を持ってマイペース走行を続ける作戦を立てていた。
6番グリッドからスタートする「ロータスクラブ ユーピットYARIS」号(#319)はクラス2連覇を達成すべく、1回給油を挟み、燃費を気にすることなくエアコン稼働&アクセルを強く踏み続ける作戦を立てていた。
マイペースで完走&順位アップ
「ロータスクラブ鈴木モータースYaris」号(#242)のマイペース作戦は当たったといってよかった。
スタート直後の10分も経っていない時点で、Aドライバーの鈴木(泰)選手がドライバー交代のためにピットインしたのには驚かされたが、これは奇策でもなんでもなかった。
残り2時間50分を大きく二分し、Bドライバーの福岡選手とAドライバーの鈴木(泰)選手が、それぞれある程度まとまった時間を続けて走れるようにするための策。こうすれば、各自のペース配分がより順調にいくだろうと踏んでいた。
実際、2人とも周回を重ねるほどにタイムを縮めていた。かなりいい感じのマイペース走行と映った。
終盤に疲れが出た鈴木(泰)選手がグラベルに突っ込んだことを除けば、総体的にほぼ作戦どおりのレース運びができていた。
最終的に「ロータスクラブ鈴木モータースYaris」号(#242)は、Yarisクラス5位、総合9位でフィニッシュ。目標としていた完走&順位アップをきっちりと果たした。
超ドラマチックな逆転勝利
「ロータスクラブ ユーピットYARIS」号(#319)も、決勝での作戦は外れてはいなかった。終盤を除いては……。
最初に走ったAドライバーの佐藤選手は、スタート直後から積極的にアクセルを踏み続け、わずか3周目でクラス1位・総合4位に順位を上げていた。エアコンの助けも大きかったのだろう、50数分後にピットインしてBドライバーの石島選手にハンドルを渡すまで、その勢いは一向に衰えを見せなかった。
2番手の石島選手も、攻めた走りを見せた。後で聞いたらエアコンは効かせていなかったようだが、アクセルはガンガン踏んでいた。ピットアウトした数十分後には、クラス1位はもちろん、総合上位のクルマがドライバー交代や給油などで次々とピットインしたこともあり、一時は総合トップに立っている。
そしてレースが残り1時間20分ほどとなったところで最後のドライバー交代と給油のためにピットイン。決勝前のコメントどおり、Cドライバーの吹谷選手に非常にいい状態での引き継ぎを行った。
残り時間は1時間と少々。遂にチームのエースドライバー吹谷選手がピットアウトした。
後ろからは同じクラスの2台、502号車と129号車が、かなり速いペースで差を詰めてきていた。だが、すでに相当の差がついており、よほどのことがない限り逃げ切れそうであり、吹谷選手がクラス優勝のゴールを切る確率は限りなく高そうに見えた。
ひとつ不安があるとすれば、前に、同じクラスの312号車が走っていることだった。そのクルマはまだ最後のドライバー交代と給油を終えていなかった。しかもペースが妙に遅い。もしかすると意図的にアクセルを踏まず、無給油作戦を遂行しているのかもしれなかった。その時点で、312号車との差は3ラップ。もし最後のピットインがドライバー交代だけだったとしたら、吹谷選手はギリギリ追いつけなくなる可能性があった。
「まさか、このドライのコンディションで無給油はないだろう」。ピットの誰もがそう考えていたが、一抹の不安は拭えなかった。
その間、吹谷選手は不安を蹴散らすように2分36秒台の好タイムを連発。じりじりと312号車との差を詰めていた。
不安が現実のものとなったのは、3時間まで残り10分を切ったあたりのことだった。
312号車は、ドライバー交代のためにピットインしたものの給油はせず、クラス1位をキープしたままでピットを出ていった。残り7分。クラス2位の「ロータスクラブ ユーピットYARIS」号(#319)に1分近い差をつけていた。
このままいけば作戦負けとなる可能性が大。ピット内はシーンと静まり返った。
だが、吹谷選手はまったく諦めていなかった。タイムをさらに縮める2分35秒台の走りを見せ、3分前後のペースで走る312号車をさらに追い続けた。残り5分のところで、他車のアクシデントによるイエローフラッグが出てレース中断が懸念されたものの、幸いそうはならず、猛追は続行された。
しかし、残り3分、残り2分、残り1分と、時は無情に過ぎていき、遂に時計がジャスト3時間を示すに至った。
その時点で「ロータスクラブ ユーピットYARIS」号(#319)は、まだ312号車を捕らえてはいなかった。
「負けたのか」
誰もがそう思った。だが、そうではなかった。
3時間経過後に総合トップのクルマがゴールラインを通過してチェッカーフラッグを受けたのだが、その直前に312号車と「ロータスクラブ ユーピットYARIS」号(#319)は、すでに次の周回に入っており、クラス優勝の行方はそのラスト1周で決まることになったのだ。
まさに紙一重の僥倖。
エース吹谷選手は、そのチャンスの後ろ髪を逃さなかった。
3コーナーで遂に312号車に追いついた。そして、4コーナーを出たところでスリップストリームに入り、5コーナーの進入でブレーキング勝負に出た。イン側の吹谷選手は、そこでわずかに鼻先を出し、そのままトップでコーナーを回った。吹谷選手は、最後の最後で逆転に成功した。
「ロータスクラブ ユーピットYARIS」号(#319)は、最終コーナーを立ち上がり、クラス1位・総合3位でホームストレートに帰ってきた。ピットスタッフたちは歓喜を爆発させ、その勇姿を迎え入れた。
劇的な逆転によるYarisクラス2連覇の達成。
実況アナウンサーも「歴史に残る戦い」と興奮気味に叫んでいた。
レース後の表彰式。そのときになって、ようやく雨が降り出した。
大粒の雨は、式の進行を邪魔した。
だが、興奮冷めやらぬ勝者たちは、それを天からの祝福のシャンパンファイトの泡だと感じた。
喜びは、それほどに大きかった――。
最後に、Racing Project LOTAS CLUBのレース監督・鈴木(泰)選手に、レースの総評を語ってもらった。
「今回はエース車両が棄権したのでどうなるかと思ったが、『ロータスクラブ ユーピットYARIS』号がYarisクラス2連覇をしてくれたお陰で、Racing Project LOTAS CLUBの面目が保たれた。本当にホッとしている」
「レース終盤、彼らの活躍により実況アナウンサーが『ロータスクラブ』という名称を何度も発し、それがSNSで拡散されたのもよかった。全国の皆さんに、クルマ好きでレース好きのロータス店のイメージがよく伝わり、いいアピールになったと思う」
「これからもRacing Project LOTAS CLUBの活動は続いていく。まだ、どうなるかはまだわからないが、来年は7時間耐久のJoy耐に挑戦しようという話も出ている。いずれにせよ、今年以上にエキサイティングで面白いレースをお見せしたいと思っている」
Racing Project LOTAS CLUBの今後の活動に、乞うご期待!
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