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『EVOCカンファレンス2019 in HAKONE』レポート(中編)EVオーナーたちの熱気にゲストスピーカーからこぼれ話も飛び出す!

2019年12月3日更新



会場の会議室は中規模であったが、そこにカンファレンスに参加したEVオーナーたちとゲストスピーカーが入ると、かなりの密度になった。前の方の席に座ると、目の前でゲストスピーカーがプレゼンする形となり、その思いが伝わってくる。また、時折、カンファレンス参加者から生の声で合いの手が入ったりして、それが場を和ませる。この雰囲気も、このカンファレンス独特のものなのかもしれない。昼食をはさんで、プレゼンは午後の部に入った。

【プレゼン午後の部 前半】

上から1段目:(左)一般社団法人CHAdeMO協議会 会長 姉川尚史氏、(右)日産自動車株式会社 日本EV事業部マーケティングマネージャー 島村盛幸氏、上から2段目:(左)三菱自動車工業株式会社 EV・パワートレイン技術開発本部 チーフテクノロジーエンジニア 百瀬信夫氏、(右)ポルシェジャパン株式会社 E-Performance/WLTP担当|マネージャー 細川英祐氏



「EV普及に向けて大切なコラボ」(一般社団法人CHAdeMO協議会 会長 姉川尚史氏)
(私自身は東京電力に身を置いているので)充電インフラを造るのは電力会社の仕事だと考え、EVを製造・販売する三菱自動車さんや日産自動車さんなどと一緒にCHAdeMO協議会をつくった。
インフラのビジネスは、最初は赤字を覚悟で投資をして、まずはインフラ設備を増やさなければならない。一時、インフラの拡充が停滞したが、1年ほど前から再び力を入れている。日本においてEVは「増やさなければならない」クルマであり、これをEVイノベーターの皆さんとのコラボで推進していきたい。(※姉川氏のプレゼンのトピックは本レポート「後編」に掲載)

「日産が取り組むニッサン インテリジェント モビリティの概要、他」(日産自動車株式会社 日本EV事業部マーケティングマネージャー 島村盛幸氏)
クルマづくりの面で、日産は、「ニッサン インテリジェント モビリティ(Nissan Intelligent Mobility)」という取り組みを通して、クルマを単なる移動の道具から、乗る人をワクワクさせる存在に進化させていく。その柱は、電気自動車の技術、自動運転の技術(プロパイロット)、コネクテッドカーの技術である。電動化社会の普及促進の面で、日産は他の企業や自治体を巻き込み日本電動化活動「ブルースイッチBLUE SWITCH)」を展開している。これは、電気自動車の普及を通じて地域課題の解決に取り組むもので、例えば山梨県では、毎年7月~9月に行われる富士スバルラインのマイカー規制において、EV・FCVを規制から除外する優遇策を実施した。環境への影響を抑えつつ、地元の観光を活性化させる目論見がある。

「電動化社会の普及に向けて」(三菱自動車工業株式会社 EV・パワートレイン技術開発本部 チーフテクノロジーエンジニア 百瀬信夫氏)
まず報告として、日本郵便が集配用車両にMINICAB-MiEV(ミニキャブ・ミーブ バン)を導入することが決定。2年間で1200台をガソリン車から切り替えすることになった。さて、三菱自動車としては、今年は電動化社会を整えていく年と位置付けて活動している。三菱商事がローソンと提供する新電力サービス“まちエネ”と提携し、『毎晩充電し放題プラン』の提供。新規EV・PHEVユーザーを対象とし、自宅での充電につき深夜1時から5時の限定ながら充電料金を三菱自動車が負担するというもの(10月からサービススタート)。また、電動車両(EV・PHEV)、太陽光パネル、V2H、専用電気料金プランをパッケージにした『電動ドライブハウス(DENDO DRIVE HOUSE)』を三菱自動車の販売会社にて販売していく。その他、自治体と連携した『三菱自動車DENDOコミュニティサポートプログラム』を推進していく(※『三菱自動車DENDOコミュニティサポートプログラム』の詳細は本レポート「後編」に掲載)。

