今月の達人
品田商会・品田庄一
私が担当する「電動車(xEV)と社会や暮らし」をテーマにしたこのシリーズも、いよいよ最終回です。ここまで、私たち有限会社品田商会(ロータスシナダ)のチャレンジや、自動車整備業界をけん引するロータスクラブの次世代自動車対応施策などを事例として、電動車が社会や暮らしを変えていく可能性を持っているということをお話してきました。第1回は2008~2009年のお話をしましたが、この10年、時代は変わっていないようでかなり変わったと私は思います。そして、この10年の紆余曲折はありましたが、「いよいよ、日本におけるEVの本格的普及は近い」という思いを強くしています。最終回は、これからの10年に向けて、私の予感と期待をお話します。
2030年には次世代車が
販売台数の50~70%になる
2008~2009年に、国は『EV・PHVタウン構想』などで、電動車普及を図りました。これは、今思えば、早すぎた施策であったのかもしれません。
また、2011年の東日本大震災が日本という国に与えたダメージは大きく、それは電動車普及にも小さくない影響を与えました。
しかし、ここに来て、私は「国は、再びEVをはじめとした電動車のの普及に本気で取り組みだしている」と感じています。
2018年8月、経済産業大臣が主催する『自動車新時代戦略会議』(委員は日本の各自動車メーカーのトップや大学教授などの識者)が、中間整理案というものを発表しました。
この会議は、「2050 年までに世界で供給する日本車について世界最高水準の環境性能を実現する」という大目標を設定した上で、それを実現するためにはなにをどうしていけばいいかを検討し、その内容を国の施策に反映させていくことを目指しています。
中間整理案では、大目標達成までのマイルストーンとして、2030年までにHV(ハイブリッド車)、EV(電気自動車)、PHV・PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)、クリーンディーゼル車といった、いわゆる次世代自動車の普及比率を50~70%にまで引き上げるべきとしています。
※自動車新時代戦略会議「中間整理案」を元に作成
この表にあるように、現状では従来車6割強:次世代車4割弱の比率を、2030年には逆転させようというわけです。
しかも、HVは現状か多少のアップという台数で、比率逆転の大部分をEV・PHV・PHEVの台数増加(現在は販売台数の1%強ですが、2030年には20~30%)で行うというのです。これは、かなりの変化と言えるでしょう。
これからの10年は
EV・PHV・PHEVの新車ラッシュ!?
今年になって、6月3日に経済産業省と国土交通省が新車販売の新しい燃費規制(各自動車メーカーの全販売台数の平均で割りだす燃費の規制)の内容を明らかにしました。
現行の新車の燃費規制は、2020年度にガソリン1ℓあたりの走行距離を平均20.3㎞にするというものですが、新しい燃費規制は2030年度に平均25.4㎞を達成すべしという内容です(2019年度内に義務付けのために法令を改正)。
この燃費規制は、ある意味で先に挙げた次世代車の普及、特にEV・PHV・PHEVの台数増加を示唆するものだと言えるでしょう。
ご存知の通り、従来車の燃費は、一時の燃費競争を経てすでに頭打ちの状態です。それをさらにガソリン1ℓあたり約5㎞も改善するというのは至難の業。現在、EV・PHV・PHEVを発売していないメーカーも、2030年までに燃費規制を達成するためにはもう動かざるを得ないのです。
実際に、国内の自動車業界全体の機運としてそれを感じます。最近の話題では、スズキがインドでEVを製造・販売するとか、トヨタが中国でEVを製造・販売するといった話があります。いずれも2020年に具体化するということです。グローバル戦略の中での話ですが、こうして開発されたモデルを基に日本国内でもEVを展開することになるかもしれません。
日産やホンダはすでに次世代自動車戦略を進めていますし、10年前にEVの先鞭を付けた三菱自動車もそう遠くない時期に新型EVを出してくれそうです。
これからの10年は、新しいEV・PHV・PHEVがぞくぞくと登場することになるわけです。従来車が安全装置などを加えてモデルチェンジするのとはまた違う、まったく新しいクルマの発表・発売です。クルマ屋というだけでなく、一人のクルマ好きとしても、これにはワクワクしますよ!
