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BookReview(57)『渋滞学』―高速道路の嫌な渋滞は、ドライバー自身がつくっている!?

2024年10月2日更新

BookReview_57-1

高速道路での渋滞には本当にうんざりする。

なるべく避けたいところだが、交通量が多い時間帯になると、どうしても遭遇の確率が高まってしまう。

なんとかならないのか?

NEXCO東日本は、高速道路における渋滞の主な原因として「交通集中」「事故」「工事」の三つを挙げている。その中で最も多いのが「交通集中」による渋滞。その割合は全体の7割超を占めている。

そして、交通集中が起こりやすい主な箇所として「上がり坂・サグ部」「接続道路」「インターチェンジ」「トンネル部」「料金所」の五つを挙げている。特に「上がり坂・サグ部」における交通集中による渋滞発生が多く、その割合は全体の6割近くを占めている。

すなわち、現在の渋滞の多くは、「上がり坂・サグ部」における「交通集中」によって発生しているということ。

現時点における渋滞問題の解決の糸口は、間違いなくここにある。

サグ部に入ったら
アクセルを踏むべし

今回取り上げた『渋滞学』は、渋滞という現象を科学的に捉えて解説した本である。

上記した高速道路での「上がり坂・サグ部」における「交通集中」によって発生する渋滞のメカニズムについても非常にわかりやすく説明してくれている。

その部分を要約すると次のようになる。

◎サグ(sag)とは「たわむ」という意味の英語。道路においては緩やかにたわんだ状態の箇所をサグ部と呼ぶ。具体的には100m進むと1m上昇するぐらいの坂道へと変わる箇所を指す。

◎クルマがサグ部に差しかかると、多くの運転手は上り坂になったことに気がつかずアクセルをそのままにして走り、結果、少しずつスピードを落とし、後続車との車間距離を縮めてしまう。

◎後続車は車間距離が40m以下になった段階で危機感を感じ、少しだけブレーキを踏んで減速する。

◎そのブレーキランプに気づいた次の後続車は、より大きめにブレーキを踏んで減速する。ブレーキの踏みと減速は後続になればなるほど大きくなっていく。

◎この連鎖が最終的に停止するクルマを出現させ、渋滞が発生する。

ドライバーが嫌がる渋滞の多くは、つまりはドライバー自身が気づかぬうちにつくり出しているということ。ある意味、認識のない過失によって起こっている。

こうしたむなしい渋滞をなくすには、全車に自動運転機能を持たせることが有効だろうが、それは現時点では難しい。現実的な解決策としては、道路造成の改良に加え、ドライバー自身の鋭意努力が欠かせない。

現在、高速道路上のサグ部直前には「ここから上り坂」といったような注意喚起の看板がたくさん立てられている。ドライバー自身が、その看板の意味するところを深く理解し、アクセルを少し強く踏む習慣をつければ、きっと渋滞が減っていくに違いない。渋滞は物理的な現象とはいえ、解決には人間の心理の働きも重要なのである。気をつけたい。

本書にはこのこと以外にも役立つ知見がいっぱい紹介されている。

例えば、「渋滞時にはどの車線を走るべきか問題」について。

多くのドライバーは、二車線の高速道路で渋滞にはまったとき、走行車線を行くべきか、追い越し車線を行くべきか迷うわけだが、この本は、データをきっちり分析した上で、どちらの流れがスムーズかを明らかにしてくれている。その内容はここでは明かさない。ぜひ本書を入手して答えと理由を確認してもらいたい。

この本の発行は2006年とずいぶん古いが、今も良質かつわかりやすい科学書として人気を博している。実際、版は2022年時点で22刷を数えており、その間、講談社科学出版賞、日経BP・BizTech図書賞も受賞している。

渋滞を忌み嫌う全ドライバーにおすすめしたい一冊である。

BookReview_57-2

『渋滞学』
・2006年9月20日発行
(2022年5月20日22刷)
・著者:西成活裕
・発行:新潮社
・価格:1,815円(税込)

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