今月の達人
大村モータース・山中剛
一昔前であれば、カーバッテリーを自分で購入し、付け替えるということが普通に行われていました。けれども、最近のクルマの場合、「自分で交換」はちょっとオススメできません。カーバッテリーの交換は、実はけっこうデリケートなのです。今回は、バッテリー交換の基礎知識と、最近の事情に関するお話です。
バッテリー交換の際は
同じ品番を選ぶのが基本
皆さんは、カーバッテリーを交換するときに、何を基準にして次のバッテリーを選べば良いかご存じですか?
答えはカンタン。「元から搭載されていたバッテリーと同じ品番の製品を選ぶ」が正解となります。
日本のクルマに搭載されているほとんどのバッテリーにはJIS形式の品番が付いています(欧州車用のバッテリーにはJIS形式とはちがうDIN規格の品番が付いています)。交換の際には、それと同じ品番の商品を選ぶのが原則です。
この品番は、一見、単なる記号の羅列に思われますが、さにあらずです。それぞれの数字とアルファベットは、そのバッテリーの性能・規格を表しています。
※画像提供:株式会社ジーエス・ユアサ バッテリー
お分かりいただけましたか?
例えば、2014年発売のスズキのアルト(車両型式DBA-HA36S/充電制御対応/アイドリングストップなし)に搭載されているバッテリーの品番は「38B19R」です。
これは、①性能ランク→38、②短側面のサイズ→「幅:129(127)、箱の高さ:203、サイズ:B24以下、端子形状:テーパ式(細端子)※単位mm」、③長側面の長さ→19cm、端子の位置→「バッテリーのプラス側短側面から見て、+端子が右側にある」…ということを表しています。
そのように細かく把握していないとしても、3年ごとに「38B19R」の品番のバッテリーを選べば、以前と同じ電力供給能力が得られるのです。また、スペース的にも、ちゃんと装着もできます(最近の省スペースなエンジンルームでは、異なった品番の製品は収まらない場合もあります)。
逆に、ちがった品番の製品を選ぶと、それらが望めない困った事態を招いてしまいます。たとえば、冒頭のパワーを示す「38」を「28」という小さな数字のものにすると、エンジンスターターがしっかり回らない現象が起こったりするのです。
ワンランク大きいパワーなら
品番が異なっても大丈夫
では、品番がちがうバッテリーを選ぶというのは絶対にNGなのでしょうか?
いえ、実は、一つ例外があります。
サイズが同じであれば、パワーの数値がワンランク大きいバッテリーを選んだとしても、とくに問題はありません(例:「38B19R」→「40B19R」)。若干価格は高くなるものの、余裕をもった電力供給がされるので、頻繁かつ過酷にクルマを使っている場合などは、いい結果につながることもあるのです。実際、ウチのお客さまの中にも、あえてこういうバッテリー選びをされる方もいらっしゃいます。
ただし、この例外にも限度はあります。
ツーランク以上大きなパワーのものを選ぶというのはあまりよろしくありません(例:「38B19R」→「44B19R」)。なぜなら、その大きなパワーのピークまで使い切れない状態、つまりオーバークオリティ状態が生まれるからです。
これは、「パワーの大きなバッテリー(すなわち価格の高いバッテリー)を装着した甲斐がない」ことを意味します。エネルギーとコストの両面でもったいない話となってしまうので、ご注意ください。
なお、そのバッテリーがちゃんとしたメーカーのものかどうかを確認することも注意ポイントとして挙げられます。
パナソニックやGSユアサといった一流メーカーのものであればまったく問題はありませんが、そうではないメーカーの廉価な製品の場合は、同じ品番あるいはワンランク上のものであっても性能面での不安が否めません。特に、「寿命が短くなる」というデメリットは顕著といえます。
カーバッテリーの交換、
どこで行っていますか?
さて、長々と品番について語ってきましたが、実はここからが本題となります。
皆さんは、3年ごとのカーバッテリーの交換をどこで行っていますか?
