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日本EVクラブ『SDGs Urban Electric Four-Wheeled Ice Sports』プレゼンテーションイベント  ルポ③ 老若男女が楽しめるピースフルなモータースポーツの今後に期待大!

2019年8月6日更新



津々見友彦さんのインプレッション
「低速のF1マシンみたいで面白い」

さて、ルポの締めくくりに『SDGs Urban Electric Four-Wheeled Ice Sports』の魅力、真価をより詳細にお伝えするために、プレゼンテーション走行/試乗に参加した3人の方のインプレッションをミニ・インタビューの形式で紹介しておきたい。

まずは、御年78歳になる伝説的レーシングドライバー津々見友彦さんへのミニ・インタビューから。



――津々見さんは長年にわたりエンジンを搭載したマシンでレースに参戦してこられました。今回、電気レーシングカート=ERK(Electric Racing Kart)で氷上を走られて、どんな印象をもたれましたか?

津々見 ERKで氷の上を走るっていうのは生まれて初めての体験だったわけですが、ものすごく楽しかったですね。そもそもモータースポーツにおいては、加速するときにスーッと脳みそが後ろに引かれる感じとか、コーナーでフワーッとなる感じとか、Gの揺らぎが気持ち良さを生むわけですけれど、この『SDGs Urban Electric Four-Wheeled Ice Sports』では、低速に設定されていながらも滑りやすい氷の上だったがために、まさにそれをしっかりと体感することができました。

 



――エンジンを搭載したマシンと比べて、電動マシンのいい点はどんなことでしょう?

津々見 実は私は、走って競争する上においては、動力はなんでも構わないという考えをもっているんですよ(笑)。気持ちよければ、それでOK。だから、どっちがいいとか悪いとかはありません。ただ、氷の上でのモーターの走りはとてもピースフルなスポーツ性があって、それが非常に魅力的なものに感じられましたね。

――ピースフルなスポーツ性、ですか。

津々見 そうです。モーターは回転が低いところからトルクがバーッとでるので、ドライバーとしてはとても御しやすいんですけど、氷の上だと、ちょっとアクセルを踏むだけでF1マシンみたいな挙動を見せるので、それなりに操作が難しくなる。ただ、低速かつ安全な状況でそういうスポーツドライビングが味わえるわけで、そこがすなわちピースフルな面白さになっていると思えたんです。

――なるほど、低速のF1ですか!

津々見 それから、静かでクリーンなのもいいですよね。エンジンのような爆音や振動がないし、排気ガスもまったく出ないから、走っている人も観ている人も余計なところで疲れることがない。だから、これがちゃんと競技化すれば、老若男女が無理なく平和裏に楽しめるモータースポーツになる可能性はかなり大きいと思います。

――実際、お孫さんの真一くんも、楽し気に走っていましたね。

津々見 ねえ。初めての体験にも関わらず、最初から最後まで笑顔で走っていましたよ。それで、走った後は「また乗りたい」ってはっきり言っていた……。実は、これまで、私みたいにレースに病みつきな人間になると困ると思って、あえてカートには乗せてこなかったんですけど、その方針が一気に崩れそうです(笑)。

若林葉子さんのインプレッション
「お化粧がはげないモータースポーツ(笑)」

続いて、Car&Motorcycle Magazine『ahead』の編集長である若林葉子さんへのミニ・インタビュー。



――舘内代表によれば、室内スケートリンクでの都市型電気四輪氷上スポーツが成立すれば、それは世界初ということになるらしいのですが、実際にそのめったにないドライビングを体験されて、どんな感想をもたれましたか?

若林 実は最初、プレゼンテーション走行のドライバーをやらないかというお話をいただいたとき、氷の上を走ることがなんだかすごく突拍子もないことのように感じられて、正直、「え、それって本当に面白いの?」って懐疑的に思っちゃったところがあったんですよ(笑)。ところが、実際に乗ってみたら、もう理屈ヌキで面白くて、楽しくて……。とくに私たち女性にとってはすごくいいモータースポーツになるだろうなあって思いましたね。

 



――その、「女性にとっていいモータースポーツ」になり得るということについて、詳しく教えてください。

若林 もともと私、「身体能力の足りないところをクルマが補ってくれる」というところから、モータースポーツは非力な女性や子どもに向いていると考えているんです。でも、エンジンを載せたマシンだと、けっこう操作が難しい上に、音や振動、排ガスがすごくて、向いているとは言っても、なかなか気軽に参加するわけにはいきません。
それが、ERKだと音や振動に対する恐怖感とか、排ガスに対する抵抗感とか、そういった障壁のようなものがいっさいないので、スッと参加できる可能性が大きいわけです。しかもERKは出力特性を自在に変えることができるので、低い速度で安全に、かつ華麗に氷上を滑ることができます。そういう意味で、女性にも向いているかなと。気軽で華麗でありながら、適度に筋肉痛になるほどのスポーツ性もしっかりとありますしね。


――それ以外で、女性にいい点は?

