ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2018年12月20日更新
ロータスクラブも会員になっている一般社団法人日本EVクラブ。その代表である自動車評論家の舘内端さんに「日本EVクラブ発足の経緯」「日本のEV化の現状と課題」「レース界のEV化の動き」「EV時代の自動車整備業への期待」などについて伺った。歯に衣着せぬ口調の、的確かつユニークな論に刮目!
CO₂を大量に発生させる
エンスーなカーライフを猛省
― 舘内さんは日本にEV(電気自動車)を普及させる活動をするために、いまから四半世紀ほど前の1994年に日本EVクラブを立ち上げました。1994年といえば、世の中にまだEV化への動きがほとんどないに等しい状況。そんなときに、どうしてEVに着目したのでしょうか? まず、そこに至るまでの経緯から教えてください。
舘内 1970年代から90年代のはじめごろまで、僕はエンジン車でさんざん好きなことをやっていました。レーシングカーのエンジニアとしてF1で自分が設計したマシンを走らせたり、自動車評論家としてたくさんのエンジン車について「○」と「X」を語って読者の皆さんの購買意欲を刺激したりしていました。しかも、V型12気筒のジャガーXJSに乗っていたことだってある。これ、徳大寺さん(自動車評論家の故・徳大寺有恒氏)に「すごくいいぞ」ってそそのかされて買ったものなんですけど、燃費がわずか2㎞/ℓしかない、大のガソリン喰い。それにも関わらず、もう嬉々として乗っていましたね。
― ある意味、当時のクルマ好きの王道をいかれていたわけですね。
舘内 まあ、そんな感じなのかな。だけどね、そうこうしているうちに、世間ではCO₂による地球温暖化についての議論が盛んになってきて、その元凶の一つとしてガソリン車がやり玉にあがりはじめたんですよ。
これに対しては「机上の空論に過ぎない」とか「遠い未来の話だ」とかいう反論がでたりもして、業界人も含めて多くの人たちが「オレには関係ないや」って顔してたんだけど、僕は排ガスだらけの現場にしょっちゅういたせいか、かなりリアリティをもってその論を受けとめた。そして、自分なりに勉強してみたところ、本当に地球がたいへんな状態になっているのがわかり、大きな危機感を抱くに至った。「近い将来、エンジン車に乗っちゃいけない時代がくるかも知れない。そうなったら、大好きなレースもできなくなるにちがいない」って思い、心の底からゾッとしたんです。
― それで環境にいいEVに着目された、と。
舘内 そう、クルマ社会がCO₂をださないEV主体の世界になれば、たぶん誰も文句を言わなくなるだろうから、レースをはじめとする自分の好きなクルマの仕事もつづけやすくなるに違いないと思ったんです。まぁ、社会正義というより自己本位な動機のほうが強いわけなんですが(笑)。とにかく、僕はこれまでの路線を急遽変更することにし、「エンジン車は×で、EVは○」ということを世の中に広くアピール&アクションしていくための日本EVクラブを立ち上げたというわけです。
世界の資金がEVに流れはじめた!
― いま、世の中では、かつて舘内さんが予感したとおりにガソリン車やディーゼル車が規制の対象となり、EVの存在感がいや増しています。とくにこの2~3年は、それが顕著になっています。このEV化について、舘内さんはどのような感想をお持ちですか?
舘内 このところの急激なEV化への動きは、2015年のパリ協定の採択とフォルクスワーゲンによる不正問題がトリガーになっているんですけど、「人々の環境意識が高まったから」というだけではないと考えた方がいい。エンジン車の将来性が不透明になってきていることを受けて、金融機関や投資家の資金がEV開発のほうにどっと流れるようになった結果だともいえます。
卑近な例でいうなら、いまメーカーが新たなエンジン車やディーゼル車を開発して販売したとしても、10年後に中古車としての価値が大幅に下落する可能性が出てきた。だったら、そこに資金を回すよりも将来性のあるEV開発の方に投資効果があるんじゃないかという損得勘定が働き、それが市場の在り方に大きく影響を及ぼしているということです。
ある意味、グローバル経済のクールな話という側面が強いので、環境派のクルマ好きにとっては多少モヤモヤするところはあるわけですが、それが結果的には痛んだ地球とそこに住む人類に大きな恩恵をもたらすのは間違いないことなので、まあ、よしとすべきなんでしょう。
ついでに僕ら苦節24年の日本EVクラブにとっても面目躍如ということになるので、そういう意味でもなによりかなと思います(笑)。
― ちなみに、日本EVクラブを立ち上げたときと現在を比べると、周りの反応は変わっていますか?
舘内 立ち上げ当時は「舘内がおかしくなった」とか、さんざんな言われっぷりでした。ところが、そんな悪口をいっていた連中も、最近では「さすが舘内さん、先見の明がある!」とかいってしきりに褒めてくれるようになった。もう、なんだかなぁって感じですよ(苦笑)。
①「大好きなレースをつづけるために日本EVクラブをつくりました」
②「中国から軽タイプのEVが入ってくる可能性はありますね」
③「もうすぐF1はフォーミュラーEに取って代わられるでしょう」
④「街の整備工場はEVサービスの発信基地になるべきです」
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
日本には国道が459本ある。そのうち53本は「酷道」だ。酷道とは、対向車とすれ違えないほど狭かったり、落石や木の枝がたくさん落ちていたり、生命の危険を感じる…
2024.03.05更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
交通事故でケガをして気を失ったとしても、通信機能のあるドライブレコーダーを通して事故受付センターがその状況を察知し、代わりに救急車を呼んでくれる――。東京海上…
2023.08.17更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
前編に続いて、6月25日(日)に東京の日本科学未来館で開催された、日本EVクラブ主催の『最新EV・PHV試乗&セミナー』について、後編では試乗を中心にレポートす…
2017.08.29更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
経済的視点ではなくクルマ愛で語る未来『2017年版間違いだらけのクルマ選び』では、PART2の「クルマ界はどうなる?」がエッセイ部分に当たる。今回、ここで…
2017.01.30更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
『タフ・つながるクルマの保険』はコネクテッドカー向けの保険あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(以下、あいおいニッセイ同和損保)の『タフ・つながるクルマの保…
2020.10.13更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
世界的なEVシフトの急速な進行は、環境意識よりも新産業を育成しようとの意志が強く働いている結果だ――。日経BPのロンドン支局長である著者は、EUの公的機関や、…
2023.12.26更新