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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2018年6月26日更新
災害大国にはEVが不可欠
日本は災害大国だ。
頻発する地震だけでなく、近年は異常気象の影響で台風や集中豪雨といった災害も増えている。
国連大学が、世界171ヵ国の自然災害が起きる確率とそれに耐える対処能力を加味して計算したところ、日本の災害リスクは17番目に高いということがわかった。これは先進国のなかではワースト1位である。
いつ起きても不思議ではない災害。
ひとたび起きれば、たちまち命の危機が訪れる。しかも、多くの場合、交通インフラはもちろんエネルギーインフラやライフラインが寸断されるため、命からがら避難所に駆け込んだとしても、普段どおりの安定した生活は叶わない。大きな苦労が強いられること必至なのである。
ただ、そんな厳しい状況でも、かすかな希望の光明はある。EVと外部給電器があれば、ある程度は不便・不安を軽減できると考えられるのだ。
災害直後に停電しても、EVからの給電があれば数日間は家電が動かせる。また、電力網の復旧はガソリン供給網よりも比較的早いと考えられるため、電気を使って走るEVは救援物資の運搬やボランティア移動の頼もしい足となる。さらに、どこかにまだ停電している避難所などがあれば、そこまで走っていって電気が届けるということも可能だ。
つまり、災害大国日本においては、より多くのEVがあればあるほど、より多くの人たちの心身の健康、さらには命を担保することができるのである。
日本EVクラブは、『EVスーパーセブンで東北被災地を巡る旅』の6日目となる5月22日、宮城県名取市にあるイオンモール名取で、この“災害時に役立つEV”という側面をアピールするために、「給電カフェ」と「電気自動車『いいこと』講座」の二つのイベントを実施した。
〈5/22 イオンモール名取で給電カフェ〉
EVの給電能力をはじめて知ってビックリ
イオンモール名取に来店した人たちに、アウトランダーPHEVなどからの電気を使って淹れたコーヒーや紅茶を無料で振る舞う「給電カフェ」は、屋外で午前10時から午後3時まで5時間にわたって実施された。
ここでコーヒーや紅茶を手にした人たちは、最初のうちはだれも、このイベントを普通の飲料サービスイベントと捉えている風だった。だが、「実はこのコーヒー、EVの電気を使って淹れたものなんですよ」「被災して停電しても、EVがあれば何日間か家電が使える状態になるんですよ」とカンタンな説明をされると、一様に「へえっ」と目を見開き驚いていた。
そう、ほとんどの人が、EVに給電できる能力があることを知らなかったのである。
会場に展示してあったEVスーパーセブンの運転席に息子の翔太くん(1才)を座らせていた名取市在住の荒川理子さん(37才)もその一人。EVがエコで静かに走るクルマだとは知っていたけれど、給電までできるとは夢にも思わなかったそうだ。
「私、もともとEVのエコな部分には関心をもっていました。ときどき交通量の多い街中で、息子にガソリン車の排気ガスが当たるのを避けるために、だっこして少しでも上のほうにあげたりしているんですけど、世の中がEVでいっぱいになれば、いちいちそんなことをしなくてもよくなるはずなので、ぜひそうなってほしいなあって思ったりしてたんです」
「で、今日は、EVの電気があれば、災害が起きて停電になっても家電が使えるっていうことも知って、ビックリです。ますますEVのことが好きになりました」
「いまはまだ価格が高いみたいなので、正直、買うことはできません。でも、いつか手ごろな価格の軽のEVでも出れば、夫を説得して、ぜひ乗り替えたいなあって思います」
「ところで、日ごろ息子はクルマのことを『ブーブー』っていっているんですけど、もし静かなEVに乗ったら、彼はいったいなんて表現するんでしょうね。EVに関しては、それも大きな興味のひとつになっています(笑)」
なお、給電カフェの会場では、午前中にロータスクラブ(全日本ロータス同友会)の日本EVクラブ加盟を公式発表する催しも行われた。その詳細については、過日にアップしたニュース記事「【NEWS】ロータスクラブが日本EVクラブに加盟 ~ 全国1,000以上の整備会社がEVシフトを支援」をご覧いただきたい。
