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第29回 日本EVフェスティバル レポート②―再エネ発電が増えたら、V2Xで昼間の余剰電力を有効活用しよう!

2023年12月14日更新

Japan EV Festival 2023 REPORT 2-1

EVには、どんな電気を、どう充電すべきなのか――。

今回の「EVシンポジウム」では、全体を通してこうした話題が非常に多く出た。

社会的な視点で
EVを見つめ直す

冒頭、挨拶に立った日本EVクラブの舘内端代表は、地球温暖化を引き起こすCO2の大量排出は、現在ウクライナとガザ地区で起きている争いと同じように人類が犯してしまった愚行だとしながら、改めて社会的な視点でEVを見つめ直す必要性を訴えた。

Japan EV Festival 2023 REPORT 2-2

「世界で排出されるCO2の約20%は交通機関からのもの。そのほとんどはガソリンを燃やして動くエンジン車から出ている。こうした現状を早急に改善しなくてはならない」

「ただ、クルマをEVに切り替えればそれでいいという話でもない。EVを移動の機関という狭い枠組みで見るのではなく、私たちの生活や街、あるいは行政や産業とつながっているモビリティとしてとらえ直す必要がある。今回のシンポジウムでは、そうした観点から多くの発言をしていただき、EVが生き残るための答えを導き出していきたい」

V2Xによる
新しい電力需給

シンポジウムの基調講演を行ったのは、本田技研工業㈱エネルギーサービス事業開発部チーフエンジニアの椛澤明氏である。

Japan EV Festival 2023 REPORT 2-3

椛澤氏は「V2Xを活用したエネルギーマネージメント」というタイトルで、再生可能エネルギーによる電力をV2X(Vehicle to everything)で有効活用することの必要性をわかりやすく説いていた。以下はそのあらましである。

◎ ホンダはカーボンニュートラル達成に向け、2040年にグローバルの自動車販売比率をEVとFCVで100%にすることを目指している。

◎ これからの視点として、EVが充電する電気がどのような質のものか考えることが重要だ。日本は現在、電気をつくる段階でのCO2排出が多い。今後、国は再エネ発電を増やしていく方針である。

◎ ただし、再エネ発電の導入はそう簡単なことではない。

◎ そもそも電力供給は「同時同量」すなわち発電量と消費量の需給バランスを随時そろえて行う必要がある。それが崩れると電力網の周波数が乱れ、場合によっては大規模停電を起こしてしまう。

Japan EV Festival 2023 REPORT 2-図1

※画像は椛澤氏がスクリーンに投影した資料の一部



◎ 天候や時間で発電量が変動する再エネの導入には、調整力が求められる。例えば太陽光による発電は、晴れの日の昼間は消費量を大きく上回る発電量となり、余剰が生じてしまう。すると出力抑制(電気をつくっても電力網に流さないようにすること)が行われ、無駄が生じる。

◎ しかし、余剰となり、無駄になっている電気を蓄電池に貯めて夜間や朝に振り分けて有効活用すると、火力発電への依存を減らすことができる。つまり、再エネ発電の導入には、蓄電池の活用が大事である。

Japan EV Festival 2023 REPORT 2-図2

※画像は椛澤氏がスクリーンに投影した資料の一部



◎ さらに、今後の社会では電力の上流・下流の間に位置して、電力の需給バランスを調整するリソース・アグリゲーター(調整役)の役割が重要になってくる。

◎ ホンダはEVのバッテリーをクルマ単独のものと考えず、V2H(Vehicle to Home)から、さらには街区や地域という単位で再エネの電気を貯めておく蓄電池として活用するビジネスモデルを考えている。つまり、V2Xを活用したエネルギーマネージメントの実現である。

◎ V2Xによる仕組みでは、参加してくれるEVオーナーにも、バッテリー使用料的なインセンティブを還元できるように考えており、参加メリットはある。

◎ 現在、ホンダはEVのバッテリーを活用したV2Xの実証実験および事業を国内外で積極的に進めている。

なお、ホンダの分析によれば、日本の自動車の95%近くは使われずに停止(家や会社で駐車)した状態にあるという(24時間分布/365日平均)。そして今後、電動化が進んでもすぐにこの状況が大きく変わることはないと見ている。

ホンダが進めるV2Xを活用したエネルギーマネージメント事業は、それらの停止している自動車の有効活用につながるわけで、その点においても画期的といえるのであった。

Japan EV Festival 2023 REPORT 2-4

第29回 日本EVフェスティバル レポート

①VWが本気でつくったEV「ID.4」。日本の狭い道でもスイスイ走れた!

②再エネ発電が増えたら、V2Xで昼間の余剰電力を有効活用しよう!

③「EVへの充電は昼に行う」というパラダイムシフトが起きる!

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