Photo:Youichi Morohoshi
満充電100%でスタート
——では、東京から白馬村までの往路におけるeKクロスEVの走りがどういうものだったのか、具体的に教えてください。
諸星 スタートしたのは7月22日の午前7時過ぎです。eKクロスEV(グレードはP)は、前日に三菱自動車の広報車両管理会社で借り受け、自宅に近い三菱自動車ディーラーの急速充電器で満充電にしておきました。
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——EVでのロングドライブでは、スタート前の満充電は必須ですからね。
諸星 ちなみに、そのときはバッテリー残量が77%だったところ、30分間充電したら100%まで充電できて、結構驚かされました。急速充電で100%の満充電は、初の体験でしたから。
——なぜ、100%になったのでしょうか。
諸星 eKクロスEVのバッテリー容量が20kWhと小さいこともありますが、エアコンなどで使う冷媒によるバッテリー冷却が相当うまくいっているためだと思います。僕は、この事実をもって、「ロングドライブは問題なくいけそう」との予感を強くしました。
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主に高速道路を走った往路
——往路は高速道路を中心にして行かれたとのこと。具体的にどういうルートを走ったのですか?
諸星 ざっくり言うと……自宅をスタートして一般道を経て関越自動車道に入り、そこから上信越自動車道を通って長野ICまで行きました。長野市内を経由して国道406号線で白馬村まで走っています。総距離は271㎞でした。
——往路は高速道路中心と決めていたのですか?
諸星 そうですね。途中、どこの充電スポットで充電するかも含めて、事前に想定していました。23日にジャパンEVラリーが開催されて、最新EV・PHEV試乗会も行われます。eKクロスEVはそこで使われる試乗車なので、どうしても22日中に白馬村に届けなくてはならないわけです。だから、往路は計算できる高速道路中心のルートにしたというわけです。
電費にいいマイパイロット
——暑い夏ですからエアコンはつけっぱなしだったと思いますが、走行モードなどはどんな設定にして走ったのですか?
諸星 エアコン以外は、なるべく電費をよくする方向の設定で走りました。全般的に走行モードはエネルギー効率を最適にする「ECO」をチョイス。高速道路ではマイパイロットのアダプティブクルーズコントロールシステム(ACC)と車線維持支援機能(LKA)を使って、最も左側の車線を時速80キロで走行するようにしました。
——マイパイロットのACCとLKAは電費にいいですか?
諸星 いいですね。一部のクルマを除いて、これらをオンにして走ると人間がやるような無駄なアクセルやブレーキングをしなくて済むので、非常にエネルギー効率のいい走りができます。ただ、eKクロスEVの場合、マイパイロットはオプション設定。これからeKクロスEVを購入する人で、ロングドライブを多くやる可能性がある人は、ぜひマイパイロットを付けることをおすすめしたいですね。
ひとつ手前で充電
——往路での充電についてお聞きします。途中、甘楽PAと東部湯の丸SAで充電されていますね。
諸星 どちらも事前に想定していた充電スポットです。それぞれの場所で30分間の継ぎ足し充電をしました。
——この2地点を選んだ理由は?
諸星 充電スポットを決める際、僕は二つのことに留意しました。ひとつは、充電するクルマが少なくて順番待ちする可能性が低いこと。もうひとつは、バッテリー残量がギリギリの状態で入らないこと。つまり、軽EVによるロングドライブをできるだけ快適にするために、時間の浪費や心理的負担を極力避けることを心がけました。今回、甘楽PAと東部湯の丸SAは、この条件にぴったり合う充電スポットだったわけです。
——ひとつ目の順番待ちがないことに関しては、この2地点はあまり人気がないPAでありSAだから選んだんですね。
諸星 人気がないというと語弊がありますが、この2地点に挟まれた横川SAは峠の釜めしで有名なおぎのやさんの店舗がありますし、佐久平SA/PAはハイウエイオアシスなので、そこに比べると利用者は少ないと予測するのが一般的でしょう。
——二つ目のギリギリの状態で入らないというのは、バッテリー容量にある程度の余裕がある状態で継ぎ足し充電したということですね。
諸星 そうです。計算上ではもうひとつ先のPAやSAまで行ける状態だったとしても、そのひとつ手前のPAやSAで充電することにし、この2地点を選びました。実際、スタート地点から約100㎞の甘楽PAに入ったときはバッテリー残量が27%あり、その先の横川SAまで行ける状態だったんですけど、事前に考えていた甘楽PAに入りました。
——迷わず入った?
諸星 正直に言うと、行けるところまで行ってみようかなという好奇心というか欲のようなものがちょっとだけ出ました。でも、結局はやめました。なぜなら、もし足を延ばして横川SAで充電したとしても、30分間で充電できる量はさほど変わらないことに思いが至ったからです。だったら充電量に余裕があるときに継ぎ足し充電しておいたほうが合理的だし気持ちも楽になる……。高速道路では、ときに予期せぬ事故渋滞が起こったりするわけで、それを考えれば「ひとつ手前で充電」はベターなやり方だと思いますね。
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——ちなみに、甘楽PAの急速充電器での30分間でどれだけ充電できたんですか?
諸星 充電器の出力表示は10kWh。それで30分間充電し、残量27%が83%まで回復しました。つまり56%分の電力が入ったということ。参考までにお伝えすると、次の充電スポット東部湯の丸SAでもほぼ同じ数値となりました。
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2回充電は上出来
——甘楽PAと東部湯の丸SAでの充電を経てから長野ICを降り、その後は一般道で白馬村に向かいました。振り返って、高速道路でのeKクロスEVの走りは全般的にどうでしたか?
諸星 すごく楽に高速の長距離運転ができました。走行中はエンジン音が響かず静かだし、低重心による走行安定性もすごくいいので運転疲れがあまりなかったです。もちろん、ホイールベースが短い軽自動車なのでそれなりに揺れるんですけど、例えば660ccのターボ車と比べてぜんぜん揺れないと思いましたね。
——30分間の充電が2回必要だったことについては不満を持ちませんでしたか?
諸星 いえ、逆に約300㎞を2回の充電で済んだのは「上出来」だと思いました。それに、それぞれ30分間はとてもいい休息になりましたしね。
——なるほど……。
諸星 結局、eKクロスEVのバッテリーの冷却性能がいいから、想定どおりに充電ができ、問題なくロングドライブができたんだと思います。冷却性能のよさって実感しにくいものですけど、こういうロングドライブにおいては相当効いてきますよね。
——ということで、往路は「予定通り」だったわけですね。
諸星 実は、長野ICを降りてから、僕は予定になかった長野市内観光をちょっとだけしました。そのせいで、白馬村に付く前の国道406号線でバッテリー残量が20%を切って、警告灯が点灯。最後だけは結構ハラハラしました(笑)。
eKクロスEVで長距離走行…諸星陽一(モーターフォトジャーナリスト)
①「東京─白馬村 往復600㎞のドライブが楽勝でこなせた」
②「約270kmの往路(高速道路205㎞)を2回の30分充電で難なくクリア」
③「一般道での長い帰路も195Nmのトルクが疲れを軽減」
④「軽EVは自動車市場を変革するゲームチェンジャー」