〈5/22 イオンモール名取でトークイベント〉
EVへの乗り替えは嗜好を加味して行おう
もうひとつのイベント「電気自動車『いいこと』講座」は、午後1時からイオンモール名取の屋内イベントスペースで開催された。
十数人の聴衆を前にして、日本EVクラブ代表の舘内端氏、旅のメインドライバーである堤健一氏と寄本好則氏、そして特別ゲストである東北大学災害科学国際研究所の柴山明寛准教授の計4名が、冒頭に紹介したような災害大国日本の実態と災害時におけるEVの給電機能の効用の大きさなどについて熱いトークを繰り広げた。
このトークイベントでとくに印象的だったのは、自身も仙台で被災した経験をもつという柴山准教授の「災害大国日本におけるEV化促進の必要性」に関するユニークかつざっくばらんな発言だ。その内容は舘内代表が夢見ているEV給電ネットワークの構築にも繋がるものとなっていて、じつに興味深い。ということで、以下、要約と改編を交えた形で、発言のあらましを紹介しておきたい。
「私たちは東日本大震災のときに被災して、全国から多くの救援をいただいたわけですが、あのときの恩返しがまだできていません」
「では、どうすればいいのか。われわれ被災した東北地域の人たちが、EVをたくさん持つようになればいいんです。もし今後、たとえば南海トラフ地震とかが起きてたくさんの人たちが被災したとしたら、自分たちのEVをそこまで持っていって『どうぞこの電気を使ってください』と支援ができるようになるわけで、すなわちそれがとてもいい恩返しになるように思うんです。ということで、みなさん、ぜひ、前向きにEVへの乗り替えを検討してください」
「ただ、EVであればなんでもいいから乗り替えるべきといいたいわけでもありません。実をいうと、私の自家用車は、いまだにガソリン車です。理由はその車種がとても気に入っているからです。その車種がPHEVにでもなれば、迷いなく乗り替えますが、まだそうはなっていないわけで、だったら無理してすぐにEVに乗り替える必要はないだろう、そう判断しているのです」
「EVがいくら社会に役立つ存在だからといって、個人の嗜好を無視してまで乗り替えるのは賢明ではない。後悔というか、なんか嫌な気持ちが残ってしまいます。そんな感じのままでEVを運転する人たちが増えるというのは、望むべき交通社会のあり方とはいえません」
「これから、どんどん多くの車種がEV化、PHEV化されていくはずなので、そのなかに、きっとお気に入りが見つかるようになるはずです。EVへの乗り替えは、それからでも遅くはありません。それで、自分の好きなEVが運転できるようになれば、きっともっと楽しい世界が広がることでしょう。そして、そう感じる人たちが増えていけば、きっとよりよい交通社会そして給電機能による被災者支援のネットワークができあがっていくことでしょう。私は、そういう自然な流れのなかで理想的なEV社会が到来するのを待ち望んでいるのです」
この日のイベントがすべて終了し、旅は翌日から後半戦へと突入することになった。
主役のEVスーパーセブンはといえば、いまだ急速充電機能が失われたままで普通充電しかできない状態にあった。しかもほかにもさまざまな不具合がでていて、その都度、突貫修理をして持ち直していた。
とはいえ、チャーミングな外観とスムースな走りは健在で、それが行く先々で多くの人の注目を集め、この旅の“シンボル”としての役割は十分に果たしていた。そういう意味では旅は順調に続けられていたということができるだろう。
“Go! To the north.”ゴール地点である本州最北端の大間崎まであと約500キロ!
(文:みらいのくるま取材班)
【ルポ】日本EVクラブ『電気自動車EVスーパーセブンで東北被災地を巡る旅』
①・・・「全国にEV給電ネットワークをつくるのが僕の夢」(舘内端)
②・・・「世界初の外部給電器を生む契機となった中学校に感謝」(堤健一)
③・・・「東北の人たちがEVに乗れば震災支援の恩返しができる」(柴山明寛)
④・・・「EVで旅すると電気エネルギーのありがたさが身に染みる」(寄本好則)
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