達人に訊く（47）『充電制御車』には『充電制御車対応カーバッテリー』を！

今月の達人
大村モータース・山中剛



最近のクルマには、低燃費＆エコを実現するためのさまざまな機能、システムが組み込まれています。そしてカーバッテリーも、それに応じた進化を遂げています。今回は、その中の一つである『充電制御車対応カーバッテリー』に関するお話です。

クルマのエコシステムに対応した
『充電制御車対応カーバッテリー』

以前の章で私は、「最近のカーバッテリーはクルマの多電化に対応するために高性能化している」と述べました。

しかし、この言葉でカーバッテリーの進化を総括できるかというと、実は十分ではありません。クルマは多電化以外の分野でも進化を遂げており、カーバッテリーはそれに応じた高性能化も果たしているからです。

その一つに『充電制御車対応カーバッテリー』があります。これは、最近のクルマの多くに搭載されるようになった『充電制御システム』に対応するバッテリーです。

この充電制御システムおよび充電制御車対応カーバッテリーが生まれた経緯を、私なりの解釈を加えながら言うと、だいたい以下のようになります。

●カーバッテリーは、エンジンが回ることで稼働するオルタネーター（発電機）によって充電される仕組みになっている。
●従来のクルマではこの一連の動作が絶えず続くため、エンジンに常に負荷がかかっていた。たとえば、カーバッテリーが満充電の状態でもオルタネーターは稼動し続け、発電していた。このため発電された電気が無駄になり、エンジンにも負荷が掛かりっ放しになり、結果的に燃費を悪化させていた。
●この問題を解決すべく、自動車メーカーは、バッテリーの充電量に応じてオルタネーターの発電をON／OFFする充電制御システムをクルマに搭載することにした。
●これを受けて、カーバッテリーのメーカーは充電制御システムに対応できる充電制御車対応カーバッテリーを開発・販売することになった。

繰り返しになりますが、このようにクルマの進化はバッテリーの進化に直接の影響を及ぼしているのです。

ちなみに、「充電制御車って何？」と思われる方も多いと思いますが、最近のクルマでハイブリッド車やアイドリングストップ車以外のエコカーは基本的に充電制御車と思って差し支えないと思います。
確認するには、車検証の「車両型式」を見てください。これが、「CBA」もしくは「DBA」で始まっているクルマは充電制御車です（充電制御車ではない型式は「GF」や「U」などで始まっています）。

『充電制御システム』は
コンピュータで充電を制御する

ここから、充電制御システムおよび充電制御車対応カーバッテリーが具体的にどのようなものかについて見ていきましょう。

まず充電制御システムですが、平たく言えば「クルマに搭載された制御コンピューターでオルタネーターの動きをコントロールしてバッテリーへの充電を制御するシステム」ということになります。

制御コンピューターがバッテリーからの電流センサーで充電量を読み取り、その量に応じてオルタネーターに「ON（発電する）」「OFF（発電しない）」の命令を小まめに出します。それによってエンジンの負荷を下げてガソリン燃焼を減らし、燃費と環境にいい効果をもたらすようにしているのです。

言葉だとちょっと難しいく感じるかも知れませんが、以下の図を見れば一目瞭然。「ははーん」とすぐに納得できるでしょう。



普通のものより充電受入性が高い
『充電制御車対応カーバッテリー』

次に充電制御車対応カーバッテリーがどのような特徴を持っているかですが……。

その前に、まず充電制御システムによるバッテリーへの充電方式を理解しておく必要があります。

下に示した二つのグラフを見てください。
従来の充電方式は、バッテリーが満充電になってもオルタネーターを稼働させて充電を続ける格好となります。
それに対して充電制御システムは、オルタネーターのONとOFFを受けて、充電と放電を小まめに繰り返す方式になっています。



実をいうと、この新たな方式の小まめな充放電は、従来あった普通のカーバッテリーでは対応しきれないもので、カーバッテリーにとって過酷な状況を生み出します。
しかし、専用に開発された充電制御車対応カーバッテリーは、そうした課題をすべてクリアしています。

より具体的にいうと、充電制御車対応カーバッテリーは充電受入性を普通のものよりも大きくし、高速充電を可能にしています。そして、耐久性をかなり高めて、高寿命化も進んでいます。そのために、バッテリーメーカーは素材や構造に新しい技術を開発し、カーバッテリーを進化させているのです。



そう、充電制御システムは、この高性能な充電制御車対応カーバッテリーの存在によって完璧なものになるというわけです。

少々高めのプライスも
燃費向上で差額は解消される

これら高性能を付加した充電制御車対応カーバッテリーは、当然、普通のカーバッテリーよりは価格が高めとなります。交換のときに、もしかすると「えー」と思うかも知れません。

でも、案ずるなかれです。長く乗っていれば、燃費向上によって次第に差額が解消されていくので、決して高い買い物にはなりません。ご安心ください。
その際、ここでお話したことを思い出していただければ、私としてもうれしい限りです。





ちなみに、もし充電制御車に、より廉価な普通のカーバッテリーを搭載するとどうなるのか？

先ほど示したように、一定量の充電に至るまでに時間がかかるのでオルタネーター（発電機）の稼動も長くなり、燃費に悪影響を及ぼします。つまり、せっかくあるエコカーの特性が減退してしまうのです。しかも、バッテリーが上がりやすくなるうえ、寿命が短くなったり故障したりといった弊害も出やすくなります。充電制御車に普通のカーバッテリーを搭載することは、決してオススメできる選択ではないのです。

というわけで、充電制御車には充電制御車対応カーバッテリーを！
充電制御車に乗っている皆さん、交換の際にはこれを必ず実行するようにしてください。

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お店紹介
大村モータース：機械を扱うことが得意だった大村金夫氏（初代）が、1940年、地域の自転車、バイク、オート三輪車、消防車などの修理・整備を行う整備工場を創業。その後、二代目の大村勤一氏（現会長）のもとで整備工場としての実力と規模を拡充。1975年の全日本ロータス同友会設立にあたって、メンバーとなる。現在は、三代目である山中剛氏が代表となり、「自動車の販売や点検・整備を通じ、社会を円滑に動かすファンベルトの役割をはたす」をモットーに日々の活動を展開している。



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