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ALL JAPAN EV-GP SERIES 2024 第5戦レポート②【決勝】―小峰選手が完全ノーマルの5Nで初優勝。プラッドのKIMI選手の全戦優勝を阻止!

2024年10月15日更新

EV-GP 2024 Rd.5 2-1

決勝前、ALL JAPAN EV-GP SERIESを主催するJEVRA(日本電気自動車レース協会)の富沢久哉事務局長に、レースの行方について話を聞いた。

「予選でアイオニック5Nのハイパフォーマンスぶりは想像以上だった。KIMI選手が勝つつもりでいるのなら、CHOI選手を先に行かせて力を保ちながら走り、終盤で逆転する形に持っていくべきだろう。もし、KIMI選手が先行してアクセルをガンガン踏むレースをすれば、後半にバッテリーがタレて、CHOI選手に優勝を持っていかれることになるかもしれない……。いずれにしても、今日のトップ争いはかなりの接戦になると思う。楽しみだ」

午後4時15分から曇天の中ではじまった決勝レース。富沢事務局長の見立ては7割方当たった。

迅速のテールトゥノーズ

レッドシグナルがオールクリアになった瞬間、KIMI選手(#23)のモデルSプラッドはスタートダッシュを決め、トップで第1コーナーを回っていった。

KIMI選手は、富沢局長が禁じ手としていた先行パワーレースの道を選んだのだった。

EV-GP 2024 Rd.5 2-2

これまでプラッドがダッシュすると後続との差がぐんぐん広がったものだが、この日は、そうならなかった。

CHOI選手(#3)と小峰選手(#22)のアイオニック5Nが、後ろにピタリとついた。

特にCHOI選手の5Nの走りは鋭く、ほぼテールトゥノーズでプラッドを追い続けた。

EV-GP 2024 Rd.5 2-3

まるで曇天の中の白と青の稲妻。

序盤、トップの2台は予選タイムに近い1分57~58秒で周回を続けた。

それは中盤で4位以下の車両をすべて周回遅れにするかと思わせるほどのハイスピードだった。

観衆は、プラッドの真の速さと5Nの秘めた実力を思い知り、両車の近接バトルに見入っていた。

5Nがプラッドを抜く!

そして7周目。ついに歴史的な瞬間が訪れる。

トップをゆくKIMI選手のプラッドが裏セクターのストレートで突如スローダウン。後を追っていたCHOI選手の5Nがそれをアウトからズバッと抜き去ったのである。

EV-GP 2024 Rd.5 2-4

プラッドがレース中にスローダウンするのも、はっきりとオーバーテイクされるのも初。

それは、モデル3とプラッドが築いてきたテスラ王国の鉄壁の牙城を、青い閃光が崩した瞬間だった。

観衆からは言葉にならない歓声が地鳴りのように響いた。

EV-GP 2024 Rd.5 2-5

プラッドのスローダウンは、バッテリーではなく駆動系の過熱によるスピード制御が原因。7周目までのトップ争いは、それほどまでに苛烈だった。

伏兵の5Nによる快挙

ゴールまで残り5周。

富沢局長の予想どおり、初参戦であるCHOI選手の優勝の線が見えてきた。

「さすがヒョンデ渾身の1台、さすがプロドライバーの走り」との思いが強くなった。

EV-GP 2024 Rd.5 2-6

ところが、そう感じた途端にまた予想外のことが起こる。

CHOI選手の5NがKIMI選手のプラッドを抜き去った直後にスローダウンしてしまったのだ。こちらはバッテリー過熱によるスピード制御が原因。その後、CHOI選手はわずかに余力を残していたKIMI選手に再び抜き返された。

KIMI選手のプラッドとCHOI選手の5Nのトップ争いは、ストレートでも時速150キロの領域にまで堕した。

その隙を突いたのは、付かず離れずで3位を走っていた小峰選手の5Nだった。

8周目で低速走行の2台をあっさり抜いてトップを奪取。そのまま2台をはるか後方に置き去りにした。

実は小峰選手の5Nも、その半周後にバッテリー過熱によるスピード制御でスローダウンするのだが、もはや大勢に影響はなかった。

EV-GP 2024 Rd.5 2-7

小峰選手が余裕で最初のチェッカーを受けて初優勝。完全ノーマルのアイオニック5Nで、テスラの最速車を破る快挙を成し遂げた。

EV-GP 2024 Rd.5 2-8

いいバトル=楽しいレース

レース後の表彰式。総合1位・2位・3位のドライバーは、三者そろって朗らかだった。

EV-GP 2024 Rd.5 2-9

写真左から3位のCHOI JEONG WEON選手、1位の小峰猛彦選手、2位のKIMI選手



優勝した小峰選手は、自身でも予想外だった勝利を大いに喜んでいた。

「レース中は絶対に3位止まりだと思っていたのに優勝することができた(笑)。信じられない結末。非常に嬉しい。今シーズンの最終戦は欠場するが、この勢いを借りて来シーズンも続けて参戦したい」

3位に終わったCHOI選手は、惜しくも優勝を逃したことにくよくよせず、極めて明るい表情を見せていた。

「初のEVレースは、エンジン車の感覚で攻めたら、バッテリーの過熱でスピードダウンしてしまった(笑)。でも、一度はトップに立つなど、いいレースができたと思っている。サーキットそしてライブ中継で観ていたみなさんもかなり楽しめたのではないか。来季、われわれはもっといいレースをして必ず優勝の栄冠を手にする。引き続き応援をお願いしたい」

最後に2位のKIMI選手。全戦勝利での完全総合優勝は逃したものの、とても満足げな様子だった。発した言葉にも、EVレースへの深い愛情のようなものがあふれていた。

「望んでいた強敵とのトップ争いが楽しめた。2位だったけど念願の年間総合チャンピオンが決められた。非常に満足している。今回、僕が初のチャンピオンになれたことを、きっとTeam TAISANの千葉常泰監督も天国で喜んでくれていると思う」

EV-GP 2024 Rd.5 2-10

ALL JAPAN EV-GP SERIES 2024 第5戦レポート

①【予選】プラッドのKIMI選手が5NのCHOI選手に1.2秒差をつけポールを獲得!

②【決勝】小峰選手が完全ノーマルの5Nで初優勝。プラッドのKIMI選手の全戦優勝を阻止!

③【4位争い】戦士となったモンド選手が5Nとのバトルを制し、テスラ勢の面目を保つ!

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