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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2019年8月6日更新
人はこれまでにない新しいものに出会うと瞬時に好奇心を抱くと言われているが、本当のところはそうじゃない。そうなる前に戸惑いのようなものが先に立ち、「これはいったいなんなんだ?」と懐疑的な心持ちになるのがフツーだ。
実際、われわれロータスタウンの編集スタッフも、新しいものに出会うとだいたいそんな感じになる。
最近では、ロータスクラブが会員になっている日本EVクラブが、7月13日(土)に『SDGs Urban Electric Four-Wheeled Ice Sports』プレゼンテーションイベントなるものを開催し、屋内スケートリンクの氷の上で電気レーシングカート=ERK(Electric Racing Kart)を走らせるとの報せを受けたときにそうなった。「えっ、なにそれ?」と、その前代未聞の斬新さ(もしくは突拍子のなさ)に激しく戸惑ってしまった。
クルマの世界にEV化の波が押し寄せているとはいえ、なぜあえて氷上でERKを走らせなければならないのか、そして、それによって何を目指すのか。そこらへんがまったく見えなかったのである。
というわけで、われわれは戸惑いとギモンを抱えたまま、当日、会場となったKOSE新横浜スケートセンターへと赴いたのであった。
モータースポーツも
サステナブルなものに!
午後2時過ぎ、『SDGs Urban Electric Four-Wheeled Ice Sports』プレゼンテーションイベントがスタートし、その冒頭、日本EVクラブの舘内端代表が今回の催しの趣旨説明を行った。
はたして、舘内代表の口から、われわれのギモンに対する答えが語られるであろうか……。以下は、趣旨説明の抜粋ならびに概要(省略および補足のための加筆あり)である。
「かつて私はF1のエンジニアだった。だから、エンジン車によるレースが大好きである」
「しかし、CO₂による地球温暖化と、それによる気候変動が大きな問題になっている現在、残念ながら、エンジン車によるレースを続けることは困難になっている。モータースポーツ界は、CO₂を出さないモーターを搭載した電動車によるレース実施への移行が迫られている。実際、あのF1もフォーミュラEに取って代わられつつある」
「今回の、屋内スケートリンクをERKで走るという、いわゆる都市型電気四輪氷上スポーツのプレゼンテーションも、そうしたモータースポーツの電動化の流れの一つである」
「ちなみに、『SDGs Urban Electric Four-Wheeled Ice Sports』の頭に付いているSDGs(エスディジーズ) とは、国連サミットで採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)のこと。この目標のなかには、スポーツの世界においても地球温暖化=気候変動問題の解決に向けた取り組みが必須とされている。都市型電気四輪氷上スポーツは、まさにその主旨に合致したものになる」
「今後、これを具体的にどのような競技にしていくかは未定。しかし、来年の2月ぐらいまでになんらかの形で第1回目の競技会が実施できればと思っている」
開催主旨と意義についてはよくわかった。だが、残念ながら、戸惑いとギモンは完全には解消されないまま残った。そこで、氷上のプレゼンテーション走行がはじまる前に、直接、舘内代表にギモンをぶつけてみることにした。
目指すはオリパラ正式種目!?
―― 日本EVクラブは、毎秋、『日本EVフェスティバル』を筑波サーキットで開催するなどしてEVによるモータースポーツの普及に尽力されています。ところが、今回は、その場所がいきなり室内スケートリンクとなりました。なぜ、あえて氷上でERKを走らせようと思われたでしょうか?
舘内 理由は二つほどあります。まず一つは、僕がもともとフィギュアスケートという華麗な競技が大好きだということ。つまり、氷の上で電気レーシングカートによるフィギュアスケートのようなことができないかなと思ったわけです。アメリカにケン・ブロックという神業ドリフトをする達人ドライバーがいますけど、ああいうドリフトをやりながら舞えばきっと面白い競技になるだろうなってね。
―― ああ、電気レーシングカートによるフィギュアスケートですか。
舘内 まあ、氷の上で単純に順位を争うレースとか、1台ごとに走行タイムを競うジムカーナのような競技にすることとかも考えられるので、本当にフィギュアスケートのようなものにするかどうかはこれからの検討事項ですが……。いずれにしても、そういう世界初となる氷上の独自の競技を実現させていくつもりでいます。それで、もし人気が高まれば、例えば、フィギュアスケートの金メダリストであり、大型二輪ライダーでもある荒川静香さんに参戦してもらいたい……などと考えたりしています(笑)。
―― では、氷上を選んだもう一つの理由とは?
舘内 室内スケートリンクが、街の中に存在しているということです。日本EVクラブでは、子どもたちを対象にしたERKの組立体験教室をやっているんですが、組み立て終わってもそれを走らせられる場所がなかなか見つからないという悩みがありました。サーキットまで行けば問題ないけれど、街中からあまりに遠くて子どもを連れていくのは現実的ではない。だったら、どうすればよいか。それで、街の中にそれなりに広い室内スケートリンクがあることに気付いたんですよ。そこでERKの組立体験教室を開催すれば、走行もできます。ERKは排気ガスと騒音が出ないから、室内のスケートリンクでも思いっきり走らせることができるわけです。
―― なるほど、今回のネーミングにUrbanとあるのは、そうした意味合いも込められた結果なんですね。
舘内 そうです。それと、いまやオリンピック・パラリンピックが、ボルダリングなどの市民参加型の身近なUrbanスポーツを、正式種目として採用し始めているという事実も意識しました。オリンピック・パラリンピックがそうなら、モータースポーツだって、誰もが参加しやすいUrbanスポーツの方向に向かっていくべきじゃないかと。
―― あの、もしかすると、いずれオリンピック・パラリンピックの正式種目にすることを狙っていたりしますか?
舘内 はい、もちろん狙っていますよ(笑)。日本発のオリンピック・パラリンピック種目としては、柔道や競輪とかがありますけれど、それに続く競技にしていきたいですね。Urbanな上にSDGsでもあるから、オリンピック委員会も採用しやすいはず。今後の進展にぜひ期待してください。
このインタビューで、われわれが最初に覚えた戸惑いと二つのギモンは、一瞬にして氷解した(氷上なだけに)。そして、氷上のERKがどんな走りを見せてくれるのか、好奇心が一気に沸き起こり始めた。
① 電気レーシングカートによる氷上スポーツがいずれはオリパラ競技に!?
② 氷上のドリフトに氷の粒が舞い、笑顔がリンクにあふれた!
③ 老若男女が楽しめるピースフルなモータースポーツの今後に期待大!
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