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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2018年4月13日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
出身地から遠く離れた地方都市にある会社に就職したAくん(22歳・会社員)。慣れない土地で日々がんばっているのだが、ある日、大事な会議がある朝に寝ぼうをしてしまった。
「やばい!」
Aくんは、顔も洗わず通勤に使っているクルマに飛び乗り、いつも使っている幹線道路へとでた。ところが、あいにくの渋滞で、なかなか前に進みそうにない。
「うわ、このままじゃ大遅刻だよ」
焦ったAくん、住宅街を通る抜け道でのショートカットを思いつき、それを実行することにした。はじめて走る道だったので、どこをどういけばいいのかよくわからなかったが、スマホの地図アプリのナビを頼りに、ひたすら先を急いだ。嬉しいことに道はガラガラだった。
と、突然、めざす方向に「ゾーン30」と書かれた標識と道路の標示が現れた。1年前に教習所で教わっていたので、それがなんであるかは瞬時に理解できた。ここ数年、狭い住宅街などに設定されるようになった時速30キロ制限のゾーンのことであった。
急いでいるときになんたることかと脱力しそうになったものの、方角的にはそこを抜けるしかないように思われ、Aくんは時速30キロを守りながらクルマを前に進めた。
5分ほど走っただろうか、地図アプリをチラ見したら、もう少しで会社につづく幹線道路にでることがわかった。
「ふう、なんとか間に合いそうだな」
しかし、安堵もつかの間だった。ゾーン30が終わらない状態のまま、こんどはめざす方向に「AM7:30ー8:30」のクルマの通行を禁止するスクールゾーンの標識と道路標示が現れたのだ。
「ええっ!」
ここを通らなければ遅刻は必至だった。Aくん、途方に暮れてしまった……。
が、そんな折も折、クルマが1台、スクールゾーンのなかからゆっくりと走ってでてきた。それを見たAくん、「あ、堂々と違反してるよ」と思いながらも、「そうか、もう8時20分なので、通学している小学生がいないんだ。だから指定時間内でもクルマを走らせているんだ。だったら、走っても問題ないかな」という悪魔の囁きをはっきりと自覚した。
Aくん、意を決してクルマをスクールゾーンに進入させた。そして、なるべく早くゾーンを抜けるべく、時速40キロほどのスピードで走りはじめた。
しかし、それから1分もしないうちに思いがけないことが起きた。前方、右側の路地から急に1人の男の子が飛びだしてきたのだ。
「うわぁ!」
Aくん、とっさに急ブレーキを踏み、ぶつかる寸前で止まることができ、大惨事は免れた。しかし、男の子は急には止まれず、クルマのフロントノーズにトンッとぶつかり、後ろ向けになって道路に倒れた。
Aくん、すぐさまクルマからでて、声をかけた。
「だ、大丈夫?」
転んだ男の子はサッと立ち上がり、こう答えた。
「……うん、だいじょうぶ」
Aくん、パニックに近い状態になりながら、再び聞いた。
「カラダ、なんともない?」
男の子は、接触したときか、転んだときに打ったのであろう左手をさすりながら、こう答えた。
「うーん、ちょっとだけ痛いけど、ぜんぜん平気」
そして、男の子は、重ねてこういった。
「あのお、僕、学校に遅刻しちゃってるんで、もう行っていい?」
Aくん、その言葉を聞いて、心底ホッとした。
「ああ、そうなんだ。うん、わかった。じゃあ、気をつけて登校してね」
男の子は、それを合図に学校方向へと猛烈なスピードで走っていった。
Aくん、男の子の元気な後ろ姿をしばし眺めていたが、自分も会社に遅刻しそうだったことを思い出し、急いでクルマに乗り込み、会社へ向かうべくスクールゾーンを駆け抜けた。
結果は、ギリギリセーフだった。始業時間には遅れたものの、なんとか会議の時間に遅刻することだけは免れた。
それで、「めでたし、めでたし」……と、なるはずだった。
だが、事態は翌日になって暗転した。
Aくん宛に警察から連絡があり、「ひき逃げの嫌疑あり」と告げられたのだ。
警察によると、そうなった経緯はこうだ。Aくんのクルマに接触した男の子の左手小指の骨折がのちにわかり、交通事故による被害として警察に届けられた。そして、警察が事後現場付近に設置されている防犯カメラの映像を調べたところ、事故を起こしたのがAくんのクルマだと判明した。
よってAくんは、通行禁止道路での危険運転致傷とひき逃げの罪に問われるかもしれないとのことだった。
嗚呼、なんたることか……。
ゾーン30は
比較的新しい交通規制
Aくん、とんでもないことをしでかしてしまいました。いったい、この先どうなってしまうやら……。
と、それを語る前に、Aくんが通った「ゾーン30」と「スクールゾーン」に関する話をしておきたいと思います。これをちゃんとわかっていないと、みなさんもAくんのような悲劇に陥る可能性が大だからです。
まずはゾーン30から。
これ、Aくんのように免許取りたての若い人は、けっこう知っているみたいです。しかし、かなり前に免許を取った年輩の人たちは知らないことが多いようです。
そう、ゾーン30は比較的新しい交通規制なのです。
ゾーン30は、2011年からはじまった一定区域内の交通規制の名称です。
規制される内容は読んで字の如し。区域内を通行するクルマの最高速度を時速30キロに制限するものになっています。
このゾーン30に指定されるのは、高齢者や子どもなどの歩行者が多く行き来する生活道路がある住宅街で、かつ渋滞した幹線道路の抜け道として利用されがちな区域です。いまのところ、全国の約3500ヵ所近くの区域がゾーン30になっており、今後も暫時増えていくこととなっています。
ゾーン30の区域に入ることを示す目印(標識や道路標示)は、以下の写真のとおりです。
じつは、地域によって表示の仕方がバラバラという問題はあるのですが、一見してそこからゾーン30になるということが明らかに認識できるようにはなっています。
ゾーン30にした区域の
歩行者の死亡・重体が大幅に減少
参考までに、なぜゾーン30を時速30キロ制限にしたかというと、クルマと歩行者の事故においては、クルマの時速が30キロを超えていると歩行者の致死率が急に高くなるという統計があり、それを受けた形でこの制限速度が決まったようです。
事実、30キロに制限した区域における効果は相当に大きいようです。
警察庁が2011年度から2015年度までにゾーン30となった2,490ヵ所の1年間の人身事故件数を調べたところ、死亡・重傷に至る事故が以前と比べて26.8%も少なくなったという結果がでています。
Aくんは、この事実を知ってか知らずか、急いでいても時速30キロの制限はしっかり守りました。そこは「エライ!」といってあげてもいいでしょう。残念ながら、その後のスクールゾーンでの判断と行動は、すべてがまちがっていましたが……。
「ゾーン」での違反と事故にご用心!(前編)
「ゾーン」での違反と事故にご用心!(中編)
「ゾーン」での違反と事故にご用心!(後編)
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