「数分で満充電」
そんな時代が来る
クルマだけじゃありません。インフラ側も大きく変化するでしょう。
急速充電器は、すでに素晴らしい進化を遂げています。このシリーズの第3話でご紹介した、私たち品田商会が経営するガソリンスタンド(エネオス松波SS)に設置している急速充電器の出力は50kwです。これに対して、現在、CHAdeMO協議会が設置を推進している急速充電器は100kwや150kwです。例えば、電気がエンプティになったリーフを、50kwの急速充電器で満充電にするのに2時間かかっていたのが、100kwの急速充電器であれば1時間ですみます。
さらに、CHAdeMO協議会が中国の中国電力企業聯合会と共同開発しようとしている急速充電器は900kWというびっくりするような性能です。これが実現すれば、急速充電器でEVに充電する時間はどんなに長くても10分、短ければ数分ですみます。
つまり、今、ガソリン車がガソリンスタンドで給油するのと同じくらいの時間で、EVの充電を行うことができるようになるわけです。
これはすごいことですよ。
過去に私たちが行ったアンケートでも、EVのお客さまの一番の要望は充電時間の短縮です。皆さん、ガソリン車時代にしみこんだ給油時間を基準に「そのくらいで充電したい」とおっしゃいます。10年前、それは無理でした。今、何とかガマンできるくらいまで来ています。そして、5年もすれば、「数分で満充電」は現実になるのです。
そして、それが何をもたらすか……マンション、アパートに住む方々のEV所有です。これまで、「EVに乗りたいけれども、自宅に充電用のコンセントを設けられないからあきらめよう」と考えていたお客さまが、「自宅にコンセントがなくても、充電スタンドに行けばいい」と考えるようになるはずです。夜間電力が安いというのは確かですが、急速充電料金が高いわけではありません。EV所有は、新たな一歩を踏み出すのです。
HVも、PHV・PHEVも、
EVも、ロータス店に!
最後に、“環境オタク”としての期待を一つ付け加えさせていただきます。
先に挙げた自動車新時代戦略会議の中間整理案は、もちろん自動車のことが中心なのですが、その中で「電源の低炭素化(発電方法をCO₂排出量の少ない低炭素なものにしていくこと)」ということも触れられています。
世界的なEVシフトの目的は、地球全体でのCO₂排出量削減にあるわけですが、従来のガソリン車からEVなどの次世代車へ切り替えるだけでなく、そのEVなどを動かす電気の発電方法もCO₂排出量の少ない方法にして行こうというわけです。
“環境オタク”としては、まさに願ったり叶ったりの方針です。
では、電源の低炭素化で浮上する方法は何かといえば、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーになると思います。ただし、これらの再生可能エネルギーは自然の状態などによって発電量、ひいては電力供給量が左右されます。これは、私たちのガソリンスタンド(エネオス松波SS)のスマートステーション実証事業でも実感しました。
そこで、何が必要になるのかといえば……蓄電の体制ということになります。電力を生み出す発電部分で発電量が変わっても、社会全体として電気がたくさんストックされていれば、それを上手に使えば良いわけです。この社会全体の蓄電体制というものが、今はあまりできていません。
そこで、EVなどの電動車に搭載されているバッテリーが注目されるわけです。特別な蓄電体制を整えなくても、世の中に走っているクルマのほとんどが電動車になれば、社会全体での蓄電量はすごく大きくなります。そして、電動車のバッテリーから必要に応じて電気を取り出し、家庭で使ったりするわけです。
こんなふうに、社会の蓄電体制を整えるという意味でも、電動車の普及は必要とされているんです。
いやー、2030年が本当に待ち遠しいですよね。
これからの10年間で、クルマも、街も、社会も変わっていく……それから、もちろん人も変わっていくことでしょう。そして、従来型ガソリン車から電動車への乗り換えは、そのターニング・ポイントです。
2020年を前に私たちロータスクラブが、そして全国津々浦々のロータス店が次世代自動車取扱認定店となり、電動車取り扱いの準備を進めているのは、お客さま一人ひとりのターニング・ポイント(言わば、EV記念日みたいなもの)にご一緒させていただきたいと思っているからです。
ガソリン車のプロであることはもちろんですが、それと同時に電動車のプロとして、これからも腕を磨き続けます!
ぜひ、HVも、PHV・PHEVも、そしてEVも、ロータス店にお任せください!
実は、日本には電動車普及のための下地がしっかりとできているんです!
なんと、世界初のEVレスキュー車『助っ人EV』を共同開発しちゃいました!
太陽光発電でEVの充電をするガソリンスタンドがあるのを知っていますか?
いまロータス店がぞくぞくと『次世代自動車取扱認定店』になっています!
『次世代自動車取扱認定店』には“環境に取り組むココロ”がしっかりあります!
「バッテリーマネジメント」という言葉をご存知ですか?
これからの10年は新しいEV・PHV・PHEVがぞくぞくと登場します!
お店紹介
品田商会:1950年、品田庄治郎氏が創業。当初は自転車・バイクの販売修理業としてスタート。その後、自動車(国産・輸入車)の修理と販売を手がけ、その技術の高さが評判を呼んで大きく成長。地元では、早くからEVをはじめとする次世代自動車に対応できる会社として認知される(LOTAS次世代自動車取扱認定店)。2代目の社長である品田庄一氏は“環境オタク”を自認。クリーンでエコなお店づくりに取り組んでいる。
住所:新潟県柏崎市松波4-1-63
電話:0257-23-2227(代)
HP:https://www.shinada-web.com