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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2021年2月25日更新
三足の草鞋を履く66歳による
わかりやすく実践的な安全本
著者・松田秀士氏は、三足の草鞋を履いているヒトだ。
一足目は僧侶の草履。1977年に得度し、以降、浄土真宗の僧侶として法要や講演などの活動をたびたび行っている。
二足目はレーサーの草履。28歳という遅い年齢で1983年にレースデビューしたにも関わらずインディ500やスーパーGTシリーズなどの大舞台で活躍し、66歳の現在も現役を続けている。
三足目は自動車評論家の草履。1983年のレース活動開始と同時に評論活動にも取り組み、2000年からは日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務めている。
今回取り上げる本は、こうした確かな三足の草鞋それぞれの視座から、高齢ドライバーに対して「安全運転寿命を延ばす」ことを提案する一冊。運転に際しての心構えの改善、眼力の強化、姿勢の矯正などの必要性とそれに役立つレッスン方法ならびに商品を示しながら、最愛カーライフをなるべく長く続けようと朗らかに呼びかけている。
高齢ドライバーにとっての
未来に向けた希望の書
それにしても、高齢ドライバーに免許返納ではなくて「安全運転寿命を延ばす」ことを勧めるとはなんとも画期的だ。著者は、なぜ、このようなアピールをするに至ったのだろうか?
コロナ禍の拡大が引き金となったようだ。
思い返せば、つい最近までは「運転に不安がある高齢者は免許返納を前向きに検討すべし」がフツーの考え方だった。ところが、コロナ禍がひどくなりだしてから風向きが変わり、人々の意識がビミョーに変化しだした。それが本書の画期的な提案を後押ししたのである。
ここでいう人々の意識の変化とは、例えば以下のようなことだ。
免許を返納した高齢者がどこか遠くへ行くには電車やバスといった公共交通機関を利用するわけだが、それだと不特定多数の他人と密になって新型コロナウイルスに感染する恐れが大きくなってしまう。であれば、すでに免許と愛車を持っていて運転に必要な能力がさほど衰えていない高齢者は、免許返納を急がずに他人と空間をともにしない愛車で移動するスタイルを保った方がいいのではないか……。
安心の愛車移動を続けるためには他車ならびに他者との事故を起こさないようにすることも肝要だが、それについては認知能力や運動能力を今以上に磨き高める努力をしたうえで安全機能が充実した次世代カーに乗り換えるなどすれば、なんとかクリアできるのではないか……。
そう、著者はこうした新たな発想に沿ってこの本を書いたのである。本文中にある「STAY MY CAR(ステイ・マイカー)」の呼びかけは、それを象徴する表現ということになる。
コロナ禍がきっかけとはいえ、この本はある意味、高齢ドライバーにとっての未来に向けた希望の書といえる。まだしっかりと運転できる可能性があるにも関わらず、「そろそろ免許返納かなあ」などと弱気になっているそこの高齢のあなた。もしかすると返納は、この本に書かれていることをトライした後でも遅くはないのかも知れない。ぜひ一読を!(文:みらいのくるま取材班)
『安全運転寿命を延ばすレッスン』
・2020年12月14日発行
・著者:松田秀士
・発行:小学館
・価格:1,400円+税
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