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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2016年11月14日更新
2018年から音が大きくなって消せなくなる
前編で述べたように、ハイブリッド(HV)車などの静音問題は対応したようで対応していない状態が続いてきた。
それに対して、2016年10月、ついに国交省が、HV車などを対象に“音が消せない車両接近通報装置”の搭載を義務化することを発表した。それを伝えるニュースの抜粋が以下である。
国土交通省は、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)、燃料電池車の存在を人工音で知らせる「車両接近通報装置」の搭載を、自動車メーカーに義務づけることを決めた。モーターで走るため走行音が静かすぎて、視覚障害者らが接近に気づかず、危険との声が強まっているため。2018年3月以降に国の認証をとって発売される新型車が対象になる。(中略)18年3月以降の新型車を対象とする新規定では、手動で音を消せなくなるうえ、音量も現在のものより大きなものを義務づける。今月中に、道路運送車両法に基づく車の保安基準を改正する方針だ。(中略)音量は、これまでのガイドラインでは「エンジンで時速20キロで走行する程度」を目安としてきたが、新基準は10キロで走行時は50デシベル以上、20キロでは56デシベル以上と細かく規定。56デシベルはエアコンの室外機の音量に近く、現在搭載の装置より大きな音になるという。周波数(音の高さ)も、聞こえやすい値を規定する。(朝日新聞2016年10月6日)
歩行者にとってはとてもGoodなニュースである。自身の快適さを優先させてきたドライバーにとってはけっこうBadなニュースになるのかもしれないが、そんなのは関係ない。そもそも道路上は歩行者ファーストなのだ。その安全の基本を思い出せば、この義務化は遅すぎたくらいで、異論を唱えるのはまったくもって筋ちがいといえる。とにかく、交通社会全体にとって、めでたしめでたしの義務化なのである。
心地よい「車両の走行状態を想起させる連続音」に期待
ただ、これですべての問題がオールクリアになるかというと、そうでもない気がする。
そもそも、ドライバーが消音にしていた理由には、車両接近通報装置の人工音が気持ちよくないという不満があった。「やっぱり音をなんとかしてほしい、できれば耳障りが悪くないものにしてもらいたい」というドライバーの要望は残る。音が大きくなるのであれば、なおさらのことだ。
じつは、2010年の「ハイブリッド車等の静音性に関する対策のガイドライン」には、以下のように音の種類の規定について書かれている。
発音される音は、車両の走行状態を想起させる連続音であるものとする。この場合において、以下の音又はこれに類似した音は不適当なものとする。
① サイレン、チャイム、ベル及びメロディ音
② 警音器の音
③ 鳴き声等動物や昆虫が発する音
④ 波、風及び川の流れ等の自然現象の音
⑤ その他常識的に車両から発せられることが想定できない音
今後、この内容が変わるのかどうかは、現時点ではなんともいえない。だが、おそらく「車両の走行状態を想起させる連続音以外を不適当なものとする」という主旨はあまり変わらないだろう。つまり、心地よさについてはあまり問われず、「クルマをイメージさせる音を出す」ことに固執する可能性が大きい……。
ただし、日本で起きているこの「未来のクルマをめぐる音の問題」が呼び水になったかたちで、海外の自動車関連企業では「未来のクルマにふさわしい音を見つけよう」という動きがみられる。考えてみれば、音は、クルマのマーケティングにとってとても重要な要素なのだ。
このことに目覚めた自動車メーカーが未来のクルマにふさわしい音の開発に着手するか、あるいは音響メーカー、あるいはもっとやわらかい音源開発会社などが参入してくるか、そこのところはまだ明確ではない。
しかし、一つだけいえることは「未来のクルマの音はもっと創造的に開発すべき」ということだろう。
ドライバーも「心地良くない音だから消したい」と考えるばかりでなく、「もっといい音にしてくれ」と主張すべきだと思う。自動車メーカーに、そうした声は必ず届くはずだろうから……。
2018年3月という「みらい」を、みんなで明るく心地よいものにしよう!
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