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2021年1月14日更新
冷たい雨が降る中、東京の東京国際交流館を舞台に約6時間にわたって行われた第26回日本EVフェスティバル。
午後の〈気候非常事態宣言 EVシンポジウム〉の終盤に行われた「気候変動・自動車・音楽」というトークショーと「一般社団法人日本EVクラブStop気候変動宣言」の表明によって、ついに大団円を迎えることとなった。
これら二つは、いずれも今回のテーマである「つながろう。みんなでCO₂削減!!」をぎゅっと凝縮した内容となっていた。
以下、まずはトークショーの内容について、縦横無尽に展開された話の一部をピックアップし、編集を加えて掲載する。
コロナ撃退もCO₂削減も
「ひとり好き」には解決できない
トークショー「気候変動・自動車・音楽」は、著名な音楽プロデューサーであり自動車ジャーナリストでもある松任谷正隆氏と、日本EVクラブの舘内端代表との間で行われた。
口火を切ったのは舘内代表。最初はコロナ禍における人間活動の在り方について会話がなされた。それがいつの間にかCO₂削減に向けての話へと発展していった。
舘内 まずは、今、私たちが直面している新型コロナウイルスの危機についてお話しましょうか。僕は自動車の世界、特に昔に自分が深く関わっていたモータースポーツの世界のことが気になっています。観客がいないレースって、いったい何なんだろうって(苦笑)。理解に苦しむというか、寂しさが募ります。松任谷さんが関わっている音楽の世界は、どうですか?
松任谷 同じですね。ほら、一時期、クラスターがライブハウスからけっこう出たじゃないですか。あれで観客が集まるライブがダメになっちゃった。それで配信ライブみたいなのが始まったわけです。
舘内 こうなってみると、一緒になって何かやって盛り上がるっていうのは人間にとっては相当大事なことだとわかりますよね。そこから新しい活力が生まれ、人生が豊かになっていくわけですから。
松任谷 僕、最近よく聞く言葉でいえば、今の世の中は「寂しがりやのひとり好き」の集まりになっている感じがしてしょうがないんですよね。
舘内 ああ、それ、言い得て妙。さすがにアーティストの感覚は鋭いですね。それを受けて言わせてもらうと、今、コロナ禍も地球温暖化による気候変動も本当はみんなで一緒になって解決すべきことなのに、国ごとや個人ごとにばらばらにやっているから解決に向かわないというところがある。これは、ある意味、資本主義の中で個人をばらばらにしてしまった文明の悲劇。個人の自由は大切であるにしても、私たちはまとまらないといけないと思う。
松任谷 コロナ禍に関してはいずれワクチンが行き渡ればある程度は解決していくんでしょうけれど、舘内さんが言うように、気候変動については、世界地図を描き変えるくらいの勢いでみんながしっかり手を組んで、CO₂削減に取り組むことが重要なんでしょうね。
理性的にEVの普及をめざし
野生的にEVレースを目論む
現在、世界的にクルマの電動化の動きが急だ。トークショーではそれを踏まえて、松任谷氏が長らくEV普及に取り組んできた舘内代表に「この先、やることが少なくなっちゃうんじゃないですか?」と冗談半分で尋ねている。
それに対して舘内代表はそのとおりだと笑って答えている。そして、その答えの後には、今後の日本EVクラブの活動の在り方を示唆する言葉が続いた。
松任谷 話は変わりますけど、舘内さんがEVの普及活動に取り組み始めたのは、いつからなんですか? また、どうしてそういう時代に先駆けたことをやろうと思ったんですか?
舘内 EVの普及に携わろうと思い立ったのは、もう四半世紀以上も前のことです。日本EVクラブを立ち上げたのは1994年のことなんですけど、その前の92年に大きなきっかけがありました。10月に鈴鹿で行われたF1を観て帰ってきたら、80~90年代に私と同じようにレーシングカーの設計をやっていた小野昌朗さんから連絡がきて、東京電力でIZAという電気自動車をつくったから試乗してと言われたんです。それで、第三京浜で乗ってみたら、今までに体験したことのないほどものすごいクルマだった。「こんなの現実じゃない」って思うぐらいに走りがスムーズで速かった。自動車ジャーナリストして、人間として、相当に大きな衝撃を受けたんですよ。そこからです。EVの普及活動にのめり込むことになったのは。
松任谷 そのときに、EVをはじめとする電動車が今みたいにメジャーな場に躍りでるってことは確信されてたんですか?
