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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2020年12月10日更新
未曾有の3連覇か
逆転チャンピオンか
クリアな大気に、でっかい富士山――。
見事な日本晴れとなった11月14日、富士スピードウェイで2020全日本EVグランプリシリーズ第7戦「全日本 富士 EV 50㎞レース大会」が開催された。
今大会はシリーズ最終戦。すでに年間チャンピオンが決まっているクラスもあったが、最もモーター出力が高いクラスであるEV-1および総合の年間チャンピオンはこのレースの結果次第で決まることになっていた。
◎2020全日本EVグランプリシリーズのクラス
EV-1(市販車クラス:モーター最大出力201kW以上)
EV-2(市販車クラス:モーター最大出力151kW以上201kW未満)
EV-3(市販車クラス:モーター最大出力101kW以上151kW未満)
EV-4(市販車クラス:モーター最大出力101kW未満)
EV-C(コンバートクラス:エンジンをモーターに換装した車両)
EV-P(プロトタイプ・クラス:開発車両/レース専用車両)
EV-F(市販車クラス:FCV=燃料電池車クラス)
EV-R(市販車クラス:レンジエクステンダー/発電をエンジンで行う車両)
※2020シーズンはEV-4とEV-Pクラスの参戦者なし。
※EV-3とEV-C、EV-Fクラスは参戦はあったものの「7戦中6戦の参戦」の条件をみたす選手がいなかったため年間チャンピオンの対象外。
注目は、何と言っても二人のドライバーによるEV-1と年間チャンピオン争いの行方である。
ここまでトップを走っているのは100ポイントをあげている“東大生ドライバー”地頭所光選手(ゼッケン1番/Team TAISAN 東大)で、この大会で表彰台にのぼれば2020年の年間チャンピオン(EV-1クラス&総合の年間チャンピオン)になるのはもちろん、3年連続の年間チャンピオンという前人未踏の記録も打ち立てることになっていた。
そして、92ポイントで2位につけていたのはテスラ車ファンとして有名なTAKAさん選手(ゼッケン33番/スエヒロRC)。自身がこの大会で優勝して20ポイントを獲得し、その一方で地頭所選手が4位以下となって獲得ポイントが10以下に留まれば逆転でチャンピオンの座に就けることになっていた。
現実的には地頭所選手が断然有利。だが、両者ともに出場マシンの中で最速のテスラモデル3を駆っており、ドライビングの実力も紙一重であることを考えれば、レースの展開次第では逆転劇もなくはなかった。
実際、大会を主催するJEVRA(日本電気自動車レース協会)の富沢久哉事務局長も、レース前にこう言っていた。
「EVは、サーキットのように超高速走行ができるところをアクセル全開で走り続けると、バッテリーが熱をもって劣化する恐れがあるので、メーカー側はそれを防ぐためにある温度に達すると加速制御が働く仕組みを導入しています。そのため、各選手は適度なアクセルワークで、効率のいい熱マネジメントを行いながら走る必要があるわけです」
「そんな中、もしTAKAさんがあえてアクセルを踏み続けてトップ引きをしたらどうなるか? トップ集団のバッテリーの温度は総じて高めになり、場合によっては、TAKAさんが生き残り、地頭所くんが順位を落とす可能性もないわけではない。TAKAさんのどんでん返しのチャンピオンの獲得、決してあり得ない話じゃないですね」
はたして結果や如何に。
いずれにしても、レースはこの二人が主役になるのは間違いないところ。われわれ取材班は、二人のチャンピオン候補の戦いぶりに全力集中し、午前の予選と午後の決勝の取材に臨むことにしたのだった。
冷えたタイヤで
初参戦者が驚速タイム!
だが、しかし、午前9時30分に予選が始まってすぐに、われわれのこの鉄板とも思えた取材方針は大きく揺らぐこととなった。
まだ路面温度が低くてタイヤが温まっていない中、今大会に初めてスポットで参戦した八代公博選手(ゼッケン8番/idlers)が真っ白なテスラモデル3を駆って1分58秒954というタイムを叩き出し、いきなりトップに躍り出たのだ。
いくら速いテスラモデル3とはいえ、難コースが続く富士スピードウェイの4.5㎞あまりを2分を切って走るのはそう簡単ではない。それをタイヤのグリップが十分に効かない状態で軽々と成し遂げたのである。
聞けば、八代選手はエンジン車レース界では知る人ぞ知る有名人。かつてはレーサーとして国内外のレースを転戦し、その後はSUPER GT GT300に出場していたGulf Racing JAPANのチーム監督を務めるなどの華々しいキャリアを重ねている。つまりは走りのプロ中のプロ。レース通に言わせれば「速いのは当然。とりたてて驚くほどのことではない」となるらしかった。
ただ、その後、なぜか八代選手はそれ以上のタイムアタックをしなかった。そのため、予選後半になって年間チャンピオン最有力候補の地頭所選手が八代選手のタイムを2秒以上縮める1分56秒829をだしてポールポジションを獲得し、シリーズの常連参戦者としての面目を保った。しかし、もう一人のチャンピオン候補であるTAKAさんは2分00秒823止まりで八代選手のタイムには及ばず3位という結果となった。
午後に行われる決勝のスターティンググリッドは地頭所選手、八代選手、TAKAさん選手のマシンの順で並ぶことが決まったのである。
こうなってくると、決勝レースは予選前の読みとはまったく違う展開になる気配が濃厚。
われわれは当初の取材方針を急遽変更し、年間チャンピオンの行方を追いつつも予選1位から3位までの三人の戦いっぷりを全力集中でウォッチすることにした。
2020全日本EVグランプリシリーズ第7戦レポート
①晴天の霹靂。初参戦の八代選手が予選でいきなり2位に躍り出た!
②レーサー劇場。TAKAさん選手がサーキットの中心でEVレース愛を叫んだ!
③有終の美。地頭所選手が鬼の走りで前人未踏の3連覇を達成した!
④EVルネッサンス。JEVRAが最高1,680万円の“賞金レース”開催に動き出した!
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