「ポルシェの電動化と挑戦」(ポルシェジャパン株式会社 E-Performance/WLTP担当|マネージャー 細川英祐氏)
「100年に一度の大変革」を自動車業界が目の前にしている。我々は、「PORSCHEというブランドが無くなってしまうかもしれない」という危機感を持ちながら、変革に向き合っている。ここからの100年のスタートラインは電動化であるが、それに対してポルシェとして出した答えがタイカンというモデル。ポルシェの初のEVがスポーツカーであるのは、それがブランドのアイデンティティであるからだ。日本国内の販売スケジュールなどはまだ明確ではないが、価格はたぶん1200-2200万くらいで、今年年末から来年春くらいのどこかで販売開始になり、2020年9月くらいから日本の道を走り始める。EVの普及のために、インフラ整備も重要。ポルシェは日本国内での充電インフラを構築していく予定である。

【プレゼン午後の部 後半】

(左)ニチコン株式会社 車載・V2H・急速充電器グループ ビジネスグループ長 関宏氏、(右)ユアスタンド株式会社 代表取締役 浦伸行氏



「急速充電器の市場課題とメーカー課題」(ニチコン株式会社 車載・V2H・急速充電器グループ ビジネスグループ長 関宏氏)
一つ目の課題として、①「充電器の使用状況のインバランス」がある。現在の充電器は、全国7600基が稼働。高速道路上のSA、PAは充電待ちが頻繁に起こっている。しかし、それ以外の場所の充電器は使用頻度が少ない。全体の66%の充電器は「1日2回未満の使用」に留まっている。今後の充電インフラ普及において不安要素と言える。
その他の課題:②「国内メーカーごとに充電器の操作方法などが違う」→ユーザーが操作しづらい、③「認証・課金システム仕様がネットワークベンダーごとに異なる(大手3社がそれぞれ違うプロトコルを使用)」→充電器メーカーの開発費が増える、④「コールセンターへユーザーからの問い合わせが増加(多くが操作方法、課金方法)」→業界として標準化が必要、④「急速充電器の大容量化」→イニシャルコストが上がる。使い勝手の向上も必要。

「集合住宅におけるEV充電の課題」(ユアスタンド株式会社 代表取締役 浦伸行氏)
現在、EVユーザーの90%は戸建てに住む。日本の4割、首都圏では6割が集合住宅に住んでいるが、EV充電器の重合住宅への普及率は0.1%未満だという。マンション居住者にアンケートを取ると、EVに興味のある方はかなりある。充電器の場所も自宅希望という回答が多い。EV充電器導入の課題として、①合意形成(理事会など)、②コスト(メンテナンス費用等含む)③運用(課金管理、利用手順など)などがあり、それを解決するには一定のノウハウが必要(こうしたところを提案、サポートしている)。現状に対する解決策として、一つの充電器を設置し、効率的にシェアする方法を提案。専用アプリで充電器の予約や課金などの運用を行っている。既存マンションへの導入実績は、今年の8月で55件ほどで、年内に100件を想定。

これらのプレゼンの後に、EVオーナーたちとゲストスピーカーとの間で意見交換を行う座談会を開催。話題はさまざまであったが、プレゼンの熱気をさらに増すトークが展開された。
そして、夕方、カンファレンス終了後は懇親会となり、非常にくだけた、和気あいあいムードの中で、しかしかなり突っ込んだEV談義に花が咲いたのであった。

こぼれ話(1)
e-POWERは難産だった

多彩なゲストスピーカーたちが語る、それぞれの分野での話は深く、大いに興味をそそられるものであった。また、それぞれのプレゼンは個々に成立しているのだが、一日のカンファレンスを通して咀嚼してみると、EVの現状、あるいはEVライフの現状を鮮やかに描き出していた。
さて、そんな中で、このようにEVオーナーとEV関連業界から参加したゲストスピーカーという組み合わせだから聞けた、こぼれ話があった。これがなかなか面白く興味深い内容だったのだ。

