画像提供:横浜ゴム(株)
ADVAN Sport EVのわかりやすいアピールポイントは静粛性であるといえそうだ。
後編では、ADVAN Sport EVの静粛性についてもう一歩踏み込んだ説明をうかがうとともに、日本国内で販売されている軽EVのタイヤ選びや、EV対応タイヤの認知拡大の必要性などについても話題を広げてインタビューした。
「ボコン」というノイズが減り
快適なまま長距離走行が可能
——今、「ノイズ低減対応」がADVAN Sport EVの最たる特長との話が出ましたが、従来のタイヤと比べてどれくらい静かになるのでしょうか?
画像提供:横浜ゴム(株)
岩坪 われわれは、テスラ モデル3を時速60㎞で走らせて、吸音スポンジSILENTFOAMが貼り付けてあるADVAN Sport EVを履いた場合と、そうではない従来のタイヤを履いた場合の音圧レベルの比較実験を行っています。ここに示したのは、そのときのグラフです。ご覧になってわかるように、周波数が200~240Hzあたりで大きな違いが出ています。
——グラフではSILENTFOAMが貼り付けてあるほうが一目盛り以上も音圧が低くなっていますね。この200~240Hzあたりというのは、通常、どんな音が発生している状況でしょうか?
岩坪 空洞共鳴音が響いている状況です。空洞共鳴音とは、道路の凹凸や継ぎ目を通過したときのタイヤの衝撃音・振動音がタイヤ内の空間と共鳴してサスペンションを通して車室内に届くノイズのこと……よく凹凸や継ぎ目で「ボコン」という音がしますよね。あの音のことです。
——あの「ボコン」という大きな音は、EVといえども不可避かと思っていました。SILENTFOAMを備えたADVAN Sport EVでは、それが抑えられるわけですね。
岩坪 はい、車種や走行状況によって音圧は異なるので具体的な数値の差は申し上げられないのですが、体感的にはかなり大きい差と感じられます。例えば高速道路での長距離走行のときなど、あの音が断続的に発生すると結構なストレスになりますが、それがかなり抑えられてEV本来の静粛な走りを楽しめます。
——まさにEVならではの静かさをサポートするタイヤですね。
岩坪 参考までに付け加えますと、このADVAN Sport EVは、EVと同様にモーターで走るFCVや、モーター走行のパートがあるハイブリッド車、PHEVでも同じような効果が得られます。そうした電動車にお乗りの方も、タイヤの履き替えの際にはぜひご検討いただきたいと思います。
軽EVのタイヤ選択は?
——ADVAN Sport EVの良さはよくわかりました。しかし、このタイヤはプレミアムタイヤなので、それなりに高価です。また、サイズ展開も限られています。たとえば小さなバッテリーを積んだ軽EVなどの場合、タイヤ選びはどうすればよいのでしょうか?
岩坪 軽EVなどで、弊社のEV対応タイヤをお考えであれば、ADVAN dB V553をお勧めします。独自の「ノイズ低減対応」が施されており、静粛性は十分です。タイヤのサイズ展開もあると思います。最初にお話ししましたが、弊社のタイヤは100年の歴史の中で進化してきました。ですから、最近のタイヤは「摩耗・偏摩耗対応」「低電費対応」などの面では、EV対応ではなくてもかなり良好です。
——三菱自動車の軽EVであるeKクロスEVの新車装着用タイヤには、御社のBluEarthシリーズのタイヤも選ばれています。なるほど、そういうことだったんですね。
岩坪 はい。BluEarthシリーズのタイヤは、もともと静粛性や快適性、乗り心地、ロングライフなどの基本性能をハイレベルでバランスさせたベーシックタイヤです。その性能を評価していただきeKクロスEVの新車装着用タイヤに選ばれています。ですから、履き替えの際に、新車のときと同じBluEarthシリーズのタイヤを選択するというのもベターな考えだと思います。
欧州並みのタイヤ観を
醸成していくことが重要
——最後の質問になります。先ほど日本での「E+」マークへの反響に関する話がありましたが、先行販売されている欧州では、既にADVAN Sport EVに履き替えられるお客さまが多く出てきていると推察します。そのあたりの実態はどうですか?
岩坪 はい、数量的にはまだまだ小さいのですが、嬉しいことに、当初予想していたよりも多い履き替え需要が出ています。
——EV対応タイヤとして指名買いがあるのでしょうか?
岩坪 そうです。欧州では、EVシフトが早く進んだこともあり、お客さまがEV対応タイヤの必要性を実感されています。そのため、タイヤの履き替えのタイミングで、ADVAN Sport EVのようにはっきりとEV対応を主張するタイヤを選択する傾向が顕著です。また、タイヤの販売側としても、お客さまへのサポートの中でEV対応タイヤを推奨してくれているのです。
——EV普及が進む欧州では、すでに「EVにはEV対応タイヤ」という認識が広がっているのですね。
岩坪 はい。日本でのEV普及はこれからですが、今後、EVに乗るお客さまが「EVにはEV対応タイヤ」という認識を持っていただけるよう、われわれも積極的なコミュニケーション活動を行っていきたいと思います。そのために、弊社のタイヤを扱ってくださっている販売店の皆さまとコミュニケーションをとり、EV対応タイヤの特徴を実感していただくことが大切だと思っています。実は、私は学生時代にボロボロのクルマに乗っていて、よく近所のロータス店さんに修理をお願いしていたのですが、直してもらう度に、ロータス店さんの技術力の高さとクルマに関する知識の豊富さに感服していました。そうしたお店からお客さまに、「EVにはEV対応タイヤ」と発信していただければ説得力は大いに高まります。
——本日はいろいろなお話をうかがい、EVを支えるEV対応タイヤの重要性がよくわかりました。ありがとうございました。
横浜ゴムのEV対応タイヤ「ADVAN Sport EV」の実力
(前編)「E+」を打刻したタイヤ。それがEVに適したタイヤである証です。
(中編)プレミアム&ハイパフォーマンスなEVに最適のタイヤをつくりあげました。
(後編)これからの時代、「EVにはEV対応タイヤ」という認識の広がりが必要です。