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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2024年2月27日更新
インタビューの終盤において、酒井さんは電力とEVの関係だけでなく、それとつながって人の暮らしや経済活動が大きく変わっていくというイメージを披露してくれた。
さらには、「電力業界に黒船襲来」との予言も飛び出した。
いったい、この先にはどんな変化がやってくるのか。
酒井さんの話を最後まで聞いてみよう。
夜充電もOKとなる日
——EVへの昼充電が重要ということはよくわかりましたが、これが常態化するのは、いつごろと予想されていますか?
酒井 今後、EV利用者が増えていくでしょうが、おそらく最低でも3~5年はかかると思います。
——最低3~5年ですか。
酒井 はい。ただ、そのころになると、昼充電を基本としつつも、夜充電もOKという状況が生まれている可能性が高いですけどね。
——それは、どういうことですか?
酒井 今後、EVの普及とともに太陽光発電システムと蓄電池を設置する企業や家庭が増えていきます。それとともに再エネを中心としたマイクログリッド(小規模電力網)も多くできていくでしょう。そうなれば、多くの人が、昼に太陽光発電でつくった電力を蓄電池にためて、それを夜に充電できるようになるわけです。
——なるほど。
アプリで電力取引
——そのほかにも変化が起きるでしょうか?
酒井 現在、各企業・各家庭の電気設備には、個々の電力データをインターネットでやり取りできるスマートメーターが付いています。そして、その電力データは、同意があれば誰でも閲覧できる仕組みになっています。今後、EVの普及とともに太陽光発電システムと蓄電池を設置する企業や家庭が増えていけば、スマートメーターのデータを活用した個別の電力取引が活性化することが考えられます。
——太陽光発電の電力を電力会社に売る売電を多くの人がするようになるということですか?
酒井 いえ、それとは違う形の小口の電力取引です。具体的には、海外のGAFAなどITの雄が、各企業、各家庭の電力データを把握し、電気をためているところから電気が欲しいところにダイレクトで売るための橋渡しビジネスを展開していくでしょう。しかも、それはメルカリのように双方がアプリを通して価格マッチングさせながら行うジャストタイミングの取引なので、従来の売電よりもいい価格で取引される可能性が大きくなります。
——そういう取引はいつごろからはじまりそうですか?
酒井 私は、2年以内にスタートするだろうとみています。
——2年以内ですか!? ずいぶんと急ですね。
酒井 ええ。電力業界内では黒船襲来という感じになるでしょうね。でも、それは一般の個人や民間企業にとっては決して悪い話ではありません。自宅に太陽光発電システムを導入して、上手に電力を活用し、まめに余った電力を取引すれば、居ながらにして収益が得られるようになるわけですから。
——EVと太陽光発電パネルと蓄電池は、ある意味、新しい時代の三種の神器といえそうですね。
酒井 この取引を実現させる主要部は太陽光発電パネルと蓄電池の設置ですが、それを行うのはEV所有者が多いということを考えれば、まあ、そういえないこともないですね(笑)。いずれにせよ、このことを含めて、今、電力業界は周辺を含め大きな変革の時期を迎えつつあります。これまで消費者の皆さんは、電力に関しては自分が支払う電気代のことが最大の関心事だったと思いますが、これからはぜひ、こうした電力関連事情の動きも注視してそれに対応し、環境と家計にいい電力ライフを送っていただければなによりです。
——一人の消費者として、ぜひそう努めたいと思います。本日は、大変にためになるお話を、どうもありがとうございました。
EVキーマンに聞く/電力シェアリングCEO 酒井直樹さん
①「冒険心があったお陰で、世界最大のメガソーラーづくりに関われました」
②「EVへの充電を夜から昼に変えれば、CO2の排出量が半分にできるんです」
③「EV+太陽光パネル+蓄電池で、居ながらにして儲けられる時代がやってきます」
酒井直樹(さかい・なおき)
1963年神奈川県生まれ。1987年に東京大学経済学部を卒業し、東京電力株式会社に入社、人事部にて人事戦略策定を担当。1996年から2年間シカゴ大学経営大学院に留学しMBAを取得。2000年にアジア開発銀行(本店:マニラ)に転籍し、2017年までアジアの発展途上国向けのインフラファイナンスを手掛ける。2017年同行を退職し、2人のチームメンバーとともに株式会社電力シェアリングを起業。電力に関するアドバイザリーサービスなどを展開している。
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