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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2018年7月25日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
Dさん(57歳・会社員)は、37歳で結婚し、その1年後の38歳のときに男の子を授かった。
一人息子ゆえ、妻ともどもずっと溺愛し育ててきたのだが、彼が18歳になったとき、隣県の郊外にある芸術系大学に入学することになったため、離ればなれに暮らすことになった。
Dさんにとって、それは相当に寂しいことだった。しかし一方で、息子が自分の好きな道を迷いなく歩んでいることがとても頼もしく思え、できる限りのサポートをしてやることにした。
愛車を名義は自分のままにして息子に貸してやることも、その一つだった。
自分は、平日は会社にいっているのでほとんどクルマに乗らない。休日も息子が大きくなってからはあまりドライブに行かなくなった。だったら、交通の不便な郊外での通学や友人とのドライブなどで使うことが多くなるであろう息子に預けておいたほうが断然にいい、そう判断したのだ。もし、どうしてもクルマが必要になったときは、息子のところまでいって引き取ってくればいいだけで、そのたびに自然な形で顔を合わせられるのも悪くないように思えた。
もちろん、車検などの車両のメンテナンス代や自動車保険も引き続きDさんが支払うことにした。保険に関していうと、いままでの保険を家族限定の特約にすれば、息子が新規に保険契約するよりもかなり安くなることがわかったので、その方法を採ることにした。ときに素っ頓狂なことをしでかす息子ゆえに、Dさんは事故がとても心配だったが、その保険はフルな内容に設定されていたので、なにかあったとしてもある程度はカバーしてやれるだろうと思っていた。
それから1年、幸い息子は無事故で過ごしてくれた。驚かされたのは、クルマのことではなく、付き合っていた同級生の女性と、いきなり「結婚する」といいだしたことだった。やることが、やっぱり突拍子もなかった。
当初、相手の親御さんは「学生結婚なんて!」と大反対していた。さもありなん…ではある。
しかし、Dさん自身は自分が晩婚で子どもが一人しかもうけられなかったという悔いに似た思いをもっていたことから、「若いうちの結婚も悪くはない」と考えるに至っており、妻ともども息子たちに加勢した。
その結果、結婚式は卒業後に行うこととしつつも、入籍だけは果たさせることができた。「若い二人の行く末に幸あれ。めでたし、めでたし…」となったのだった。
ところが、その直後に思いもかけぬ悲劇が起こった。息子が新妻とドライブに出かけたとき、おしゃべりに夢中になっていたために交差点に停まっていた信号待ちのクルマに気付かず、スピードを出したまま後ろからドーンと追突したのだ。二人はエアバッグのお陰でかすり傷程度で済んだものの、相手のクルマは大破し、ドライバーは大ケガを負ってしまった。
警察に連絡したあと、息子はすぐにDさんに涙声で電話を入れてきた。
「お父さん、どうしよう、たいへんなことになっちゃった」
話を聞いてDさんも大きく動揺したが、極力冷静を保ちながら声を絞り出すようにこういった。
「お前も嫁さんもケガがないなら、とりあえず、なによりだ。とにかくいまは、警官のいうとおりに行動するようにしなさい。で、相手の方へのお詫びというか補償については、お父さんが保険会社に連絡して、なんとかするから……」
その後、Dさんはすぐに保険会社に連絡を入れた。するとそのときは「すぐに対応します」との心強い返事がもらえた。
が、しかし、数日後、驚くべき内容の連絡が入ってきた。
「あの、事故を起こされた息子さんですが、別居してご結婚されているので、家族限定特約にある対象条件の『別居の未婚の子』に当たりません。ですので、まことに残念ですが、今回はご契約の保険で補償することができません」
えええー!
Dさん、そして息子くん、幸せの絶頂からいきなり奈落の底に突き落とされたのであった。
未成年者の保険料を抑えるには
家族限定特約の選択がグッド
Dさん、息子さんにずいぶんと甘い父親のようですが、物事の詰めもいろいろ甘いところがありました。というか、Dさんは子離れができていないし、息子さんは親離れができていない・・・そんなところから、ほころびができたのかもしれません。
そして、事故を起こしたにもかかわらず保険の補償がまったくでないという、とんでもない事態に直面してしまいました。
子離れ、親離れの話はさておき、検証していきましょう。
未成年の息子さんに新規に保険契約をさせず、自分がかけている保険を家族限定の特約にして安心を確保したところまではよかったのです。
免許取りたての未成年者による事故発生の確率はほかの年齢層と比べてかなり高いため、すべての保険会社がそのリスクを考慮して保険料を高めに設定しています。
車両保険まで付けたフルの契約をしたとしたら、諸条件および保険会社にもよりますが、免許取りたての未成年者(6等級)の保険料は年間で20万円超にもなります。たとえDさんが立て替えてやるにしても、支払いに多少の躊躇を感じる金額かもしれません。
しかし、今回Dさんが選んだ家族限定の特約を付帯する契約なら、そんなにはしません。仮にDさんの保険の等級が最高の20等級であったとしたら、同じ条件の契約でも年間の保険料は6~8万円程度と考えられます。
結婚など人生の節目には
保険の内容を確認
Dさんは、息子さんの結婚後もそのままの内容で保険の契約を続けてしまいました。学生結婚で結婚式は卒業後ということにしたとはいえ、息子さんは新しい家庭を持ったわけです。ここで、子離れの意識を働かせるべきでした。
息子さんへの支援についてどうすべきか考え、クルマや自動車保険(とくに家族限定特約の内容)について確認と見直しを行い、適切に対処してれば、あんな馬鹿馬鹿しい悲劇になることはなかったのです。
ただし、こうしたことが世の中にないわけではありません。契約を伴う事柄については、人生の節目ごとにチェックするようにすることが大切です。(後編に続く)
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