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BookReview(23)『2021年版 間違いだらけのクルマ選び』 – コロナ禍の影響? 「走り一辺倒」だった著者がスズキのハスラーを高く評価!

2021年1月28日更新



エクリプスクロスPHEVが
試乗なしで紹介されている

毎年恒例の一冊の2021年版。今回は著者・島下泰久氏も書き上げるのが大変だったようだ。

なにせコロナ禍である。

2020年中は、海外でのモーターショーや試乗会にほとんど参加できなかった。国内においても各メーカーからの新車のリリースが予定より遅れ遅れとなり、試乗および執筆の時間が大幅に削られた。

結果、本の発売が年末ギリギリの12月23日にまでずれ込んだ。いや、それどころではない。本の中には試乗しないまま、あるいは車両の吟味が十分といえないままにまとめられたインプレッション記事が掲載される事態まで起きている。

例えば、12月4日に発表となった三菱のエクリプスクロスPHEVに関する記事はその一つ。

何と言っても目が向くのはアウトランダー譲りのPHEV、プラグインハイブリッド車の追加だろう。--中略-- 定評のツインモーター4WDが搭載されたのだ。残念ながらステアリングを握る機会は訪れなかったが、サイズアップしたとはいえコンパクトな車体との組み合わせとなるだけに、走りは期待できそう。(『2021年版 間違いだらけのクルマ選び』より)

乗らなくても批評眼が発揮されているところはさすがといえばさすがだが、長らく続くシリーズ発行の中でも、時代を象徴するような注目すべき一台を自身のインプレッションなしに紹介するというのは異例中の異例と言えるだろう。

ユーザー目線のつくりで
10点満点中9点の高評価

だが、こうした致し方ない事態を理由に本書に失望するなかれ、だ。

実はコロナ禍は島下氏のクルマ観をも大きく変えており、それが逆に読みでのある記事の生成につながっていたりするからだ。

本の「はじめに」で島下氏はこう述べている。
今までの私の興味は、走り一辺倒のクルマにばかり向いていた。しかし、さすがにこのコロナ禍で、日々の用達すらも心地良いものにしてくれるクルマで、移動という“贅沢”をもっと謳歌したいという思いが頭をもたげてきたのだ。自分の中ではこれ、とても大きな変化と感じている。(『2021年版 間違いだらけのクルマ選び』より)

最初の特集のテーマを実用的なコンパクトSUVにしたのは、おそらくこのクルマ観の変化ゆえのものだろう。多くの読者が、高価でレアなスポーツカーよりも廉価ながらも便利かつ楽しい移動を可能にするクルマを欲している現実を考えれば、当を得た企図ということができる。
もはやSUV/クロスオーバーはブームではなく、クルマ選びの中心的な存在となっている--中略--。そうした流れが、いよいよコンパクトカーにまで波及してきた--中略--。(実際、ユーザーが)ちょっと楽しげなものを……と欲したり、あるいは子育ての時期に乗ってきたミニバンの“次”を考えた時に、シートの数はそんなに要らないけれど何でも放り込んでおけるスペースと見晴らしの良さは欲しいと思ったり、というのは多いんじゃないかと思う。(『2021年版 間違いだらけのクルマ選び』より)

特集のイントロでこうした「なるほど」という納得を誘った後、まず2020年の代表的なコンパクトSUVといえるトヨタのヤリスクロスとホンダのフィットクロスターの二台の魅力を紹介している。そして、それに続く項ではスズキのハスラーとダイハツのタフトという二台の軽自動車SUVを比較しながらそれぞれの“買い”のポイントを紹介している。後者の比較は、より現実的なクルマ選びを志向する人たちにかなり参考になるのではないだろうか。

両車の外観、内装、走りなどに関する詳しい評価については本書で確かめてもらいたいのだが、巻末の「車種別採点簿」ではハスラーが10点満点中9点、タフトが6点となっていて、明らかにハスラーのほうが高評価に。以下の本文中にあるまとめの言葉からは、その優劣の判断を下した奥深い理由が見えてくる。
両車を比較すると、「どんな風にでも好きに使って楽しんでください」というハスラーに対して、タフトは「こうやって使ってください」とお節介な感じがしなくはない。--中略-- ハスラーの開発責任者は自身も先代を買って楽しんでいたという方で、クルマで遊んでいるユーザーのことを、よく見ているなと思わせる。それと較べるとタフトは、何とか同じカテゴリーに、正面からぶつかっても勝てないから少し違ったものを……というマーケティン
グ的な匂いがする。もちろん、そこにドンピシャでハマる人にとっては、コレしかないということになるのだろうけど。(『2021年版 間違いだらけのクルマ選び』より)

いま現在、便利で楽しい移動が実現でき、コスパもいいクルマを選びたいと考えている人にとっては、この一冊は相当にいい参考書になるはず。気になる向きは、いますぐリアルな書店、もしくはネット上の書店へと急がれたし!(文:みらいのくるま取材班)



『2021年版 間違いだらけのクルマ選び』
・2020年12月28日発行
・著者:島下泰久
・発行:草思社
・価格:1,500円+税

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