「もてぎJoy耐チャレンジ(通称Joy耐チャレンジ)」の第2回大会が、ゴールデンウィーク中の5月7日、栃木県のツインリンクもてぎで盛大に開催された。
このレースは、ナンバー付きのクルマで3時間を戦う人気の耐久レース。比較的気軽に参戦できることから、プロチームだけでなく、ディーラーや自動車学校といったアマチュアチームも数多く参戦している。ロータス店のチームも昨年に引き続いての参戦を果たしていた。
昨年の第1回目のレースでは、埼玉県でロータス店を経営する並木産業、鈴木モータース、協同の3社がTEAM LOTAS SAITAMAとして1台のVitzを走らせた。そのときは、ドライバーの平均年齢が56歳ながらも、クラス3位という好成績を残している。
TEAM LOTAS SAITAMAの「2021 もてぎJoy耐チャレンジ」レポート
今年は、チーム名をRacing Project LOTAS CLUBと改めた上で、All Othersクラス(既定のクラスに属さない車両のクラス)と、86/BRZクラス(TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race 2022規定に準じた車両)の2クラスに各1台、合計2台のトヨタ86をエントリーしていた。
昨年よりは明らかに力が入った参戦体制となっていた。
合わせて10社のロータス店が集結
Racing Project LOTAS CLUBというチームについて詳しく見てみよう。
エントリーしている車両と、ドライビングするAドライバー並びにBドライバーは以下のとおりである。
「ロータスクラブ86kai協同」号(ゼッケン241 All Othersクラスにエントリー) Aドライバー:鈴木貴大選手(右 協同代表 56歳) Bドライバー:大山茂選手(協同社員 63歳)
「ロータスクラブ86鈴木&並木」号(ゼッケン242 86/BRZクラスにエントリー) Aドライバー:並木重和選手(左 並木産業代表 70歳) Bドライバー:鈴木泰貴選手(鈴木モータース代表 46歳)
クルマは速そうな雰囲気を濃厚に醸し出している。
86/BRZクラスを走る白い「ロータスクラブ86鈴木&並木」号は、秘めた実力を感じさせるものの、レース規定でほぼノーマル仕様となっているので、ほかの車両と比較して目立った特長はなかった。一方、All Othersクラスを走る「ロータスクラブ86kai協同」号はバリバリにチューンナップが施され、黒い車体からは爆速オーラが漂っていた。なにしろ、吸排気面や軽量化はもちろん、3時間の長丁場のレースを前提にディファレンシャルクーラーまで付けていたのである。走ってみないとわからないが、かなり期待が持てそうだった。
ドライバーもなかなかの面々。
平均年齢約60歳のおじさんたちだが、70歳の並木選手は国際C級ライセンス、ほかの3名も国内A級ライセンスを持つ実力者。昨年のレースでは、若いドライバーを寄せ付けない速さを見せつけている。プロとはいかないまでも、レベルの高い布陣といえた。
そして、バックアップ体制も万全であった。
メカニックやサポートの人員は計10名。その中には、女性スタッフや外国人研修生の姿もあった。聞けば、埼玉、千葉、茨城のロータス店、計10店(アサマ、協同、鈴木モータース、並木産業、張替モータース、星オートセンター、村沢自動車、山鉄、横尾自動車、吉井自動車工業)から結集したとのこと。前回は言うなれば埼玉県のロータスクラブチームだったわけだが、今回は関東のロータスクラブチームの様相を呈していた。車両の高度な整備はもちろん、ドライバーの心身のケアも十分に行える体制である。
総合的に、結構いい成績が狙えそうなチーム。期待大だ。
ロータスクラブの実力を知らしめたい
レースがはじまる前に、今回のチームづくりの音頭をとった鈴木貴大選手に、参戦の目的、体制拡充について聞いた。
——まず、2年連続でJOY耐チャレンジに参戦した理由から教えてください。
鈴木 僕らがレース好きというのが第一にあるんですけど、もうひとつの理由としては、ロータスクラブとロータス店をもっとPRしたい、というのがあります。
——ロータスクラブとロータス店をPR……ですか?
鈴木 そう。我々ロータスクラブは、腕のいい自動車整備工場であるロータス店が集まる、日本有数の自動車整備業の団体であるわけですよ。にもかかわらず、こういうモータースポーツ世界では、全くというほど無名です。これってすごくもったいない話だと思うんです。せっかく高度な整備力があるのに、広くみんなに知ってもらう機会をみすみす逃してしまっている。やっぱり、自分たちのためにも、お客さまのためにも、こういうモータースポーツの場で、どんどん技術力や存在感をアピールすべきでしょう。僕らは、その先陣をきって参戦を続けているわけです。
——なるほど、そうでしたか。
鈴木 例えば、このレースには自動車大学校のチームが参戦していますけど、彼ら若い学生たちに「ああ、ロータスクラブのチームって楽しそうだし、技術も高そう」って思わせたい。そうなれば、きっとロータス店への就職を積極的に希望する人が出てくると思うんです。まあ、そのためにはレースで相当良い結果を出す必要があるので、結構なプレッシャーになっちゃうんですけどね(笑)。
——昨年は埼玉県のロータス店3社によるチームでしたが、今年は埼玉、千葉、茨城から計10社のロータス店のスタッフが参加した大所帯になっています。これも、PR効果を狙った動きの延長線上と捉えていいんでしょうか?
鈴木 そうなりますね。なるべく多くの地域のロータス店の参加を得て、広くロータスクラブの存在と実力を知ってもらえるようにしたかった。そこで今回、ロータスクラブ内で参加を呼びかけ、結果、大所帯のチームになったんです。実を言うと、北海道のロータス店からも「参加したい」との要望があったんです。ただ、たった1日のレースのために北海道から来てもらうのは申し訳ないので、最終的には近県の会社でチームを結成するという形をとりました。結集したメンバーはモータースポーツは初体験ですが、やる気はあるので、このチームで参戦できたのはすごく嬉しいことです。
——こんなふうに体制が充実してくると、総合優勝も狙えそうですね?
鈴木 うーん、どうでしょう……。単に勝つのが目的なら、プロドライバーやプロのレースマネジメントの人間を呼んでチームを組んだほうが話が早い。だけど、我々がやりたいのは、そういうことじゃない。整備のプロではあるけれど、レースに関しては素人ですから。その人間が集まってどこまでやれるか?そこに力点を置いている。もちろん優勝、もしくは上位入賞を目指しますけど、どちらかというと、そうしたチャレンジの姿勢やプロセスに注目してもらえれば……と思いますね。
「2022 もてぎJoy耐チャレンジ」レポート
(前編)関東のロータス店合同チームが、人気の3時間耐久レースに挑戦!
(中編)雨の予選。56歳の鈴木選手がぶっちぎりのタイムでポール獲得!
(後編)波乱の決勝。ロータスおじさんたちの激走の行方やいかに!?
(付編)チームメンバーたちの声