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CQ EVミニカート・レース レポート(前編)―EVの基礎技術を学び究める学生&研究者たちが大挙して参戦!

2022年10月27日更新

CQ EVカートレース_1-1

晴天の10月2日(日曜日)、筑波サーキットで年に一度の「CQ EVミニカート・レース」が開催された。

レースは今回で9回目。山形、福島、茨城、群馬、埼玉、東京、神奈川、兵庫、福岡から16チームが参戦し、全24台のカートをエントリーしていた。

CQ EVカートレース_1-2

16チーム中、初参加が11チーム。常連チームもいるが、毎回新顔がエントリーしてくるということで、その意味でレースは活性化している。

EVのキットを使って自作したミニカートでサーキットを走るという趣旨に刺激された学生や研究者、あるいはアマチュア愛好家などがチームをつくりチャレンジしているのだ。

電動化時代を予感し
EVミニカートを販売

このレースの主催は日本電気自動車レース協会(JEVRA)で、運営をCQ EVミニカート・レース研究会とCQ出版が担っている。そもそもの企画は、CQ出版から出たものだという。

CQ出版は『CQ ham radio』や『トランジスタ技術』など、アマチュア無線やエレクトロニクス技術、電気工学に携わる人向けの雑誌や書籍を長年にわたり発行し続けている出版社だ。

この老舗の技術系出版社が、なぜ、EVミニカートのレースを運営しているのか。

現場に来ていた同社企画部の佐藤英司氏に経緯を聞いた。以下は、その概略である(技術用語等はCQ出版の用字等に従う)。

10年前に「これからはEVの時代になる」と考え、EVの主なパーツであるモータとコントローラ(インバータ)を、製造会社の協力を得て開発・販売しはじめた。多くの人に本や雑誌で得た知識にプラスして、パーツを手に取って具体的にEVの基礎技術を理解してもらいたいという思いがあった。

CQ EVカートレース_1-3

画像提供:CQ出版



これが想定以上の反響を得て、マニアックな技術者などのほか、自動車メーカーや電装機器メーカーなどの企業、電気工学系の高校や大学など、さまざまなところから引き合いがあった。

購入した少なからぬ人たちから「この部品でどれくらいの走りができるのかが知りたい」という素朴な要望が出はじめる。そこで、EVとして走らせることができる「CQ EVミニカート・キット」を開発・販売するに至った。モータ&インバータ・キットとEVミニカート・キットを併せると、仕様にもよるが、価格はトータルで約40万円。決して安くはないが、一定の引き合いがある。

CQ EVカートレース_1-4

画像提供:CQ出版



レースへと発展したのは、購入者からの要望もあったが、私たちCQ出版が「自作したEVミニカートをレースで競争させることで、EVの基礎技術をより深く理解してもらうとともに、応用技術の習得につなげてもらいたい」と考えたからだ。幸いJEVRAの協力を得ることができ、現在は年に1回、筑波サーキットでCQ EVミニカートのワンメイクレースを開催している(※過去には他のサーキットでの開催も有)。

つまり、このレースは、EV技術を学びたい人、究めんとする人たちにとって楽しい学びの場ということ。非常にレアで貴重な場でもあるため、興味を持つ学生や技術者たちが日本全国から集まってくるのである。

コイルの巻き方とインバータで
速さに大きな違いが出る

CQ EVミニカート・レースのレギュレーションは非常にシンプルだ。

サーキットを30分間走行し、何周できるかを競うという内容。現在のところ、2018年に出た「10周」が最高記録である(当時のレギュレーションはリチウムイオン電池搭載および空力パーツ使用可)。

参加車両は、「CQ EVミニカート + CQ ブラシレス・モータ」を基本条件としている。バッテリーはほぼ同性能の鉛電池(12V8Ah×2個)またはリチウムイオン電池とされ、車体の改造は不可。ただし、速さやトルクを求めるために、モーターのコイルの巻き方・巻き数は自由であるし、インバータの改造あるいは自作は可となっている。

佐藤氏は、元のパーツは一緒でも、自作の技量や工夫がカートの性能に差を生むという。

「カートの速度は標準的なもので40㎞/hほど出ますが、コイルの巻き方、インバータの設定内容、ドライバーの運転の仕方などによって70㎞/h前後に持っていくことができます。逆に、それらを誤れば思ったような速度を出すことはできません。レースでは速度の差、すなわち技術の差が如実に表れます」(佐藤氏)

総合優勝を果たしたのは
制御が本業の企業チーム

レースは、佐藤氏が言ったとおりの展開となった。

CQ EVカートレース_1-6

高速レースではないため、「白熱のバトル」という雰囲気とは異なる。しかし、走り出した28台のうち、70㎞/h前後と思われるスピードで風を切って走るマシンがあるかと思えば、ただただマイペースでスローな進行を続けるマシンもあり、その落差になんとも言えない面白みを感じた。

モーターのコイルの巻き方やインバータの調整具合の差だけで、これだけ速さが違ってくるとは……。「EVは簡単なつくりだというが、やっぱり結構奥深い乗り物なんだな」と、率直に思った。

結局、この日のレースでは、9周したゼッケン22番の日立産業制御ソリューションズのチームが総合優勝を遂げている。また、学生部門では8周したゼッケン10番の明治大学電機システム研究室のチームが優勝した(総合でも2位を獲得)。

CQ EVカートレース_1-7

ちなみに、総合部門優勝の日立産業制御ソリューションズは、その名のとおり制御が本業。車両制御も手がけている。強くないわけがない。

ニッチなレギュレーションながら、そのなかでチャレンジングな発想と高い技術レベルで競うこのレース。ある意味で“ものづくりニッポン”らしいEVレースなのであった。

CQ EVミニカート・レース レポート

(前編)EVの基礎技術を学び究める学生&研究者たちが大挙して参戦!

(後編)福岡工大の学生は時代の風に乗ってとことんレースを楽しんだ!

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