ここは、未来のクルマや新しいカーライフを研究するコーナー。できるだけわかりやすく、そのヒミツや魅力を解き明かしていく。まずは、最近話題の次世代エコカーについての勉強会。1時限目は電気でモーターを回して走るクルマの歴史をひもといてみたい。
モーターを重視する次世代エコカー
この頃、次世代エコカーといわれるクルマが徐々に公道を走りだしている。ハイブリッド車以降でいえば、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)がその代表的なものとなっている。
それぞれ仕組みは違うわけだが、一つ大きな共通点がある。それは電気でモーターを回して走るという点だ。たとえエンジンを積んでいたとしても、モーターを補う意味合いがけっこう強かったりする。
なぜモーターなのかというと答えは簡単。排ガスを出すエンジンよりも環境に良いからである。しかも、乗り心地がバツグンなうえ、いつか身近になるであろう自動運転化やIT化にフィットしやすいというメリットまである。つまり、モーターはまさに次世代のクルマにふさわしい動力源と言えるのだ。
もちろん、長らく愛されてきたエンジン車も環境性能と走行性能の両立にがんばっている。価格や使い勝手を考えると、今のところはそちらを選ぶ方が現実的なところはあり、しばらくその傾向は続くと見られる。しかし、数年先、十数年先はどうなるかわからない。価格、インフラをはじめとしたさまざまな課題が解消されていけば、どの次世代エコカーもエンジン車と並んで普通の選択肢の一つになる可能性が大きい。いや、現実、そうなりつつある。
そうであるならば、こうした新しいクルマたちのことを勉強しておいて早過ぎるということはないだろう。
ロータスクラブは、環境に優しい自動車整備工場に取り組んでいます。
1830年頃に生まれた電気自動車
では、電気でモーターを回して走るクルマの歴史から見ていこう。諸説あるが、電気自動車が発明されたのは1830年前後というのが一応の定説だ。ガソリン車の発明が1890年代ということを考えると、ちょっと驚きの早さといえる。
おそらく当時の人々は、モーターで走るクルマに大きな夢を託したのであろう。その後、電気自動車の開発は数十年にもわたって活発に続けられた。その間の有名なエピソードとして、ビートルをつくったポルシェ博士や発明王のエジソンまでもそれに積極的に関わっていたという話がある。
しかし、残念ながら、20世紀を過ぎた辺りからその勢いは徐々に衰えることとなった。1908年にガソリン車であるT型フォードの大量生産が始まり、人々の関心がガソリン車へと移ってしまったからだ。当時の電気自動車はバッテリーの性能が良くないことや、電力インフラが未整備だったことなどから、どうしても航続距離を伸ばせないという悩みがあった。そこへ航続距離が圧倒的に長い普及型ガソリン車の登場である。動力源としての良し悪しは別として、使い勝手を考えれば、とても太刀打ちできる状況ではなかった。
それ以降、電気自動車は性能を向上させた形でときどき世に姿を現したものの、20世紀の終わりまで一度も大衆化することなく時は過ぎていった。
■電気でモーターを回して走るクルマに関する歴史
1769年 フランスのニコラ=ジョゼフ・キュニョーが蒸気機関式自動車を発明
1800年 イタリアのアレッサンドロ・ボルタが電池を発明
1832~39年 スコットランドのロバート・アンダーソンがモーターとカンタンな電気自動車を発明
1835年 オランダのストラチンが小型の3輪自動車を設計(助手が製作)
1842年 アメリカのトーマス・ダベンポートが道路を走れる電気自動車を発明
1873年 イギリスのロバート・ダビットソンが鉄亜鉛電池(1次電池)による実用電気自動車を開発
1881年 フランスのアミーユ・フォーレが鉛蓄電池を改良し充電式電気自動車の実用化に成功
1891年 イギリスでガソリンエンジン式の自動車が発明される
1897年 ロンドンとニューヨークで電気自動車のタクシーが走る
1899年 ベルギーのカミーユ・ジェナッツィが電気カーレースで時速106キロを記録
1900年 アメリカで自動車生産台数が4000台を突破。電気自動車はその40%を占める
1908年 アメリカのフォード・モーター社がガソリン車Ford Model Tの量産を開始
1909年 アメリカのトーマス・エジソンがニッケル・アルカリ2次電池を発明し、航続距離160㎞、最高時速80キロの電気自動車を開発するも実用化は断念
1911年 日本自動車が輸入車を参考に電気自動車の試作を開始
1949年 日本電気自動車製造が小型車の製造を開始
1949年 日本の電気自動車普及台数は3299台に。自動車保有台数の約3%に及んだ
1955年 電気自動車はほとんど使われなくなる
1960年代半ば 自動車の排気ガスによる大気汚染が問題となり、新たに電気自動車の研究がはじまる
1990年 ニッケル水素2次電池(Ni-MH)が量産開始
1991年 リチウムイオン2次電池(LiB)が実用化される
1997年 トヨタが世界初の量産型HV「プリウス」発売/ホンダが電気自動車「EV PLUS」をリース販売
2009年 三菱自動車がLiBを用いた軽自動車タイプのEV「アイ・ミーブ」を発売/トヨタが「プリウス プラグインハイブリッド」を発売
2010年 日産がファミリーカータイプのEV「リーフ」の販売を開始
2013年 三菱自動車がPHV「アウトランダーPHEV」を発売
2014年 トヨタがFCV「MIRAI」を発売
※出典:『街を駆けるEV・PHV』(日刊自動車新聞社刊)より抜粋・加筆
時代の要請で再登場したモーター車
そんな歴史をもつ電気自動車、すなわちモーターを回して走るクルマが、再び大きく注目されるようになったのはごく最近のことである。
きっかけは、ガソリン車をはじめとするエンジンで走るクルマから出る排ガスの有害性、ことに二酸化炭素(CO2)による地球温暖化の弊害が叫ばれはじめ、そこから違う動力源で走るエコカーの登場が待ち望まれるようになったことだ。もともと走行性に定評があり排ガスを出さないモーターは、電池の蓄電能力が飛躍的に伸びたことと相まって、必然的に代替動力源の本命として浮上することになったのである。
その流れの中で、1997年、日本においてハイブリッド車が世界で初めて発売された。エンジンとモーターを併用して走るこのクルマは、現実と理想をうまくバランスさせたエコカーであったことから、世に大いに受け入れられた。そして、その勢いに乗り、21世紀に入ってからは、電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車といったモーターを回して走ることを重視したクルマが次々と市場に投入されることになった。
普及という視点で見ると、それら次世代エコカーと呼ばれるクルマのシェアはまだまだ小さいのが現状だ。だが、諸条件が整ってくる2020~2030年には主役に近い位置につけるのはまちがいないと見られている。そう、ある意味、20世紀初頭に起こったこととまったく逆の現象がはじまろうとしているのである。
次回からは次世代エコカーから電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車をピックアップし、それぞれの仕組み、メリットなどについて見ていくことにする。
※参考文献:『街を駆けるEV・PHV』(2014年 日刊自動車新聞社刊)/次世代自動車振興センターHP/『DIME』(2014年4月号)/『SAPIO』(2015年5月号)他
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