ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2024年5月29日更新
近ごろ、世界各所でEVの普及が鈍化している。逆に、HVやPHEVの売れ行きが好調だ。
これを受け、「やはりEVは時期尚早」「使い勝手がよく環境性能もいいHVとPHEVを選ぶのが合理的」「エネルギー事情や市場のニーズに見合った電動車の投入を決めるマルチパスウェイ路線が正しい」などの声が多く聞かれるようになっている。
それらは一面の真理をついている。だが、全面の真理ではないだろう。
現在、世界は間違いなくカーボンニュートラルへと向かっている。いずれ世界中でCO2を排出するガソリンエンジン搭載車がなくなるのは自明のこととなっている。それを考えれば、HVやPHEVの隆盛が一時的な揺り戻し現象に過ぎないとすぐに理解ができる。今後、EV普及が徐々にではあっても加速し続けていくことは明らかだ。実際、2026年前後をピークにハイブリッド車が減少に転じ、再びEV普及が加速するとの予想を立てる専門家は少なくない。
好調だからといっていつまでもHVやPHEVにこだわり続けると、近い将来、痛い目に遭う可能性が大きいのである。
タイを席巻しつつある中国EV
本書の著者も同じような考えを持っている。
この本は日本の製造業全般の衰退を嘆き、復活への提言を行う1冊なのだが、その中で大部を割いて日本の自動車メーカーのEV化への取り組みの遅さとそれによる悪影響に言及し、早く取り組みを強化しないと大変なことになると訴えている。
著者が自身の目で見てきたタイの現状報告はかなりショッキングだ。
元来、タイは日本車メーカーの一大製造拠点だった。タイ国内を走るクルマの多くも日本のエンジン車ならびにHV・PHEVであった。
ところが近年、中国メーカー、特にBYDとNETAによるEVの製造・販売面の躍進が著しくなっている。例えば、2023年12月の同国でのEV販売シェアは補助金の効果もあって20%と高くなっているが、そのほとんどを中国メーカーのEVが占めていた。日本メーカーのEVはベスト10にも入っていない。今後、中国メーカーがタイでのEV製造と販売を本格化させていけば、やがてタイが中国車メインの市場に変貌することは避けられない。
日本のメーカーは、なぜこうした劣勢の到来を指をくわえて眺めていたのか。おそらく、マルチパスウェイの考えに基づき、充電インフラの整っていないタイをエンジン車ならびにHV・PHEV市場と見て、EV普及は当分ないと捉えていたためだろう。そんな市場に、中国のメーカーがまさか本気で乗り出すとは思ってもみなかったに違いない。著者にいわせれば、日本メーカーはEVに関しては鈍感過ぎる状態にあったのである。
〈この章で、どうしてタイの現況を扱ったかといえば、EV市場の動向を知るにはうってつけだということがまず一点です。もう一点は日本の製造業の足下がいかに危うくなっているかがわかりやすいということ。日本にとって中国企業が大変な脅威になっているにもかかわらず、そのことに対して日本企業が鈍感すぎることがさらに問題を大きくしている……。そういう構図がハッキリと示されているのがタイだからです。日本の自動車業界だけでなく、製造業全体、そして政府や経済界が切迫感を醸成していくことが喫緊の課題になっています〉
関連キーワード
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
今回、ALLJAPANEV-GPSERIES2024第2戦に初参戦したのは土屋圭市選手だけではない。そのほかにも新しいドライバー、新しいクルマが多数…
2024.05.14更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
「ポテトチップとコンピュータチップはどう違うんだ?」これは1980年代のアメリカ・レーガン政権にいたある経済学者の言葉。自国の半導体産業が政府の支援を訴えるの…
2023.06.08更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
『第2回SDGsERKonICE(氷上電気カート競技会)』の会場には、出場者と観戦者合わせて150名の人たちが集った。競技会が初心者から上級者までクラ…
2021.10.12更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
日本EVクラブが主催する第5回氷上電気カート競技会「ERKonICE」が、9月23日(月・祝)、新横浜スケートセンターで開催された。ERKとは、Elec…
2024.10.10更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
三足の草鞋を履く66歳によるわかりやすく実践的な安全本著者・松田秀士氏は、三足の草鞋を履いているヒトだ。一足目は僧侶の草履。1977年に得度し、以降、浄土…
2021.02.25更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
日本自動車ジャーナリスト協会の会員である著者は、大の欧州車好き。本書を通して、こんなことを主張してくる。―ブランドとは物語である。多くのクルマ好きはメーカ…
2024.05.14更新