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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.38 豪雪で立ち往生して命の危機に。どうすれば助かる?(後編)

2019年1月29日更新

豪雪ガス欠_2web

豪雪となったときは
どんなタイヤでも立ち往生!?

豪雪による交通トラブルを避けるにはどうすればいいのか、Iさんのケースを元にして考察してみましょう。

まずタイヤ選択について。

Iさんは行き先が雪になるという天気予報を聞き、愛車にスタッドレスタイヤを履かせました。これはまずまずのチョイス。間違ってはいません。

ただ、実際には、Iさんは突然の豪雪で立ち往生することになりました。大量積雪のなかでは、いかなスタッドレスタイヤであっても走行不能となることもあり得るわけで、Iさんのチョイスは、そういう意味では100点満点ではなかったということになります。残念ながら。

では、もしIさんがタイヤチェーンをクルマに積んでいたとして、それをスタッドレスタイヤの上に装着していたら、どうだったのでしょうか?
たぶん、スタッドレスタイヤだけのときよりは力強く雪道を進み、それなりに温泉宿に近づいたであろうとの想像はできます。
しかし、それも積雪の量次第。超がつくほどの大量の雪が積もっていれば、やはり立ち往生となった可能性は否定できません……。

結局、タイヤ云々以前に、先行車がまったくいない大量降雪中の山道に分け入ったこと自体が無謀だったということでしょう。Iさんには「いまの日本の雪を甘く見てはいけない」、そういう意識改革に基づいた用心深い行動が必要だったのです。

なお、2018年の12月に国土交通省と警察庁が、大雪特別警報が発令された際に高速道路7区間と国道6区間の合計13区間でタイヤチェーン規制を導入することを発表しています。今後、これらの区間を走る場合には要注意。大雪特別警報が発令されたならば、たとえスタッドレスタイヤを履いていたとしても、タイヤチェーンを装着しなければタイヤチェーン規制違反となり、その区間を通行することができなくなります。

■国道
国道112号(山形県西川町志津~鶴岡市上名川/27キロ)
国道138号(山梨県山中湖村平野~静岡県小山町須走字御登口/9キロ)
国道7号(新潟県村上市大須戸~村上市上大鳥/16キロ)
国道8号(福井県あわら市熊坂~あわら市笹岡/4キロ)
国道54号(広島県三次市布野町上布野~島根県飯南町上赤名/12キロ)
国道56号(愛媛県西予市宇和町~大洲市松尾/7キロ)
■高速道路
上信越道(長野県の信濃町IC~新潟県の新井PA/25キロ)
中央道(山梨県の須玉IC~長坂IC/9キロ)
中央道(長野県の飯田山本IC~園原IC/10キロ)
北陸道(福井県の丸岡IC~石川県の加賀IC/18キロ)
北陸道(滋賀県の木之本IC~福井県の今庄IC/45キロ)
米子道(岡山県の湯原IC~鳥取県の江府IC/34キロ)
浜田道(広島県の大朝IC~島根県の旭IC/27キロ)

いまや、冬の道をドライブするときは、クルマにタイヤチェーンを積んでおくことがほぼ必須になっているということです。「規制になる、ならない」の前に、自分自身を守るために、タイヤチェーンを準備しましょう。

常に万が一を考えて
頻繁に給油する習慣を

つぎにガソリンの問題です。

Iさんはガソリンを給油しないまま山道に入って立ち往生し、結局ガス欠の憂き目に遭っているわけですが、山道に入る入らないの是非はともかく、これ自体は大いなる過ちでした。

頭のなかで燃費を計算して「まだまだ大丈夫」と考え給油しないのは、災害の多い日本の交通環境においてはリスクを呼び込む可能性が高い思考であり行為といえます。まして大量降雪中の山中に入るときに、それをしてしまうなんて暴挙に等しいといって過言ではありません。

2018年に『自衛隊防災BOOK』(マガジンハウス社)がベストセラーの一つとなりましたが、これには、「自衛隊あるある」として自衛官は平常時であっても自家用車のガソリンを決して半分以下にしないよう頻繁に給油しているという話が載っています。すなわち、万が一のときのことを考えた行動を常に心がけるのが大事だということ。われわれ一般ドライバーも、ぜひこうした習慣を身につけておきたいものです。

防災Book_web

参考までに紹介しておくと、路上でガス欠になったときは、各種ロードサービスに頼めばガソリン(一般的には10ℓ、多くは有料)を持ってきて給油してくれるようになっています。ただし、Iさんのようなケースでは駆けつけ自体が難しくなるため、その場合、このありがたいサービスも無力となってしまいます。
そのため、走行経路の先で給油困難が想定される場合には、ガソリンを入れたガソリン携行缶をクルマに積んでおくという方法もあります(法律で自分でガソリン携行缶に給油することは禁じられており、必ずガソリンスタンドの従業員に給油してもらう必要があります)。

ただし、自動車の整備、あるいは安全面からいえば、あまりお勧めできる方法ではありません。
繰り返しになりますが、雪深い山道などには立ち入らない・・・これが第一です。

生死を左右する行動とモノたち

最後に、豪雪で立ち往生してしまったときのIさんの行動、そしてモノについての検証をしておきましょう。

雪深く人気のない山中で立ち往生したIさんは、ロードサービスに電話したときにされた助言に従って車内に留まることを選択しました。これは大正解です。もし、クルマでから出て徒歩で移動しようものなら、大雪の中でほどなく凍死していた可能性が大だったことでしょう。

また、エンジンをかけている間、ときどきマフラー周りの除雪を行ったことも二重丸です。大量降雪の中でそれをしないままでいたら、排気ガスが車内に入り込み、一酸化炭素中毒で死亡していたかも知れません。
とはいえ、除雪を手で行っていたのはいただけません。できれば、クルマにスコップを常備しておきたかったところ。長靴や軍手があれば、さらによかったといえます。

さらに、エンジンが切れ、ヒーターが切れた後の車中待機の仕方についても合格点があげられます。偶然ではあるにしても、Iさんはクルマに寝袋を常備しており、これが、決定的な救命具となりました。
JAFの公式ホームページの「クルマ何でも質問箱」コーナーでは、「厳冬期の車中泊。寒さをしのぐ対策は?」という欄で、「冬の夜、エンジンを切ったクルマの中でも、寝袋(冬山用)に身を包めばなんとか一晩無事に過ごせる」いう実験の動画を公開しています。
登山やアウトドアレジャーをしないという方でも、災害時対応という観点でクルマに寝袋(冬であれば、冬山用)を用意しておくことを検討してみるべきなのかもしれません。

それ以外で、冬のドライブ時にクルマに積んでおくべきモノとしては、雪中で動けなくなったときに他車に引っ張ってもらうための「牽引ロープ」、バッテリーが上がったときに他車から電気をもらうための「ブースターケーブル」、凍結した鍵穴の解氷やフロントガラスの霜を取るための「解氷剤」、夜間の作業や救援合図に利用できる「懐中電灯」などが挙げられます。Iさんのように長時間立ち往生したときの備えとしては、自身のエネルギー源とするために「チョコレート」などの食料と、「飲料水」を常備しておくことも大切です。

豪雪が頻発する日本の冬のドライブは、ときに命を賭けたドライブになり得、その危険性は春の声を聞く3月まで続きます。こうした事実をしっかりと認識し、万全の備えをした上で出かけるようにしましょう!

Vol.38 豪雪で立ち往生して命の危機に。どうすれば助かる?(前編)

Vol.38 豪雪で立ち往生して命の危機に。どうすれば助かる?(後編)

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