まずは、日産自動車の島村氏が語ったノートe-POWERのこぼれ話(補足を加えた概略)。

「かつて私はノートe-POWERの商品企画を担当していて、e-POWERユニットが実現するまでの紆余曲折を身を持って体験した」

「e-POWERユニットは、もともとはリーフをレンジエクステンダーEVにすることを想定して開発が進められていたものだった。ところが、『ゼロエミッションカーのファーストステップであるリーフにマフラーを付けるのは企業姿勢としていかがなものか』という声が出て棚上げされることになってしまった」

「その後、ノートで新しいカタチの電動車を創ろうということになり、再び陽の目を見るに至った。けれども、リーフ用に開発していたユニットを、サイズが小さいノートに合うようにするのに苦労した。
しかも、同時期にルノー側から『われわれにはe-POWERの半分のコストで同じ性能がだせるシステムユニットがあるので、それを搭載してはどうか』との提案があり、同じアライアンスの中での競合まで巻き起きてしまった」

「最終的にはなんとかコンパクトにまとめあげることに成功し、かつルノーとの競合にも勝つことができたが、ノートe-POWERはそうしたいろいろな壁を乗り越えて誕生したクルマなのである」

やはりヒット商品は一朝一夕では生まれない、ということだ。

なお、島村氏は、今後の日産のEV戦略にも言及している。それによると日産はユーザーニーズに合わせてEVのラインナップを拡充していくことを決めており、2022年度までにCクロスオーバーSUVのEVと、軽自動車のEVを市場に投入する予定になっているのだそうだ。

※赤丸は編集部が付加



SUVのEVについては今年7月に開かれた決算説明会で言及されていたが、そこに軽自動車のEVまで加わるとはすばらしい展開!……と手を打ったのだが、その後「『第46回 東京モーターショー 2019』に日産は、軽自動車EVのコンセプトカー『ニッサン IMk』を出展」との報が流れた。これは、モーターショーの現場でじっくりと拝見させていただこう。

こぼれ話(2)
タイカンの室内には
走行音が鳴り響く!

続いて、ポルシェジャパンの細川氏が明かしてくれた、近々販売されるポルシェ初のEVスポーツカー『タイカン』に関するこぼれ話(補足を加えた概略)。

細川氏はプレゼンの中で、タイカンのプロモーションビデオを上映。そして、こう言った。

「聞こえましたか?今回、スピーカーを用意してまでプロモーションビデオを観ていただいた理由の一つは、音を聞いていただくため」

「このタイカン、実は室内のスピーカーから『ブゥーン』という人工の走行音が室内に鳴り響くモードが選べる仕様になっている。これは現段階では、どこにも出ていないこと。皆さんに初お披露目させていただいた」

「そもそもポルシェはスポーツカーを世に問うてきたブランド。スポーツカーと音はどうしても切り離せない関係にある。それ故、EVであってもスポーツカーである以上は走行音が不可欠だろうとなり、導入が決まった次第。EVの世界におけるこの新しい試みにぜひ注目してもらいたい」



本来、EVは室内にエンジン音がしない静けさを大きなメリットの一つとしている。なのに、あえて室内に走行音が響くようにするとは驚きだ。これからのやってくる本格的なEV時代には、個性的なEVが数多く出現してくるといわれている。それぞれのEVが、どんな主張をしてくれるか、楽しみに待ちたい。

『EVOCカンファレンス2019 in HAKONE』レポート

(前編)多彩なゲストスピーカーが登壇したEVイノベイターたちの集い

(中編)EVオーナーたちの熱気にゲストスピーカーからこぼれ話も飛び出す!

(後編)ちゃんとした大人たちのノブレスオブリージュこそEV普及のカギである

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