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次世代エコカー勉強会〈13時限目〉国土交通省が『自動運転車の安全技術ガイドライン』を策定 – 日本は世界最高峰の安全性を誇る自動運転車を登場させる!?

2021年3月18日更新



レベル3~4の自動運転車に
10の安全要件を求める

国土交通省は、2018年9月12日に『自動運転車の安全技術ガイドライン』を公開した。

これは、「自動運転システムが引き起こす人身事故がゼロとなる社会の実現を目指す」という究極の目標を掲げ、策定されたもので、自動運転車を開発している日本の各自動車メーカーなどが、今後、発表・発売するクルマにどのような安全技術(対策)を搭載すべきかの指針を示すものである。

具体的には、これから開発・実用化されるレベル3(システムの要請に応じて手動運転)~4(限定地域での完全自動運転)の自動運転車には、「自動運転システムが引き起こす人身事故にあって合理的に予見される防止可能な事故が生じない」ことを求めている。それを実現するために、「運行設計領域(ODD)の設定」「自動運転システムの安全性」「サイバーセキュリティ」など10項目を設定し、自動運転車はこれらの安全性に関する要件を満たすことで、その安全性を確保しなければならないとしている。

私たちは、「自動運転車」と聞くと無条件に「安全」をイメージしがちだが、10項目に書かれている詳細を読むと、そこに至るまでにやるべきことが数多くあることを再確認させられる。

自動運転車の安全性に関する要件(表)web

日本が自動運転車の
国際基準をつくる?

今回、国土交通省は、なぜこの『自動運転車の安全技術ガイドライン』を策定するに至ったのか?

一つには、自動運転車の(安全等に関する)国際基準がまだ確定していないことが、大きな背景となっている。

現在、国際基準がない中、各国のさまざまな企業が自国のルールのもとで自動運転車の開発・実用化を進めている。そのため、残念なことに開発中の自動運転車による事故が少なからず起きてしまっている。今春、アメリカで公道を走っていた自動運転車が、夜間に道路を横断していた歩行者を死亡させるという痛ましい事故があったことは記憶に新しいところだ。

政府は4月に公表した「自動運転に係る制度整備大綱」の中で、「車両による安全性の担保」のために「新技術に係る安全基準の検討」を行う旨の考えを示していた(観点記事:次世代エコカー勉強会〈11時限目〉2020~2025年の交通社会は自動運転化で大変革!?)。今回の『自動運転車の安全技術ガイドライン』公開は、それを受けてのものであると考えられる。

これまで、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)などで自動運転にまつわる基準を作るための議論が行われているが、先述したように自動運転車の(安全等に関する)国際基準はまだない。国土交通省としては、まず国内で先行して自動運転車の(安全等に関する)基準を作り、それを踏まえて国際的な議論を主導していく狙いがあると思われる。

実際、ガイドラインには意気軒昂にこう書いてある。

「世界で初めて、自動運転の実現にあたっての安全目標を設定し、自動運転車の開発・実用化の意義を明確化 」し、「日本が議論を主導してきた国連における国際基準づくりにおいて、ガイドラインに示した我が国の自動運転車の安全性に関する考え方や安全要件を反映させ、我が国の優れた自動車安全技術を世界に展開する」と。

さて、どうなるか? 今後の展開に注目したい。

なお、このごろ「日本の自動運転開発は遅れている」との意見が多く聞かれるようになっている。これは、日本の自動車メーカーなどがレベル2あたりから段階的に自動運転車の開発に取り組んでいるのに対し、欧米のメーカーなどがいきなりレベル5の完全自動運転の開発に取り組んでいるように見えることに対する憂慮の声である。

多少誤解を覚悟でいえば、日本のメーカーは従来型の事実重視のニュース発信にとどまっているのに対し、欧米のメーカーは自社の未来に向けたビジョンを織り込んだプレゼンテーションをも発信しているという、姿勢の違いが生んだ憂慮であるとは思うが…。

一歩譲って、現在、日本の自動車メーカーが開発スピードで欧米のメーカーに後れを取っているとしても、最終的に同じレベル5に到達するだろうことを考えれば、そう憂える必要はないのではないかと思えなくもない。

なぜなら、クルマの安全性についての思想と技術面において常に世界をリードしてきた日本の自動車メーカーが、その強みを活かしつつ、厳しいガイドラインに沿った開発・実用化を着実に進めていけば、いずれ世界最高峰の安全性を誇る完全自動運転車を登場させるであろうと思うからだ。

ウサギとカメのお伽話に喩えれば、日本はカメなのかもしれない。そうであれば、ぜひ賢く着実に歩を進めて一等賞に輝いてほしいものである。(文:みらいのくるま取材班)

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