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2024年2月27日更新
電力シェアリングは、2023年春、時間帯別の電力のCO2排出量を算定できる技術を確立して特許を取得した。現在、そうした実績をバックボーンに環境省の「ナッジ×デジタルによる脱炭素型ライフスタイル転換促進事業」を受託し、EV利用者に昼充電への行動変容を促す実証実験を行っている。
なぜ昼充電を推進するのか。
このインタビューの本題について、電力シェアリングCEOの酒井直樹さんに語っていただいた。
再エネ電力で脱炭素
——さて、そろそろ昼充電へと話を進めていきたいと思います。EVへの充電を夜間ではなく昼間に行うようにすると、どんないいことがあるのでしょうか?
酒井 まず、大前提からお話ししましょう。現在、日本政府は2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、さまざまな施策を進めています。そのひとつとして、2030年度までに太陽光をはじめとする再生可能エネルギーによる発電比率を36~38%にまで上げるというものがあります(21年度は20.3%)。再エネによる発電は基本的に発電時のCO2排出量がゼロ。そうした発電が増えればカーボンニュートラルに大いに益することになるわけです。
——確かにそうです。
酒井 ただ、再エネ発電は自然環境に左右されるので、どうしても供給が不安定になりがちです。太陽光発電の場合は、日が照る昼は盛んに発電ができて余剰電力も生まれますが、日が暮れる夕刻は発電量が細り、夜はほぼゼロになる。今後EVが増えていくとして、「充電は家で夜に」という既成の考えのままだと、電力消費が多くなる夕刻には電力需給が逼迫し停電が起きることさえ考えられます。
——考えも行動も変えてもらう必要がありますね。
酒井 そこで政府は再エネ電力比率が大きい昼間に電気を使おうとの呼びかけ・働きかけを、企業や一般家庭に対してはじめました。この4月から、太陽光発電の量が多い九州電力が「昼間の電気料金が最大半額になる」という家庭向け新プラン「おひさま昼トクプラン」の提供を開始するのも、この動きに呼応しています。
——御社が受託しているEV利用者に昼充電への行動変容を促す実証実験は、そうした国の施策の一環ですか?
酒井 そうです。環境省は、一般の電力消費者に対してCO2削減効果をうたいながら、再エネ電力比率が大きい昼の電気の使用を推奨しており、われわれはEVの分野でその一端を担っています。実証実験を通して、「EVへの充電には、夜の石油や石炭の化石燃料燃焼による電力比率が大きい電気ではなく、太陽光をはじめとする再エネ電力比率が大きい昼の電気を使うようにしましょう。それが即、CO2削減につながりますよ」というメッセージを発信しているんです。
——なるほど。
酒井 ちなみに、再エネの余剰電力は使わなければムダになってしまうので、本来は料金も安くなるはずなんです。昼充電への行動変容を促すためには、そうしたメリットも示せれば効果的なんですが……。今のところは九州電力管内以外ではそういう料金プランが出てきておらず、残念ながら実証実験はその訴求がないまま推移しています。ただ、EVに乗っている人は環境意識が高い方が多いので、CO2削減効果の訴求だけでも昼充電への行動変容を起こす方は多くいらっしゃいます。
原子力発電も脱炭素だけど……
——夜充電と昼充電、CO2の排出量はどれだけ違うのでしょうか?
酒井 われわれが算定した数値でいうと、EVの1㎞走行あたりのCO2排出量は、夜充電が700gで昼充電は350g。夜のほうが2倍多くなります。
——昼充電のCO2排出量は夜の半分! 以前は原子力発電による夜間の余剰電力はCO2を排出せず料金も安いという理由から、夜間電力の使用が推奨されていました。そのため、今も多くの人が電力は夜間に使った方がいいという認識でいます。でも、この事実を知れば、意識と行動をガラリと変える人や企業が増えるでしょうね。
酒井 確かに原子力発電もCO2を排出しません。また、料金も安くできるでしょう。ただ、日本において原子力発電が稼働して十分に電力を供給できているのは、現時点では関西電力と九州電力の管内ぐらい。例えば東京電力管内では、夜の電力は化石燃料を燃やしてつくった電力が主となっています。現実的に原子力発電からの供給が難しいのであれば、再エネ発電を活性化させて、その電力を上手く使う工夫が求められます。従来のやり方では難しいかもしれませんが、われわれは新しいやり方を導入していくことでそれは可能だと思っています。
EVキーマンに聞く/電力シェアリングCEO 酒井直樹さん
①「冒険心があったお陰で、世界最大のメガソーラーづくりに関われました」
②「EVへの充電を夜から昼に変えれば、CO2の排出量が半分にできるんです」
③「EV+太陽光パネル+蓄電池で、居ながらにして儲けられる時代がやってきます」
酒井直樹(さかい・なおき)
1963年神奈川県生まれ。1987年に東京大学経済学部を卒業し、東京電力株式会社に入社、人事部にて人事戦略策定を担当。1996年から2年間シカゴ大学経営大学院に留学しMBAを取得。2000年にアジア開発銀行(本店:マニラ)に転籍し、2017年までアジアの発展途上国向けのインフラファイナンスを手掛ける。2017年同行を退職し、2人のチームメンバーとともに株式会社電力シェアリングを起業。電力に関するアドバイザリーサービスなどを展開している。
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