舘内 いや、ぜんぜん(笑)。乗れば誰だって惚れ込むだろうし、もし人類が地球の危機的な状況に気付けばEVを選択するしかなくなるとは思っていましたが、これほど急に世界中で電動化の大きな波が起こるとは予想していませんでした。これについては僕が一番驚いていると思います。
松任谷 ほんとに急ですよねえ。実は僕、テレビで『カーグラフィックTV』という番組を30年ぐらいやっているんですが、10年ほど前のあるときにテスラ・ロードスターの特集をやろうということになりまして、じゃあ借りてこようかっていう話になったんですよ。ところが、当時は充電できるところがまだ少なくて、走らせる場所によってはクルマが返せなくなっちゃう恐れがあることがわかり、結局その企画はボツになりました。今では考えられない話なんですけど、それが記憶として鮮明に残ったものだから、僕、つい数年前までEVはまだまだマイナーなクルマなんだろうなって思い込んでいたんです。
舘内 そうそう、EVがメジャー扱いされるようになったのは、ごく最近のこと。いろんな要因はありますけど、テスラでいえばモデルSとモデル3が世界的にヒットしたあたりからのことでしょう。
松任谷 ですよね。しかし、舘内さん、現実としてここまでEVがメジャーになってきたら、この先、やることが少なくなっちゃうんじゃないですか? もしそうだとするなら、達成感はあるにしてもちょっと寂しくなっちゃいますね。
舘内 ふふふ、よくわかりましたね。でもね、僕はEV普及活動はわりと理性に基づいた部分でやってきているので、EVがメジャーになったことについては、「来るべくして来た」と冷静に受けとめています。それどころか、このままどんどんとEVの普及が進んでいって温暖化が抑制されていき、僕のやるべきことがもっともっと少なくなればいいなとさえ思っている。変な話、昔も今もその意識でがんばっているんです。
松任谷 ああ、そうだったんですね。
舘内 ええ。ただし、人間はそういう理性的で合理的なことだけじゃ生きていけない生き物です。例えば、内なる野生の部分を刺激する楽しいライブイベントとかが不可欠だったりする。クルマの世界でいえば、排ガスを出さずに速く走るEVや遠くまで走れるEVが出てきて、それが心躍るレースを繰り広げたりすることも大事だということです。日本EVクラブはそこを活性化させていきたい。持続可能な野生的活動って言えばいいのかな、そんな活動もがんばってやっていきたいと思っているんですよ。そう、まだまだみんなと一緒にやるべきことがたくさんあります。
松任谷 今一番いろいろなことを吸収しなきゃいけない時期だと思うんです。今が一番いろいろなものの真実が見えている気がします。
まだ見ぬ子どもたちのための
持続可能な社会の構築へ向けて
トークショーが終わると、フェスティバルの最後のプログラムとして舘内代表による「一般社団法人日本EVクラブStop気候変動宣言」の表明があった。
トーンは少々固め。だが、この先に続くクルマの電動化時代に向けて自動車に関わるすべての者が、何を考えてどう行動すべきかがよく伝わる内容となっている。
ぜひご一読を!
① Honda eも「みんなでCO₂削減!!」へ向けたさまざまなる意匠の一つ。
② エクリプスクロスPHEVは、エンジン車から乗り換える電動車として“賢い選択”といえそう。
③ 三菱自動車はCO₂排出量が最少となるPHEVを中心に電動車比率を高めてゆく。
④ EVオーナーは環境性能に加えて走りに惚れて購入を決めている。
⑤ 世界地図を描き変える勢いでみんなで手を組みCO₂排出ゼロを目指そう。
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