手前ミソな言い方になりますが、ロータス店をはじめとする信頼できる自動車整備工場でバッテリー交換をしているのであればノープロブレムです。
しかし、もし、そうではない場合…たとえば「プロの整備士がいないガソリンスタンドや量販店などで交換している」、「自分で交換している」ということであれば、正直なところ、いろいろと不安があります。
プロの整備士がいないお店などでバッテリー交換をする、あるいは自分でバッテリー交換をする場合には、当然ながら、製品の見極めは皆さん次第となります。
店頭に並んでいる製品の中からどのバッテリーを選ぶか…、「同じ品番の製品を選べばよい」と言いましたが、同じ品番の製品が複数並んでいて迷った場合などでも自分自身で選択しなければなりません。
また、プロの整備士がいないお店などでは、仕入れの都合や販促キャンペーンなどお店側の都合で、店頭でのバッテリー販売を行っていることもあります。極端なケースでは、意味なくツーランク以上も大きいパワーのバッテリー(=価格の高いバッテリー)を勧めたり、逆に「カーバッテリーは消耗品だから、安いモノで十分」といってクオリティの低いバッテリーを勧めるといった場合もあるようです。
第1回でお話ししたように、「カーバッテリーは安心・快適なカーライフを支える小さな巨人」です。その交換においては、やはり信頼できるプロの整備士と相談して行うに越したことはありません。
バッテリーテスターと
プロのノウハウが不可欠
さらに、最近のクルマに乗っていて、プロの整備士がいないお店などでバッテリー交換をする、あるいは自分でバッテリー交換をする場合には、さらに注意すべき点があります。
これも第1回でお話ししたことですが、最近のクルマはコンピューター化が著しく進んでいます。ちゃんとした手順で交換ができたとしても、最後にはそれらコンピューターに「バッテリーを新しくしたので、それに対応せよ」というリセット指令を送る必要がありします。
これをしないと、クルマによってはパワーウインドウが動かなくなったり、アイドリングストップ機能が作動しなかったり、エラーコードが表示されたりします。
最近のクルマのバッテリー交換をする場合には、専用のバッテリーテスターが必要ですし、それを扱うプロのノウハウが不可欠であるということです。
さらに、リスクも存在します。交換途中にちょっとしたミスでバチッと火花を飛ばしたとしたら、近くにあるコンピューターがダメになってしまうことがままあります。こうなると、そのコンピューターも交換が必要となり、「十万円以上の費用がかかる…」といった場合もあります。
ということで結論。
「3年ごとのカーバッテリー交換」は、深い知識と高い技術と誠実な対応をモットーとするロータス店をはじめとした信頼できる自動車整備工場に任せるようにしましょう。
プロの整備士が、皆さんの愛車に見合った性能のコストパフォーマンスがいいカーバッテリーをしっかりと選び、きちんと装着してくれるはずです。
1 カーバッテリーは安心・快適なカーライフを支える「小さな巨人」です。
2 消耗品であるカーバッテリーは「3年ごとの交換」がセオリーです。
3 「3年ごとのカーバッテリー交換」は信頼できる自動車整備工場に任せましょう!
4 カーバッテリーの寿命はクルマの乗り方で変わります!
5 「バッテリー上がり」のときのベストの対処法をお教えします!
6 『充電制御車』には『充電制御車対応カーバッテリー』を!
7 『アイドリングストップ車』には『アイドリングストップ車用カーバッテリー』を!
8 次世代車の『補機用バッテリー』は腕とコスパのいいロータス店で交換を!
9 『新☆車生活』の利用は究極のバッテリーケアに繋がります!
お店紹介
大村モータース:機械を扱うことが得意だった大村金夫氏(初代)が、1940年、地域の自転車、バイク、オート三輪車、消防車などの修理・整備を行う整備工場を創業。その後、二代目の大村勤一氏(現会長)のもとで整備工場としての実力と規模を拡充。1975年の全日本ロータス同友会設立にあたって、メンバーとなる。現在は、三代目である山中剛氏が代表となり、「自動車の販売や点検・整備を通じ、社会を円滑に動かすファンベルトの役割をはたす」をモットーに日々の活動を展開している。
住所:岡山県玉野市田井1丁目3-17
電話:0863-31-1811(代)
HP:http://ohmura-m.com