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2018年6月26日更新
今月の達人
宮本モータース・宮本毅
今回は、「タイヤ交換をどういったタイミングで決めるべきなのか」というちょっと専門的なお話。でも、だれでも判断できる、けっこうわかりやすい目安があったりもします。
タイヤ交換を判断するには
二つのチェックポイントがある
タイヤを交換すべきか否かを判断するには、いろいろなチェックポイントがあるのですが、一般的には以下の二つが主な項目となっています。
ひとつは「溝の深さが十分にあるか」。
もうひとつは「ゴムが激しく劣化していないか」。
これらを厳密にチェックするには、もちろん、われわれ整備工場にお任せいただくのが一番です。けれども、ちょっとした知識があれば、皆さん自身である程度の判断が下せるのではないかと思います。
走行5000キロで溝が1ミリ浅くなる
まず、「溝の深さ」がなぜ重要なチェックポイントになるのか、そしてどれくらいの浅さになれば交換が必要になるのか、さらにはそれをどうやって見分けるかなどについて、夏用タイヤを例にとりながらお話したいと思います。(※「ゴムの劣化」については次回、お話します)
新品のタイヤの溝の深さは、製品によって異なるものの、だいたい7~8ミリです。そして、当然ながら、走れば走るほどタイヤの表面が摩耗していき、その溝はだんだんと浅くなっていきます。
たとえばごく平均的なライフ性能のタイヤの場合は、走行5000キロで1ミリほど表面が摩耗する(1ミリほど溝が浅くなる)といわれています。高グレードのタイヤでライフ性能がよいものを選べば、もちはもっと長くなりますが、それでも徐々に摩耗していくことに変わりはありません。
溝が3ミリ以下になると
雨天・高速では制動力が心配
タイヤが磨耗することによって、タイヤの性能は損なわれていきます。ストレートにいえば、クルマの基本性能である「走る、曲がる、止まる」に支障がでてきます。
これは、安全面において問題が生じるということを意味します。
これが端的に表れるのが、雨の日の高速道路です。
次のグラフは、濡れたアスファルトの路面での制動距離を速度別に表したものです。速度が40km/hや60km/hではあまり大きな変化がありませんが、80km/hでは溝の深さが3ミリ以下になるあたりから制動距離が急激に長くなっていくのがわかりますよね?
雨の日の高速道路を、摩耗したタイヤを履いたクルマで走っている場合、「あっ、危ない!」とブレーキを踏んでも、クルマは思ったように止まってくれないということになります。
これは、タイヤが磨耗したことによって、タイヤと路面の間の水をかき出す力(排水性能)が低くなってしまったことが影響しているのです。
さらに、そういうタイヤではハイドロプレーニング現象(タイヤと路面のあいだに水が膜となって入り、ハンドルやブレーキが効かなくなる現象)が起きやすくなります。タイヤが水に浮いた状態になるので、ハンドルやブレーキが効かなくなり、事故リスクは極めて高いといえるでしょう。
交換を考えはじめる時機は
溝の深さ3.5ミリぐらいで
では、溝の深さが何ミリぐらいになれば、タイヤ交換を考えるべきなのでしょうか?
ご存知の方がいらっしゃるかもしれませんが、タイヤの溝の深さが1.6ミリを下回る場合は車検を通すことができません。つまり、保安基準ではタイヤの溝の深さの最低限度は1.6ミリであるわけです。
それを下回る場合は、雨天の高速道路だけでなくどんな道でも危険であるとして、法的に走行が許されません。
この基準があるために、「不安はあるにしても2ミリは法的に許されているわけだから、大丈夫なのでは…」などという話を聞くことがありますが、それはタイヤというよりも命をすり減らす考えです。
「1.6ミリは危険だが、2ミリは安全」ということではないのです。先にお話ししたように、タイヤの磨耗は、性能の低下につながります。2ミリという状態では、当然制動力はかなり落ちていると考えるべきです。
それに、磨耗したタイヤはバーストする確率も高まっています。
私は、お客さまのタイヤの溝の深さが3.5ミリぐらいになっていたとしたら、それがどんなグレードのタイヤであっても「そろそろ交換することを意識してください。できれば、あまり間を置かずに交換してはいかがでしょう」とアドバイスするようにしています。
安全なカーライフを前提とすれば、2ミリ前後まで使い込むのはリスクがあります。
8ミリあった新品タイヤの溝が3.5ミリになっているということは、大雑把な計算をすれば2万2500キロを走行してきたということです。溝が3ミリで、2万5000キロ。
このあたりが、タイヤ交換の節目とお考えください。
1.6ミリ高のスリップサインで
溝の深さと交換時期を把握する
ところで、自分の愛車のタイヤの溝の深さがどれくらいなのかを、どうやって知ればいいのでしょうか?
オススメは整備工場などで専用の機器を使って正確に測定することなのですが、実はみなさん自身でも、カンタンにそれを把握する方法があります。
それは、タイヤの「スリップサイン」がどういう状態にあるかを確認し、それで溝の深さがどれくらいかを知るという方法です。
スリップサインとは、タイヤの側面の三角マークが示す延長線上の溝のなかにある高さ1.6ミリの出っ張りのことをいいます(1本のタイヤに4~9箇所あります)。
そのスリップサインとタイヤの表面がどれくらい近くなっているかを見ることで、タイヤ交換のタイミングについてもざっくりと判断できるというわけです。次のような具合です。
「表面よりかなり低い状態 → 溝が深い → 走行が可能」
「表面にかなり近い → 溝が浅い → すぐに交換が必要」
「表面と同じ高さ → 溝の浅さが法的限界 → 走行不能」
もちろん、手もとに物差しなどがあれば、スリップサインにあてて表面までの高さを測ることもできるでしょう(1.6ミリ+表面までの高さ=タイヤの溝の深さ)。
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