若林 女性が喜ぶ環境が整っているというところですね。普通、カート場は屋外であることが多いのですが、ちょっとでも気温が高いと、汗はダラダラ、お化粧はハゲるなどの困ったことが起きてしまうんです(笑)。涼しい室内スケートリンクだとそういう心配はまったくしなくていいということが今回、分かりました。

――なるほど。

若林 それだけではありません。たいていのサーキットは、遠いところにあって行くのが大変なのですが、やっとの思いで着いたら、夏は炎天下で日陰がなく、冬は吹きさらしだったり、女性用トイレが少なかったり、……モータースポーツを楽しもうという気がそこで失せちゃったりもするんです。
ところが、室内スケートリンクが会場なら、駅に近いし、トイレもちゃんとしているし、もう女性にとっては言うことなしの状態です。これは嬉しいことですよ。モータースポーツを楽しもうっていう気にしっかりとなれます。


――ちなみに、舘内代表はこの氷上スポーツをフィギュアスケートもしくは氷上ジムカーナのような競技にすることを視野に入れていて、その上でそれを五輪競技に育てたいという夢を持っているらしいんですが、その可能性はアリだと思われますか?

若林 さすが舘内さん、考えることがデカイ(笑)。いや、大いにアリでしょうね。フィギュアスケートなんて、まさに女性向き。ぜひ、その夢、実現していただきたいですね。


久保田剛史さんのインプレッション
「EVとの接点が増え、EVファンも増えていく」

最後は、当日急遽見学者にも行った試乗会に参加した久保田剛史さんという方へのミニ・インタビュー。

久保田さんは、一般の人とはいえ、以前はEVのコントローラーや自動運転システムなどの開発を行っている有名企業に勤め、いまも理想のEVユニットや次世代モビリティ社会をつくり上げることを目指している、プロなのであった。



――氷上の電動カートに試乗した感想をお聞かせください。

久保田 今回、私は、氷上というある意味で極限の状態の中を電動車が走るとき、どのようなコントロールが必要になるかを確かめることを目的の一つとして試乗させてもらいました。それで、気付いた細かいことはいろいろとあったんですけど、かなり大ざっぱな感じで言わせてもらうと、氷の上でもいいコントローラーを付けた電動車なら、もっと楽に、安全に、かつより楽しく走ることができるに違いないという感想を持つに至りました。

――えーっと、すみません、お話されている内容がほとんど見えていないんですけど、具体的にそれはどのようなことを指して言われているんでしょうか?

久保田 たとえば、凍った道で急に滑って、そこに人が飛び出してきたりしても、電動車にいいコントローラーが付いていれば、ブレーキを踏みながらハンドルが切れて、しっかりと危機を回避できるであろうということです。これは、エンジン車ではなく電動車だからこそ実現できるクルマ側の安全対策になるだろうとの確信が持てましたね。

 



――では、新しいモータースポーツとしての可能性というか魅力については、どのような思いを持たれましたか?

久保田 実は私、ときどきエンジン車によるジムカーナを楽しんでいるんですよ。その経験をベースに言わせてもらうと、このような至近な街中の密閉空間で、音もなく、ガスの臭いもなく、存分に走れるというのは非常に画期的なことと映りました。
また、モータースポーツはある程度はリスクがないと楽しくないものなのですが、その点は滑りやすい氷という存在がちゃんと担ってくれていることもよくわかりました。
つまり、休日・平日の別とか、昼夜も関係なく、気軽にモータースポーツが楽しめる条件が揃っているわけで、そこに私は新しいモータースポーツの萌芽のようなものをしっかりと感じ取りましたね。

――ところで、EVづくりのプロとしてのご意見を伺いたいのですが……世界中でEVシフトが進む中、日本ではEVの普及が進んでいません。その理由として、EVの価格が高かったり、充電インフラが不十分だからという指摘に加えて、「日本人は電欠恐怖症が極端だ」いう意見もあります。そのあたりのことについてはどのように捉えていらっしゃいますか?

久保田 日本人は電欠恐怖症というよりも、「初めてのモノ恐怖症」のところが多分にあるような気がしますね。新しいモノをなかなか受け付けない国民性がEV普及の弊害になっていると思うんですよ……。
EVは、乗ってみれば、その素晴らしさが一瞬にしてわかる乗り物なのに、食わずギライのままでいるというのはなんとももったいない話です。みすみす人生の歓びを一つ減らしてしまっている感じがします。
だから、今回のような電気レーシングカートによる氷上スポーツが競技化して人気が出れば、自然とEVとの接点は増えていき、それにともなってEVファンも増えていくことでしょう。そういう面でも、私は『SDGs Urban Electric Four-Wheeled Ice Sports』の進展に大いに期待しています。


人はこれまでにない新しいものに出会うと瞬時に好奇心を抱くと言われているが、本当のところはそうじゃない。そうなる前に戸惑いのようなものが先に立ち、「これはいったいなんなんだ?」と懐疑的な心持ちになるのがフツーだ。

だが、その新しいモノの存在価値の一端だけでも理解できると、そこで好奇心がムクムクと沸き起こり、次第にその新しいものを好きになっていく。そして、やがてそれを手に入れようと前向きになる。そういうプロセスの中では、理屈はあまり役に立たない。例えば、直感的な歓びをもたらすスポーツ体験こそが媒介として大いに役立ったりするのである。(文:みらいのくるま取材班)

① 電気レーシングカートによる氷上スポーツがいずれはオリパラ競技に!?

② 氷上のドリフトに氷の粒が舞い、笑顔がリンクにあふれた!

③ 老若男女が楽しめるピースフルなモータースポーツの今後に期待大!

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