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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2021年5月13日更新
全開走行20~25㎞で
加速抑制が働いてしまう!?
ポルシェ タイカンが優勝する可能性について、レース関係者やライバルとなる参戦者の意見はわかった。
では、当のタイカンを駆る本人は、決勝の行方をどう見ているのだろうか?
決勝前のパドックで、国江仙嗣選手(トップ写真、登録ドライバー名はKUNI)に話を聞いた。国江選手はかつてガソリンエンジンを積んだポルシェのレースで名を馳せたGULF RACINGのオーナー。今回、真新しいポルシェ タイカンに水色とオレンジ色のチームカラーを施し、自らがドライバーとなってこのEVレースに挑んでいた。
——初参戦の予選でいきなりレコードタイムを出してのポールポジション(PP)獲得。すごいですね。
国江 ありがとうございます。クルマが素晴らしいから出たタイムです。最初のEVとはいえ、やはりポルシェはポテンシャルの高い、いいスポーツカーをつくるメーカーなんだと改めて実感しました。
——ほぼノーマルだと聞いています。
国江 はい、車高を少し低くしたことと、Sタイヤを履いている以外はまったくのノーマルですね。
——決勝で狙うは、やはり優勝でしょうか?
国江 うーん。優勝したいのはやまやまですが、とりあえずは完走を目指すことにします。リタイヤして、世界中のポルシェファンをがっかりさせることだけは避けたいと思っているんです。
——完走が目標とはずいぶん控えめですね。
国江 昨年の9月、タイカンのプロトタイプがドイツ・ニュルブルクリンクの北コースで行ったタイムアタックで1周7分42秒というすごいタイムを叩き出しました。その実力をもってすれば、今回のレースも楽勝だろうという声はたくさん耳にしています。
——はい。
国江 だけど、その認識はちょっと違います。ニュルブルクリンクのコースは1周20㎞ぐらいなので、今回のレース12周55㎞を全開で走り切れる裏づけにはならないんですよ。実際、僕がこの富士でテストしたところ、全開走行20~25㎞あたり、周回でいえば5~6周あたりでバッテリーが熱くなって加速抑制が働きはじめることがわかっている。つまり、しっかりバッテリーの熱マネジメントをして走らなければ、優勝どころか完走も危うくなるんです。だから、とりあえずの目標は完走。それを完遂する中で上位が狙えればいいのかな、と思っています。
——そうだったんですか……。ちなみに、最大のライバルと目されている地頭所選手のテスラ モデル3にはバッテリーの熱の状態をドライバーに知らせる画面表示がありますし、オリジナルのバッテリー冷却装置も搭載されています。このタイカンにはそういう装置はまったくありませんよね?
国江 ないですね。
——となると、ドライバーであるご自身の感覚で熱マネジメントをするしかない。
国江 そうです。初めてのEVレースでわからないことだらけなのに、そういう負荷までかかることになるんです。でも、それが現実だから仕方がない。とにかく序盤からバッテリーの熱を抑えるべく冷静にペースコントロールして走るつもりでいます。一つ具体的な策としては、なるべく駆動系に熱を持たせないよう、回生ブレーキをオフにして走ることを考えていますけどね。
——ある意味、忍耐のレースになりそうですね。
国江 確かにいろいろ耐える必要はあるでしょうね。だけど、この超高性能のタイカンでサーキットを走るのは、想像以上に楽しい行為なんですよ。人工的につくられたエキゾーストノートを車内外に響かせる装置もあって、レースの高揚感もしっかり味わえるし(笑)。決勝では、忍耐するところは忍耐しつつも、楽しむところはとことん楽しむつもりでいます。
初めてのEVレースに臨む国江選手はPP獲得にも浮かれず、意外に沈着冷静なのであった。
エンジン車レース経験者には
スタート時のアクセル抑制は無理!?
ところで、今回のレースには同じGULF RACINGから、KIMIこと八代公博選手もテスラ モデル3で参戦していた(予選4位)。
八代選手は昨シーズンの最終戦に初参戦した際、いきなり予選2位のタイムを出しながら、決勝では序盤で飛ばし過ぎて失速し、惜しくも3位に終わった経験を持っている。決勝前、それを踏まえてこんな発言をしてくれた。
「EVレースでは序盤からアクセル全開を続けちゃいけない。頭ではわかるんですよ。だけど、長くエンジン車でレースをやってきた人間には、この抑制が結構難しい。スタートした途端に熱くなって、ついアクセルを踏み込んじゃうんです(苦笑)。決勝でタイカンが勝てるかどうかについては、ここが大きなポイントになる気がしますね」
果たして国江選手によるタイカンのスタートやいかに。優勝の行方やいかに!?(文:みらいのくるま取材班)
2021全日本EVグランプリシリーズ 第1戦 レポート
①「タイカンは優勝候補だけど、バッテリーと頭を熱くすると勝てないかも」(富沢事務局長&TAKAさん選手)
②「世界中のポルシェファンのためにも、冷静な走りで完走を目指します」(国江仙嗣選手)
③「タイカンに乗り換えず、モデル3のままで戦ったのは大正解でした」(地頭所光選手)
〈EVレースColumn1〉
JEVRAが移動式の急速充電器をお披露目!
富士スピードウェイのレース会場に、日本電気自動車レース協会(JEVRA)の富沢事務局長が主導して開発した移動式の急速充電器(60kW出力)が出現。ピット内にある国際規格の大電流コンセントからポルシェ タイカンに充電を行っていた。
「急速充電器は土台がコンクリートの固定式が普通なんですが、これだとEVをそこに持っていかなければ充電できない不便さがあります」
「でも、移動式なら対応できる電源があればどこででも充電ができるようになる。サーキットはもちろん、いずれ整備工場や車検場、マンション駐車場などでも重宝されるだろうと思っています」
クルマの電動化時代に相応しい画期的な移動式急速充電器。発売は2021年秋ごろの予定だ!
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