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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2024年8月28日更新
ALL JAPAN EV-GP SERIES 第4戦の決勝では、EV-Rクラスの競り合いも熱かった。
2台の日産ノートと2台の日産オーラが、クラス優勝を懸けて熾烈なバトルを繰り広げていた。
そのバトルを制したのは、昨シーズン最終戦から参戦しているMKproject Racing Teamの2台。
岩沢理久選手のノート(#26)がクラス優勝し、市川雅之選手のノート(#27)がクラス2位に入り、チーム初の1-2フィニッシュを成し遂げた。
両車ともにモーター出力は80kWと弱小。ライバルの2台が100kWだったことを考えれば、差は少ないにしても、ある意味パワー下剋上の勝利といえた。
お金よりも
クルマと人が大事
新参ながらも妙な強さを見せるMKproject Racing Teamは、とても不思議なチームだ。
毎戦、ドライバーをコロコロ変えてくる。今回クラス2位に入った市川選手は2回目だったが、ほとんどのドライバーは初出走者ばかり。ほかのチームでは考えられない体制でレースに臨んでいる。
チーム代表の三井亮氏が、理由を教えてくれた。
「われわれのチームのドライバーは、基本、僕の整備工場に集ってくれているモータースポーツ好きやお客さまです。毎回ドライバーが変わるのは、そういう人たちに順繰りに走ってもらうようにしているから。僕には、なるべく多くの仲間と一緒にレースを楽しみたいという思いがあるんです」
三井氏はかつて10年間、国産車メーカーのディーラーで整備士をやっていた。順調に出世していたし、待遇も申し分なかったが、利益追求型の整備体制には強い不満を覚えていた。このままでは、お客さまとの関係が保てないし、自分も好きではじめた整備という仕事が嫌いになってしまう……。
そこで2023年に一念発起して独立、個人でMKproject Factoryなる整備工場を立ち上げた。幸い、氏の誠実さと技術を高く評価するお客さまが一定数いて、独立後も愛車の整備を任せると言ってくれていた。趣味のレース活動で知り合った仲間たちも、心強い味方として応援してくれた。欲を出さなければ経営はなんとかなりそうだった。三井氏は、信頼感で結ばれた人たちだけを対象にした会員制工房のような良心的な整備工場の経営に乗り出した。
多くの仲間をレースに誘い、ともに楽しむという発想は、こうした経験を経て醸成された「お金よりもクルマと人が大事」との思いがベースにある。妙な強さも、おそらくそういうところに秘密があるのだろう。
なお、今回のピットにはレーススポンサーである川上精巧(自動車部品や小型精密機器を製造する会社)の社長・川上佑喜氏がいて、作業を手伝っていた。車両のモーターやバッテリーを冷やすための冷却ポンプの間欠噴射装置は氏自らがつくって持ち込んだものだった。
もともと川上氏は趣味のクルマ遊びを通じて仲よくなった仲間の1人。かつて、ともにクルマの改造プロジェクトに取り組んだこともある。そのときに使った名称が2人の苗字の頭文字からとったMKprojectで、現在の社名MKproject Factoryと、チーム名MKproject Racing Teamはそこからきている。
とにかく三井氏は、クルマを通じて知り合った人とのつながりが非常に広く密なのである。
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