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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2018年7月25日更新
「同居の親族」と
「別居の未婚の子」に注意を
一般的に、保険会社が定める自動車保険の「運転者家族限定特約」における家族の定義は以下のようになっています。
① 記名被保険者の配偶者
② 記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
③ 記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
記名被保険者とは、通常は(a)「契約したクルマを主に運転する人」のことをいうのですが、場合によっては「自動車検査証上の所有者・使用者」など、(b)「契約したクルマを自由に支配・使用する正当な権利を有する人」であることもあります(a・bいずれかとなります)。
なので、今回のケースでいえば、その時点では主に運転はしないものの(過去からの経緯でいえば主に運転しており)、クルマを所有し、車検などのメンテナンスも行うDさんが記名被保険者であり、その配偶者はDさんの妻ということになります。
保険用語の難しさは多少あるにしても、ここまでは、比較的わかりやすいといえるでしょう。
意外にわかりにくいのは、「同居の親族」と「別居の未婚の子」という表現です。
一見して、だいたいの意味は伝わるのですが、個別の事情に当てはめると「この場合はどうなるのだろう?」と判断に迷う場合もありそうです。そのため、Dさんのように「家族限定なんだから、自分の息子は保険の対象者」と思い込むケースも出てきます。
しかし、今回のDさんの悲劇は、その大ざっぱな思い込みから生まれました。理解をなおざりなままにしておいてはいけません。ここでは、家族限定特約をもう少しかみ砕いてお話しますので、参考としてください。
同居していれば
補償の対象者は広い
家族限定特約でいう「同居の親族」とは、同じ家に住む6親等内の血族(記名被保険者の親族)および3親等内の姻族(配偶者側の親族)のことを指します(以下の図をご覧ください)。
つまり、一つ屋根の下に住んでいれば、自分の息子だけでなく、従兄弟であろうと妻の姉妹であろうと家族限定特約の対象となるわけです。
そう、家族限定特約って意外に太っ腹なところがあるんです。
別居の未婚の子の条件は
なかなかにシビア
つぎに「別居の未婚の子」。こちらは逆にかなり狭量です。
まず、別居という条件ですが、これは住民票を変更しないで別居している場合でも別居と見なされます。よく学生が住民票上の住所を実家にしておいて、学校近くのアパートに住まうケースがあるわけですが、普段の生活の拠点がそのアパートである以上は保険的には別居ということになるのです。
だから、たとえば今回Dさんが「息子の住民票の住所は我家となっているので“同居の親族”であり、家族限定特約の対象になるはずだ!」と強弁したところで、それが認められることはないのです。
そして、さらに、未婚の子に限るという縛りがあります。
同居していれば、結婚していたとしても家族限定特約の対象になるのに、別居した状態で結婚してれば、即対象から外れることになります。
しかも、この未婚の子は「婚姻歴のない子」という意味なので、別居している状態にある「一度結婚をして、その後離婚した子」は、「別居の未婚の子」とはなりません。もしDさんの息子が結婚したあと、すぐに離婚して、その後に事故を起こした場合でも、家族限定特約からの補償はやっぱり出ないことになるのです。
こうした説明を聞くと、たぶん、Dさんのみならず多くの人がこう考えると思います。
「別居して結婚していても、息子は息子だし、将来的に家督を継ぐ可能性も大きい。だから家族であることに変わりはなく、家族限定特約の対象者となるべきだ…」
たしかに、一理ありますが、保険の世界ではそうはいきません。結婚して世帯を構えることによって、別々の家族ということになるのです。
しかして
Dさんの取るべきだった方法は?
最後に、息子の結婚にあたって、Dさんは自動車保険をどうすべきだったのかということに触れておきたいと思います。
Dさんが、そのまま自分の保険を使うとすれば、答えは一つです。
「家族限定特約を解除し、運転者を限定しない内容の契約にする」が、もっともいい方法となります。そうすれば、別居している既婚の息子でも保険の対象となり、万が一の際にも補償されます。
これは、対象者の範囲が広がるため、当然保険料がアップするというマイナス面が生じます。しかし、息子が「同居の親族」でなく「別居の未婚の子」でもない以上、それは致し方ないこととして受け入れるしかありません。
ただ、そのなかでも多少は保険料が抑えられる方策はあります。Dさんが57歳であることから、保険料が安くなる35歳以上補償の年齢条件(保管会社によって年齢条件設定は多少違います)を付ければいいのです。
「未成年の息子が運転するのに、なぜ35歳以上補償の年齢条件を?」と思われるかもしれませんが、大丈夫です。年齢条件の適用範囲は、記名被保険者=Dさんと同居する親族が対象となるので、別居している息子さんはその年齢条件の対象から外れることになるからです。
※これは、前述したように運転者を限定しない契約内容でのことです。
頭がこんがらがってしまいますが、一般的にクルマは同居の家族が使用します。その家族が35歳以上補償の年齢条件を設定しているとして、(別居している親族も年齢条件の対象内と定めたならば)日頃別居している親族が帰省などのときにクルマを運転した場合、その短期間のために年齢条件を変更しなければなりません。
これは、煩雑ですし、ある意味でミスや漏れなどの可能性もあります。それで、別居の親族は対象外となっているのです。
だから、もし別居の親族が帰省したときにクルマを運転して事故を起こした場合などは、保険が適用されます。
人生の節目には、
専門家に相談することも大事
最後に一つ。
前編の最後に述べましたが、家族の誰かが「別居する」「結婚する」あるいは別居していたが「同居する」など…、こうした人生の節目には、いろいろな契約や手続きなどをチェックして、場合によっては変更する必要があります。
こうしたチェックや変更について、自分だけでは心細いと思ったときは専門家に相談しましょう!
Dさんは「継続でよい」と自分勝手に決めつけ、保険の相談をしませんでした。もし、保険会社(代理店)に相談していたら…、悲劇は回避できていたかもしれません。
そして、相談のタイミングですが、その節目の「後」でなく「前」…保険など契約ごとについてはこれが鉄則です。くれぐれもお忘れなく!
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