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クルマのことならなんでもガイド
2019年7月23日更新
今月の達人
品田商会・品田庄一
私たち品田商会(ロータスシナダ)は、ガソリンスタンド(エネオス松波SS)も経営しています。それは一見すると普通のガソリンスタンド。でも、実態は電動車普及を前提とした設備を備えた次世代型のガソリンスタンド! 今回は、国の補助事業などを活用して行った、私たちのガソリンスタンド改革についてご紹介します。
市内のEVや充電器の情報を
EVセンターで一元管理
三菱自動車のアイ・ミーブが登場し、EVへの期待が高まった2009年、経済産業省の外局である資源エネルギー庁による『平成21年度電気自動車普及環境整備実証事業 (ガソリンスタンド等における充電サービス実証事業)』の公募が行われました。
これは、電気自動車普及に向けて、ガソリンスタンドなどの充電インフラ整備を推進することを目的とした取り組みの一環として実施されたものです。
私たちはこれに、『EVコミュニティーに最適な充電インフラ設備の研究開発とEVセンターの運営及び実証実験』というテーマで応募し、採択されました。
この実証実験では、柏崎市内を走っていたEV16台とPHV2台、充電設備5ヵ所、さらに移動充電車(=助っ人EV)2台をネットワーク化し、エネオス松波SS内に設置したEVセンターにおいて一元管理しました。
そして、EVなどの利用履歴や走行データ、充電設備の電力使用量などの情報が携帯回線を通じてEVセンターに収集。このデータから、EV・PHVの普及台数に対し必要なインフラの規模や充電サービスの運営体制などを具体化する試みです。
この実証実験によって、エネオス松波SSは出力50kwの急速充電器を設置し、EVセンターを稼動させることで充電サービスビジネスのイメージをより鮮明なものとすることができました。
急速充電器が
スマートフォンとつながる
私は、ガソリンスタンドを経営していたので、EVの普及と共に、急速充電器などの充電インフラの普及が進むと考えました。
そして、いち早く実証実験に手を挙げることで、充電サービスビジネスの感触をつかむことができました。それは、充電サービスをビジネスとして行うには、急速充電器を設置すれば良いというものではないということです。
実証実験の中で分かったことの一つは、「どんなに長くても30分で満充電にしたい」というユーザー心理です。もちろん、もっと短いに越したことはありません。でも、設置した急速充電器は50kwの出力ですから限界があります。まあ、お客さまとしても使い慣れていく中で、「これくらいで充電する」という目安ができます。
さて、「30分で満充電」という心理をビジネスに反映させたとき、「その30分をどう過ごしていただくか」という課題が見えてきます。また、「充電しようと思って急速充電器のある場所に行ったら先客がいて、30分近くも待たないといけない」というような事態への対応をどうしたらよいか、という課題もあります。
こうした課題への対応策を模索する中で、2010年に私たちは(社)全国石油協会の経営高度化調査・実現化事業に採択され、『SSの付加価値向上サービスの実証事業』を行いました。
これは、急速充電器から無線通信で取得した充電情報などを、インターネットを介してwebサーバに登録し、それに予約システムやお役立ち情報などを組み合わせた情報サービスを、お客さまがパソコンやスマートフォンで利用できるようにしたものです。
つまり、お客さまはスマートフォンで急速充電器の利用をあらかじめ予約し、待ち時間なく充電開始。充電中は、ガソリンスタンド内のテーブルでくつろいでも良いですし、近くのお店に行っても構いません。エネオス松波SSにはマッサージチェアを設置しましたので、マッサージでリフレッシュすることもできます。そして、充電が完了すると、お客さまのスマートフォンに「充電完了」のeメールが届きます。
どうですか?
新しいサービスを展開するには、やはり実体験が大事だとつくづく思いました。
現在、急速充電器は出力100~150kwが出現し、2020年には出力500kwとか900kwが実現するという話もあります。そうなれば、待ち時間対策は不要になるかもしれません。
ですが、急速充電器がスマートフォンとつながる、あるいはEVとつながるというイメージは、この先もっと強くなっていくと思います。
ガソリンスタンドは
スマートステーションに進化する
ところで、路上からだとわかりませんが、エネオス松波SSの店舗の屋上には一面ソーラーパネルが敷き詰められて います。
これは環境のことを考えて、CO₂を出さない太陽光=再生可能エネルギーで発電した電力を、やはりCO₂を出さない電動車に供給するという理想のエコ充電体制を実現するために設置したものです。
2012年に、資源エネルギー庁の『平成24年度石油製品販売業構造改善対策事業補助金(給油所次世代化対応支援事業)』を活用し、『スマートステーション実証事業』として整備しました。
このソーラーパネルによる太陽光発電を起点とした、スマートステーションの概略は以下のとおりです。
ご覧のとおり、充電にやってくる電動車に充電するだけでなく、助っ人EVを使って電気をデリバリーするという発想です。
電欠の電動車や、蓄電型住宅などが電気不足になったときには、助っ人EVが電気を運ぶのはもちろんですが、ニーズはもっと多様だと思います。
すぐに想像できるのは、アウトドアのイベント会場などにおける電源供給です。
それから、農耕機械が電動になるという話も聞きます。田畑でフル稼働する農耕機械に電気を運ぶということがあるかもしれません。
万が一災害などで系統電力が切れた場合でも、日中、太陽が出ていれば常に発電することができるので、そうした緊急事態においてはこのスマートステーションが一時的に地域のエネルギー供給源となり、助っ人EVの活躍によって必要なところに電気を運ぶことが可能です。
『平成24年度石油製品販売業構造改善対策事業補助金(給油所次世代化対応支援事業)』は、現在も減少傾向にあるガソリンスタンドの業態を改善して次世代対応させ、減少に歯止めをかけることを狙った施策でした。
ここに示したスマートステーションは、その有力な解答になるんじゃないか、そんなふうに思います。
エネオス松波SSでは屋上の太陽光発電だけですが、スマートステーションの近隣にもっと規模の大きな太陽光発電装置を備えれば、電力の地産地消が描けるのではないでしょうか。
「電動車(xEV)と社会や暮らし」についてお話しているこのシリーズ。電動車の普及が進むことによって、その影響で、私たちの社会や暮しに大きな変化がやってくることがわかります。
これは私の予想ですが、次世代に於いて、ガソリンスタンドはその姿を変えて、もっともっとスマートでエコな存在になり、地域のエネルギーを支える重要な存在になると思います。ぜひ、期待してください!
実は、日本には電動車普及のための下地がしっかりとできているんです!
なんと、世界初のEVレスキュー車『助っ人EV』を共同開発しちゃいました!
太陽光発電でEVの充電をするガソリンスタンドがあるのを知っていますか?
いまロータス店がぞくぞくと『次世代自動車取扱認定店』になっています!
『次世代自動車取扱認定店』には“環境に取り組むココロ”がしっかりあります!
「バッテリーマネジメント」という言葉をご存知ですか?
これからの10年は新しいEV・PHV・PHEVがぞくぞくと登場します!
お店紹介
品田商会:1950年、品田庄治郎氏が創業。当初は自転車・バイクの販売修理業としてスタート。その後、自動車(国産・輸入車)の修理と販売を手がけ、その技術の高さが評判を呼んで大きく成長。地元では、早くからEVをはじめとする次世代自動車に対応できる会社として認知される(LOTAS次世代自動車取扱認定店)。2代目の社長である品田庄一氏は“環境オタク”を自認。クリーンでエコなお店づくりに取り組んでいる。
住所:新潟県柏崎市松波4-1-63
電話:0257-23-2227(代)
HP:https://www.shinada-web.com
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