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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2021年12月9日更新
EV&PHEV試乗会で用意された電動車の中では、真っ赤なアウディe-tron GT quatroがひときわ目を引き、しきりに試乗を誘ってきた。
だが、我々はその誘惑を断ち切り、商用の小型電気トラックELEMO(エレモ)に試乗することを決めた。
なぜか?
今、個人のEV購入が伸びない中、脱炭素化への意識を高めつつある企業が業務用・商用のEV導入を積極的に検討しており、今後の日本のクルマの電動化は「働くEV」が先導しそうな勢いになっている。であるならば、その実力のほどを知っておくことは、これからの電動化社会をウォッチするうえできっと役に立つはず。そう考えたからである。
仕事で運転する人が疲れない1台
ドアを開けて乗り込んだELEMOは、まさに商用の小型トラックだった。
実に簡素なつくり。新しいEVらしさを感じさせるものといえば、ダッシュボード上にちょこんと置いてある液晶パネルぐらいだった。スタートのスイッチオンはキーでイグニッションを回して行うという昔からのシステムを採用していた。
だが、スタートして驚いた。走りが非常に快適だったのである。
実は、筆者はかつてアルバイトで約1年間、小型トラックで物を運ぶ仕事をした経験がある。かなり古いトラックだったせいもあるが、とにかくエンジン音がうるさかった。そして、振動もマニュアルのシフトレバーが絶えずブルブル震えるほどに激しかった。仕事を終えるとグッタリ疲れるのが常だった。
その経験を踏まえて言えば、このELEMOはまったく別の乗り物と言って過言ではなかった。「ウィーン」というモーター音は響くものの、同乗者と普通に会話できるほど静かで、振動もほぼ皆無。そんな状態のままスイーッと前に滑るように進む走りは、体に染みついていた「商用トラック」の概念を根底から覆えす気持ちよさだったのである。
同様のことは、これまで試乗した数々のEVの乗用車に対しても感じてきた。だが、乗用車の場合はエンジン搭載車も防音・低振動をかなり重視しているため、今回ほどEVとの差を大きく感じることはなかった。基本的に、実用性とコストパフォーマンスを重視してシンプルにつくられた商用トラックだからこそ、ダイレクトにEVの長所が感じられたのであろう。
「これを仕事で運転する人は疲れなくていいな」
正直、乗る前は「商用のシンプルなEV」としか見ていなかったこともあり、その快適な走行性の衝撃は大きかった。
もちろん、ELEMOのすべてがよかったわけではない。ブレーキ(ディスクブレーキ)が重く、止まるのにグッと踏み込まなければならなかった。それに、回生ブレーキにすれば、もっと安全かつ快適に運転できるはず、とも思えた。後で聞いたところでは、実証実験を実施する中で制動テストを最優先事項としてブレーキ周りの調整を行っているとのこと。その成果に期待したい。
少々の難点はあったものの、ELEMOは総合的に大いに好感が持てる小型電気トラックだった。こういうトラックを導入した企業は、脱炭素の効果が得られるだけでなく、スムーズな物流の実現によって事業そのものを上向かせることもできるのではないか。あくまで運転者目線だが、そんな気がしてならなかった。
中国で製造したアメリカ車。
2021年に日本で販売スタート
試乗を終えたあと、電動車展示スペースに戻った。
そこには、ELEMOのボックスタイプの車両と、その日発売となったばかりのELEMO-Kという軽規格の1台が並べられていた。そして、その周辺には製造・発売元であるHW ELECTRO株式会社(以下、「HW ELECTRO」)の人たちが何人か立っていた。
我々は、その中の1人、HW ELECTRO常務執行役員である大谷敏之氏から、ELEMOならびにELEMO-Kについての話を聞くことができた。
——まず、御社の紹介からお願いします。
大谷 HW ELECTROは、2020年に、現在はアメリカに本社があるセントロ(現セントロ・オートモーティブ コーポレーション)との間で日本国内ならびに東南アジアにおける独占販売契約を締結し、日本国内における改良、製造と販売を行っています。セントロは車両は中国の杭州で製造していて、アメリカ、ヨーロッパをはじめとした各国に輸出販売しています。日本での販売は2021年から。4月にELEMOが輸入小型の電気商用車として国内初のナンバーを取得し、7月から実販売をスタートさせました。
航続距離は約200㎞。
防災に役立つ給電機能付き
——我々が試乗したELEMOの基本的な仕様・性能を教えてください。
大谷 試乗されたのは「ELEMO-200」という最上機種で、13kWhのバッテリーを2基積んでいます。普通充電で約10時間で満充電になり、航続距離は数値上で約200㎞に及びます。商用なので全体のつくりは実用本位でシンプルなんですが、充電口の横にAC100Vのコンセントを付け、業務やイベント時のみならず、災害時にも電力供給ができるEVならではの機能をしっかり持たせています。夏前に千葉県の木更津市と「防災協定(災害時における電動車両等の支援に関する協定)」が結べたのは、その機能があったお陰なんです。
アルミ合金の荷台を乗せて
税込み249.7万円の価格設定
——今回新発売となったELEMO-Kは、軽の規格に合うよう全長を短くしたわけですが、仕様・性能も違っているのですか?
大谷 ELEMO-Kは13kWhのバッテリー1基の搭載なので、航続距離は120㎞と少し短くなっています。また、給電のためのAC100Vのコンセントは付いておらず、オプション設定になっています。基本的に街中での運送業務を想定して開発した車両であり、必要要件は満たしつつ、できるだけリーズナブルに提供することを優先させています。実際、アルミ合金製のピックアップ荷台を乗せた形で税込み249.7万円というのは、かなりお得な設定です。国と自治体の補助金をうまく利用すれば、納得していただける金額でご購入いただけるはずです。
スマホで運用管理できる
IoT技術も車両に導入
——今後の販売計画をお聞かせください。
大谷 2025年には軽・小型の電気トラックの販売数が相当伸びると言われています。我々としてはELEMOシリーズで1万7,000台を達成したいと、強気の目論見をしています(笑)。そのために、脱炭素を課題として取り組む数多くの企業と、1,788ある地方自治体にアプローチしていくことを考えています。いずれ大手メーカーからも商用・軽規格の電気トラックが出てくるはずなので、それまでに地盤を固めておきたい。我々のクルマは、性能・価格面のほかに荷室のカスタマイゼーションにも強みがあるので、十分に勝機はあると踏んでいます。
——クルマの改良についてはどのように進められていくのでしょうか?
大谷 世の中の流れやお客さまのニーズを汲みながら随時マイナーチェンジを行っていく予定です。クルマに関連したサービスにおいても、運行管理や荷物管理などをスマホで簡単に行えるIoT技術の導入を進めているところです。これが稼働するようになれば、より時代に即した1台になります。どうぞご期待ください。
話を聞いているうちに、たくさんのELEMOならびにELEMO-Kが頻繁に街中を行き来する光景がはっきり想像できた。脱炭素化を喫緊の課題とする企業は、その存在に刮目すべし……そして、電動化を急いでいるであろう日本の自動車メーカーは、その存在に危機感を覚えるべし、だ。
第27回 日本EVフェスティバル レポート
① 新型アウトランダーPHEVは、総航続距離1000㎞以上を誇るベストな電動車!
② 小型電気トラックELEMOが「働くEV」を先導しそうな予感!
③ 「百万台EVプロジェクト」で、楽しく地球温暖化対策に乗り出そう!
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