Photo:Youichi Morohoshi
1.5リッター級のトルク
——諸星さんは、7月22日に白馬村に着き、翌日からのジャパンEVラリーで、eKクロスEVをはじめとする最新EV・PHEVの試乗会でインストラクターを務められました。
諸星 助手席に乗って、試乗する皆さんにいろいろとアドバイスをしました。
Photo:Youichi Morohoshi
——試乗した方々は、eKクロスEVをどう評価されていましたか?
諸星 ほとんどがEVオーナーですから、EVの走りには慣れているんですけど、「軽をEVにすると、こんなにも走りが気持ちいいんだ」って驚いていましたね。軽量なわりに、モーターのトルクがeKクロスのターボ車の約2倍に相当する195Nmもある。これは1.5リッター車ぐらいのトルク感。それによる発進、そして加速のよさがかなりいい印象につながっていたみたいです。
——おおむね好評だった、と。
諸星 そうです。ただ、結構重量級の男性3人が乗り込み、都合4名で走ったときは、ちゃんと加速はしたものの、段差でガツンという突き上げを感じました。そのときは「やっぱり軽の足回りだね」と苦笑が漏れていましたが、そもそも軽自動車に重量級の男性4人が乗り込むことなんて滅多にありません。多く乗ったとしても、お父さん、お母さん、子ども2人といった感じでしょう。そうであれば、特に問題ない足回りだと思いましたね。
気持ちのいい発進と加速
——さて、今度は白馬村から東京までの復路についてお聞きします。一般道で帰られたとのこと。どんなルートになったのでしょうか?
諸星 イベント最終日の24日、白馬村でのEV60台によるパレードに参加したあと、午後2時45分に帰路につきました。まず、白馬長野有料道路を通ってから県道384号線、国道19号線・18号線を行き、長野日産上田店の急速充電器で1回目の充電を行いました。その後は碓氷バイパスを経て高崎方面に向かい、国道17号線を走って群馬県藤岡市に入りました。そのまま東京に帰ることもできましたが、時刻が午後9時になり、僕自身、連日の運転で疲れも出ていたので、ルートイン藤岡というホテルで1泊しました。ここでは普通充電器で2回目の充電を翌朝まで行い、満充電にしています。翌日は、9時半過ぎにルートイン藤岡を出発し、国道17号線を走って午後1時30分頃に東京都葛飾区にある三菱自動車の広報車両管理会社に到着しました。総距離は293㎞となりました。
——これも事前に想定していたルートだったのでしょうか?
諸星 宿泊地点を除いてはほぼ考えていたルートです。
——一般道でのeKクロスEVの走りはどうでしたか?
諸星 イベントでの試乗で皆さんが感じていたこととほぼ同じで、街中での発進と加速のよさに改めて感心しました。たびたびある信号でのストップ&ゴーでも実にスムーズ。ほとんどストレスを感じず運転できました。
——走行モードは、高速道路のときと同じで「ECO」モードですか?
諸星 平坦な道は、電費を稼ぐためにできるだけ「ECO」モードで走りました。ただ、碓氷バイパスなどの、登り勾配のところでは「SPORT」モードにしました。電費は悪くなるけど、力強くぐいぐいと快適に坂道を上ってくれましたね。
画像提供:三菱自動車
長い下り道はBレンジで
——往路の高速道路では、マイパイロットのACCとLKAの機能が便利だったという話がありました。一般道で気に入った機能は、何かありましたか?
諸星 これは一般道に限らず高速道路でもいえることですけど、碓氷峠からの長い下り勾配の道で、セレクターレバーを通常のDレンジからBレンジに切り替えると、非常に走りやすかったです。Bレンジは回生が強いので頻繁にブレーキを踏まなくていいし、電力は蓄えられるしでいいことずくめ。なにより、あまりブレーキランプが点灯しないところが気に入りました。
画像提供:三菱自動車
——「Bレンジだとあまりブレーキランプが点灯しない」というのは?
諸星 eKクロスEVは、ブレーキランプが点灯したときに、運転席の液晶メーターにブレーキランプが点灯していることを知らせる表示機能があります。回生が弱めのDレンジのときは、ちょっとでも回生が効いて減速すると、そのショックで、液晶メーターにブレーキランプ点灯の知らせがすぐに表示されるんですよ。ところが、回生が強めのBレンジだと、もともと減速気味に走っているせいで減速時のショックが少なく、あまりブレーキランプの点灯がないんです。
——そうなんですね。でも、その効能がよくわからないのですがい……。
諸星 あまりに頻繁にブレーキランプを点灯させると、後続車に大きなストレスを与えてしまうじゃないですか。ときには、それによって、あおり運転を誘発してしまうかもしれない……。ブレーキランプの点灯が少なくなるBレンジだと、そういう余計な心配事を防げるんです。
——なるほど。
諸星 僕は、ブレーキを踏むべきシーンでは、しっかりと踏むのが大事だと考えています。だけど、なんでもないところで頻繁にブレーキを踏むのは推奨できない。運転マナー的にもよろしくありません。
——そうですね。
諸星 なので「eKクロスEVで長い下り道を運転するときは、強い回生で電力が溜まり、ブレーキランプが頻繁に点灯しないBレンジに」。これを覚えておいて損はないと思います。
●諸星 陽一(もろほしよういち)
モーターフォトジャーナリスト。1963年東京生まれ。自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでの写真撮影を行うフォトジャーナリストとしても活動。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。BOSCH認定CDRアナリスト有資格者。
eKクロスEVで長距離走行…諸星陽一(モーターフォトジャーナリスト)
①「東京─白馬村 往復600㎞のドライブが楽勝でこなせた」
②「約270kmの往路(高速道路205㎞)を2回の30分充電で難なくクリア」
③「一般道での長い帰路も195Nmのトルクが疲れを軽減」
④「軽EVは自動車市場を変革するゲームチェンジャー」