ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2018年12月20日更新
日本はEV先進国?
それともEV開発途上国!?
― 2009年に三菱自動車は世界で初めての量産型EVであるアイ・ミーブを発売しました。また、2010年に日産が出したリーフは累計販売台数が世界一多いEVとなっています。これらのことを受け、一部では、日本はEV先進国であるとの声がありますが、これについてはどうお考えでしょうか?
舘内 いやいや、日本がEV先進国だなんて大いなる間違いです。たしかにアイ・ミーブとリーフは世界に先駆けて本格的に発売されたEVであって、それなりの意義と実績はあります。でも、現時点で日本の主要な自動車メーカーが出しているピュアEVって基本的にその2車種だけ。先進国というには少なすぎですよ。
そもそも現在の日本のピュアEV普及率は1.0%ととても低いんですけど、その原因の一つとしては、選択肢が限られているからユーザーが手を出しにくいということが挙げられます。欧米や中国では、けっこうな種類のEVがでてきており、それにともなって普及率も高まっている。ノルウェーなんて3台に1台がピュアEVなんですよ。そういう国と比べたら、日本はEV先進国というより、むしろEV開発途上国といった方がいいんじゃないでしょうか。
― EV開発途上国ですか……。
舘内 たとえばヨーロッパでは、主要な自動車メーカーがこぞってEVを販売、もしくは販売間近の状態にしています。フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、ダイムラー、BMW、ルノー、プジョー、VOLVOなどに加え、あの「EVはつくらず、エンジン車でいく」っていっていたジャガーまでもがI-PACEというEVを発表し、すでに予約を始めている。もう、EV化が怒濤の勢いで進んでいるんですよ。
数でいうなら、中国なんてもっとすごい。自国のEVメーカーを育てるという国策もあり、「これは?」と首を傾げるものまで含めれば数十ものEVメーカーが勃興し、現在は競合・淘汰へと進展しています。しかも、一部のメーカーのEVはクオリティもかなり上がってきており、その点においても端倪すべからざる状態になってきているといえます。
自動車大国ゆえのEV敬遠ムード
― 日本のEV普及率が低い原因としては、車種の少なさ以外では、どのようなことが考えられるでしょう?
舘内 一つは、三菱や日産以外の自動車メーカーが、エンジン車やハイブリッド車の存続に強くこだわり過ぎた結果ということがいえますね。
自動車大国である日本には、エンジンを搭載したクルマづくりのためのピラミッド型の産業構造ががっちりとできあがっています。これは国にとっても自動車メーカーにとっても非常に重要なものとなっていて、自動車業界にどんな変化が起ころうとも、まずはしっかりと守っていくことが最優先される傾向があります。それ故、業界側に、つい最近まで“エンジン車をなきものとする”EVを敬遠するムードが色濃く漂っていました。
それを受けて多くのメディアやジャーナリストも、「EVは航続距離が短くて、充電インフラが整っていないから使い物にならない」といったようなネガティブな論調の報道をするようになりました。
もうね、こうなると、ユーザーはおいそれとEVに手がだせないわけですよ。
日本でこれまでEVの普及率がなかなか伸びなかったのは、だから、こうしたことが相当に大きく影響しているだろうなと僕は思っているんです。
ただ、いまはEVの航続距離も、充電インフラの数も文句がつけようのないレベルに近づいてきている。そして、世界のライバルメーカーたちがどんどんとEV化を進めている。こうした動かしようのない事実を突きつけられて、ようやく日本の各メーカーもネガティブなことをいっている場合じゃないと気づいたみたいで、つぎつぎと前向きにEVの開発と販売に取り組みはじめている。あのエンジン車に固執していたマツダさえもが、2020年にEV(ピュアEVではなくてレンジエクステンダーEV)を発売すると発表しましたからね。
まあ、とてもいい傾向だとは思うんですけど、さて、どうなんでしょう。正直、ちょっと遅すぎる感は否めません。欧米そして中国の各メーカーとかと比べると3~5年は遅れている。ちゃんと追いつけるかどうかは、今後の各メーカーの奮闘努力に期待するしかありません。
廉価な軽EVが求められている
― 現状、EVは価格が比較的高めです。このことも普及率の低さに影響していませんか?
舘内 それもかなり影響していますね。なにしろ現在の日本のマーケットは代替需要が主なうえに、ちょっと値が張る登録車があまり売れない状態になっている。売れているのは、廉価な軽自動車ばかりです。そんな状況で、ガソリンエンジンの登録車より高いEVに食指が動かないのは、ある意味、当然といえるでしょう。
だから、車種を増やしていく中で、手ごろな価格の軽自動車タイプのEVラインナップも揃えていくべきなんですよ。そうすれば、EV普及率は大きく上がっていくに違いありません。
じゃあ、問題は、どのメーカーがそういった軽タイプのEVを出すかですが……。僕は、とりあえず先駆者である三菱&日産か、中国市場向けにEVをつくりはじめているホンダの可能性が高いと踏んでいるんですけど、もう一つ、中国メーカーで力のあるところが独自に軽タイプの廉価なEVをつくり、それを日本に輸出してくるということもあり得ると思います。
繰り返しになりますが、中国の一部のメーカーがつくるEVは侮れないレベルにまできています。もしそれが軽タイプとなって日本に入ってきたら、現段階で廉価な軽自動車を求めている人たちにすんなりと受け入れる可能性は十分にあり得ます。だから、この点においても、日本のメーカーはうかうかしてられないんです。
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
EVの試乗車と展示車は例年並だったが、充電に関する展示と講演・プレゼンテーションが多かった——。2023年11月25日(土)、「つながろうみんなでCO2削減…
2023.12.14更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
スズキ、三菱自動車などの最新の88台を徹底批評1976年から発刊され続けている『間違いだらけのクルマ選び』の見どころは、巻頭のエッセイだけでない。自動車評…
2019.01.29更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
高速道路での渋滞には本当にうんざりする。なるべく避けたいところだが、交通量が多い時間帯になると、どうしても遭遇の確率が高まってしまう。なんとかならないのか?…
2024.09.26更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2018年から音が大きくなって消せなくなる前編で述べたように、ハイブリッド(HV)車などの静音問題は対応したようで対応していない状態が続いてきた。それに対し…
2016.11.14更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
世界初の量産型EVとして登場した『i-MiEV(アイ・ミーブ)』は国内外で高い評価を獲得し、後に始まるEV化時代のベースを築くに至った。後編では、その高い評価の…
2019.09.10更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
今のクルマのメインテーマは早急なCASE(※)の実現である。特にE=電動化の実現は、カーボンニュートラルの観点からも喫緊の課題となっている。※CASE:C(コ…
2023.11.14更新