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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2018年11月14日更新
「協調型」の自動運転技術に
スポットが当たりはじめた
いま、巷でスポットを浴びているクルマの安全支援技術や自動運転技術は主に「自律型」だ。
道路上の状況を読み取るさまざまなセンサー類を備え、そこからのデータを解析して相応しい操作を指示するAIがあれば、クルマ単体で安全な走行ができるとされており、それを高度な領域で実現することに注目が集まっているのである。
しかし、そんな中、専門家たちからは「自律型技術だけでは心許ない」という声もちらほら出ている。これは「自律型技術に加えて、他のクルマや歩行者、インフラ設備などとのあいだで通信ができて、それに従ってクルマの制御ができれば、もっと安全に走行ができるはず」という考えに基づいた意見で、「自律型」という呼称に対して「協調型」と呼ばれる技術の必要性を求めるものである。
実は、この「協調型」が必要だという考えは、安全支援技術や自動運転技術が構想された当初から既に存在していた。そして、その実用化にはそれなりに大きな期待が寄せられていた。
ところが、いつのまにか手っ取り早くできる「自律型」ばかりが目立つようになり、手間がかかる「協調型」はなんとなく影が薄くなっていた。件の専門家たちは、こうした流れに異を唱えているといえるのである。
さて、今回の『CEATEC JAPAN 2018』であるが、この「協調型」の技術に関する展示がかなり多くあった。そして、それらのほとんどは「V2X」という名称の元で披露されていた。
ちなみに、「V2X」とはクルマが交通環境上にある“なにか”(対象物)に通信でつながるという意味の略語だ。クルマが他車とつながるときはV2V(Vehicle-to-Vehicle)、クルマが信号機などのインフラとつながるときはV2I(Vehicle-to-roadside-Infrastructure)、クルマとスマホなどをもつ歩行者とつながるときはV2P(Vehicle-to-Pedestrian)と末尾のアルファベットを変えて表現することになっている。つまり「V2X」とは、「協調型」の技術を、つながる対象別に分けて認識するための用語ということだ。そう難しい話ではない。
一般道での自動運転には
「V2X」の技術が不可欠
京セラや村田製作所、アルプス電機といった電子部品を製造しているメーカーのブースでは、この「V2X」に関する技術展示が目立っていた。
とくに京セラは、「V2X」を説明するための専用コックピットを設けるなどして、その有用性と安全性を強くアピールしていた。
京セラの担当者に話を聞いた。
「今回は、あくまで有用な安全支援技術の一つとしてV2Xをアピールしているわけですが、将来的に自動運転に役立てることを視野に入れているのはいうまでもありません」
「たしかに自律型の自動運転車は、現在、高速道路などの限られた交通環境では問題なく走れるレベルにきています。しかし、一般道路などではそうもいきません。実際、アメリカでの公道実験では、完全自動運転と謳ったクルマが重大な事故を起こしたりしています」
「やはりインフラや歩行者側とのつながりによる安全確保も必要となるわけで、V2Xの技術はそれを実現するものとして期待されています。それで、われわれはそれに応えられる高精度なV2Xの技術を提供することを目指しているというわけです」
なるほど、自動運転化技術の最前線は、一般人が知らないうちに「自律型+協調型」へと移行しつつあるようだ。
準天頂衛星『みちびき』で
高精度な位置測定が可能に
総合電気メーカーである三菱電機は、ずばり自動運転技術に関する展示を行っていた。
しかも、その内容は非常にバラエティ豊か。センサー類やAI技術などの展示に加え、VRで自動運転が体感できるといったなかなかに楽しいコーナーまで設置していた。
目移り必至だが…。
担当者から話を聞くと、展示の真髄は、やはり「V2X」にあるように思われた。
「2010年から宇宙空間に三菱電機が製造した準天頂衛星の『みちびき』が4機打ち上げられているのですが、2023年には7機体制となる予定です」
「これによって将来的に何が起きるかというと、いままでになかった高精度測位社会が到来します。クルマのことでいえば、従来のGPSがメーター単位でしか自車位置の測定ができないのに対し、センチメーター級の自車位置測定ができるようになります」
「具体的には、衛星からの情報を高精度の三次元マップに置けば、センサー類の助けがなくても、いま走っているところが走行車線なのか追い越し車線なのかまでしっかり把握できるようになるということ……。われわれは、こうした技術を活用したより安全な自動運転の確立の提案を行っているのです」
つまり、人工衛星から受け取る位置情報も「インフラとの連携」と捉えれば、これも「V2X」の一環ということになるわけである。
ルポの前編では、「クルマのコネクテッドとは案外に気軽かつ気楽なものだ」と紹介したが、ここにきて壮大なコネクテッドの一端も垣間見えた次第だ。
以上、『CEATEC JAPAN 2018』でのクルマに関する展示のあらましを語った。どうだっただろうか、ごく一部の展示の紹介に過ぎないが、「つながるクルマは楽しくて安全である」ということが、うっすらとでもおわかりいただけたのではないだろうか。
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