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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2019年2月13日更新
深セン市にある企業のCEOに
直接インタビューを敢行!
前編では、匿名希望の中国人男性の「中国のEVの数はすごく多いが、質は日本が上」という意見を紹介した。
しかし、たった一人の意見では本当のところはわからない。それに、EVはともかく、自動運転やコネクテッドカーはどうなのかも気になるところ。ということで、取材を続行。
だが、いくつか回った中国企業のブースでは、「あまりよくわからない」「本社の許可がないとインタビューが受けられない」との理由で首を振られ、残念ながら思うように話が聞けなかった。
だが、自行科技=深セン市オートクルーズテクノロジー有限会社という中国企業のブースを訪ねたところ、幸いにもそこにCEOのDr.Yanfeng GUANさん(トップ写真の向かって右から二人目のメガネをかけた男性)がいて、本人から直接「取材OK」をもらうことができた。しかも、同社の製品の日本での販売を仲介している豊田通商グループの株式会社ネクスティエレクトロニクスの社員が通訳の協力を買って出てくれもして、わずか15分程度であったが、万難排したインタビューと相成った。
ちなみに、自行科技がある中国の深セン市は中国版シリコンバレーと呼ばれており、次世代自動車に関する先端技術を武器に打って出ているスタートアップ企業がひしめいている。
自行科技もその一つで、先進運転支援システム=ADASと自動運転関連に特化した製品の開発および生産を行っている。それら製品はすでに中国国内の自動車メーカーならびにボッシュ中国などの大手サプライヤーに納入されていて、評価も高く、そうした実績を背景に自行科技は中国DMS国家基準制定メンバー企業に名を連ねている。
そのCEOを務めるDr.Yanfeng GUANさんは、だから、リアルな現場の視点で中国の次世代自動車事情を語れる人なのである。
日本並みの技術がないと
真のEV大国とはいえない
― いま、中国はNEV政策によってEVならびにPHEV車が急激に普及し、EV大国となりつつあります。それを見て、EVの普及があまり進んでいない日本では「EVの分野では、もう日本は追いつけないかも知れない」との声があがったりしているのですが、そこらへんをどう見ていますか?
Dr.Y.GUAN たしかに現在、中国はEVで世界一のマーケットになっています。BYDという自動車メーカーのEVを筆頭に年に何十万台も売れていて、近々百万台から数百万台規模へと販売が伸びていくと予測されています。そして、こうした巨大な市場を当て込んで数百にのぼる国内外のEVメーカー、部品サプライヤーが入り乱れており、マーケット全体がものすごい活況を呈しています。まさにEV大国といっていい状態。……ただ、どうなんでしょう、それはあくまで市場の話であって、だからEV分野で中国が日本より勝っているという見方はちょっと違うような気がしています。
― 先ほど、別の中国の方から「日本のEVは質で勝っている」という話がありましたが、そういうことですか?
Dr.Y.GUAN そのとおりです。中国の部品を使った中国のEVの完成車の一部はかなりのレベルに達してきてはいるものの、市場に出回っているEVの多くは、正直、まだまだと言わざるを得ません。しかも、「走りの技術」や「走りの質感」そのものが未熟であったりします。EVといえどもガソリン車と同じ道路を走るクルマなわけですから、そういうクルマのコアな部分を向上させなければ、EV大国として胸を張ることはできないように思います。これら問題点の解決策としては、地元メーカーやサプライヤーの自助努力が必要なのはもちろん、私としては、日系の企業と良好な関係を結び、その中で技術、質を高めていくのが一番いいだろうと考えています。
理想の次世代自動車は
日中共同でつくりあげる!?
― では、自動運転やコネクテッドカーの分野はいかがでしょうか? 中国では自動運転ならびに次世代通信規格である5Gの実証実験などを進めていて、それらの開発の速度と規模は日本と比べようがないほどにすごいと聞いています。
Dr.Y.GUAN おっしゃるとおり、中国はそうしたインテリジェントなクルマの開発にかなり力を入れています。たとえば、私たちの会社がある深センでは自動運転の公道実験がほうぼうで行われています。また、上海や北京などでは、通信によるインフラ協調型の自動運転用の都市をつくるといった大規模な実験を行っており、その中には5Gの通信技術を用いているところがあります。ですから、トラディショナルなクルマの技術はともかく、そうした先進技術の分野においては、確かに中国が一歩リードしている感は強くあります。
― それら開発は、当然、官民一体となって進められているんですよね?
Dr.Y.GUAN ええ、政府の強力なバックアップの元、大手の通信会社や自動車メーカーはもちろん、そこに技術や製品を納める私たちを含めたスタートアップ企業も数多く参画しており、まさに官民一体となって開発が進んでいます。ですから、日本の皆さんが想像しているよりも、実用化に向けた動きは相当にリアルなものになっているといっていいと思います。
― EVとちがって、これらインテリジェントなクルマの分野では日本は到底追いつけない感じになっているのでしょうか?
Dr.Y.GUAN いえ、それは最終的にどうなるかはわかりません。先ほどもいったように、日本はクルマづくりの技術に関しては非常に高いものをもっていますから……。結局、私は次世代自動車の覇権をどこが握るかということについては、あまり関心がないのです。それよりも、お互いが得意とするところを持ち寄り、より良いクルマ、より良い交通社会をつくりあげることのほうが大事だろうと考えています。実際、いま、私たちの会社は、そのために日本におけるパートナー探しを行っているのです。
Dr.Yanfeng GUANさんの言葉にも、日本に対するリップサービスは多少あったが、中国と日本は覇権争いをするのではなく、それぞれ得意分野を持ち寄って、より良いクルマ、より良い交通社会をつくっていくべきという意見には心を動かされた。国益ということを考えると甘い理想論となるのかも知れないが、みんなが幸福になる次世代自動車の世界は、本来、かくあるべきなのだろう。自行科技の健闘を祈りたい。(後編に続く、文:みらいのくるま取材班)
『第11回オートモーティブワールド』ルポ
(前編)「中国のEVは、数はすごいけれども質はまだまだなんですよ」
(中編)「インテリジェントカー分野は中国が一歩リードしてますかね」
(後編)「日中それぞれのやり方で次世代自動車をつくりましょう」
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