日本EVフェスティバルの後半の模様と、閉会式についてルポする。
コンバートEVレースに加え、自動運転車によるエキシビションレースまで行われ、会場は次世代自動車感でいっぱいになっていた!
〈コンバートEV1時間ディスタンスチャレンジ〉
史上初の赤旗も、ポルシェがWIN
昼休憩をはさんだ午後2時。フェスティバルの花形レースである〈コンバートEV1時間ディスタンスチャレンジ〉が始まった。
これは、その名のとおり市販エンジン車を改造したコンバートEVで1時間の周回数を競うレース。鉛電池クラスとリチウムイオン電池クラスの2クラスが一緒に走り、それぞれクラスごとで順位を争った。
レース中の電池交換、充電は禁止。5回のピットインとドライバー交替が義務付けられている。
鉛電池クラスで優勝した中央自動車大学校のポルシェ914
リチウムイオン電池クラスで優勝したTeam TAISAN CTSのポルシェ916(左)
レースは最初から波乱ぶくみ。
スタート時に3台がスタートできずコース上に止まったままとなり、フェスティバルのレース史上初の赤旗がでて、中断を余儀なくされた。
その後、60分のレースを46分に短縮して再スタート。時間が短くなったぶん、よりスピード感溢れるレース展開となったわけだが、各チームともこうした事態は想定外だったようで、バッテリーマネジメントやピットストップの回数などでかなりあたふたした様子を見せていた。
ただ、結果は下馬評どおりのものとなった。
鉛電池クラスは、中央自動車大学校の青いポルシェ914のコンバートEVが30周という記録で優勝を果たした。そしてリチウムイオン電池クラスでは、Team TAISAN CTSの黄色いポルシェ916をコンバージョンしたマシンが46周で優勝を遂げた。
ちなみに、中央自動車大学校チームは、学校でのEV活動をTeam TAISANとの共同プロジェクトで行っており、そのため両チームはダブル優勝の趣きも醸し出していた。
それにしても、あのポルシェがタイヤの摩擦音と微かなモーター音以外、ほぼ無音のまま猛スピードで走っている光景は不思議だった。気持ちが落ち着かず、お尻がむずむずした。
しかし、その一方で、このEVレースを最初のレース観戦とする若い人がいたとすれば、エンジンを載せたポルシェによるレースを「うるさい」と評し、こっちのほうが観ていて気持ちいいと捉える可能性も決して少なくないだろうとも思った。
そう、クルマの価値観もレースの価値観も時代とともに変わっていくということなのである。
〈自動運転競技車タイムアタック〉
急速進化への期待と不安がないまぜに
午後3時15分、フェスティバル最後のレースである〈自動運転競技車タイムアタック〉が行われた。
これは、人ではなく自動運転のための機器類だけを載せた小さな電気カートが、サーキットのコースを何秒で1周できるかを競うエキシビション競技。フェスティバルでは2年前から続けて開催しており、今回は2台が出場した。
残念ながら1台はコースアウトでリタイアとなってしまったのだが、もう1台は1周を11分27秒686という実にゆっくりとしたペースながらも完走を果たした。
自動運転技術の急速な進歩のことを考えれば、きっといつかは、これら自動運転カートが人が操るカートを追い抜くほどのスピードで完走する日がくるのだろう。そうなれば慶賀の至りだ。
ただ、この日、ドライバーたちが繰り広げてくれた熱いレースのことを振り返れば、自動運転の競技から受ける感動はまったく違うものになるであろう。それを想像すると、多少、複雑な思いがしないでもなかった。
〈表彰式・閉会式〉
25周年には「EV音頭」が鳴り響く!?
すべてのレースとイベントが終了した午後3時45分から〈表彰式・閉会式〉が開かれた。
〈表彰式〉では、各レースの上位入賞者のみならず、さまざまな“記録”に対する表彰も行われた。
たとえば、出発地点からフェスティバル会場までの移動で排出したCO₂排出量が1番少なかった人に「CO₂排出量診断トップ賞」が贈られていた。当然ながらEV、FCVといったクルマは排出量ゼロなので、それらに乗ってきたオーナー6名がすべて表彰の対象となった。
このほかレース中にドライバー交替を繰り返し、多くのドライバーが乗車したチームには「いっぱい乗せたで賞」、フェスティバルを盛りあげた人には「あんたが大賞」(フェスの最高賞)など、このフェスティバルがEVの世界を思いっきり楽しむことを重視している証のような表彰がたくさんあった。
『いっぱい乗せたで賞』受賞シーン
『あんたが大賞』受賞シーン
最後の〈閉会式〉は、秋の早い夕暮れの中で執り行われた。
舘内代表は、「来年はフェスティバルも記念すべき25周年を迎えます。フェスティバルはお祭りですから、大きな櫓でも建てて、その周りをみんなでEV音頭を踊りながら回るというのはどうかな、と思っています」と述べた。
舘内代表は冗談好きなので、櫓とEV音頭の実現の可能性はかなり低いと見るのが妥当だ。
しかし、なにか想像を超えた楽しい25周年記念イベントが加わることは間違いないだろう。そうしたことへの期待を胸に、参加者たちは「来年の11月3日も会場に足を運ぼう」と決意して、三々五々暗くなった会場を後にしたのであった。 (続く 文:みらいのくるま取材班)
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