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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2018年7月5日更新
免責5万円=自己負担5万円
Wくんが思わぬ出費を突きつけられることになった「免責」については、自分のクルマをもち、任意の保険に入っている人ならだいたいのことはご存知のはず。
そう、免責というのは、「損害が発生しても、保険会社が保険金を支払う責任を負わないこと」をいいます。そして、免責金額とは、保険者加入者などが自己負担する金額のことをさします。自動車保険の車両保険では、一般的に5万円もしくは10万円という設定が多いのですが、そのいずれかを設定した場合、事故を起こして保険が適用されるにしても、その金額分だけは自分で負担しなければなりません。
そして、事故などで修理費用は発生し、これに保険を適用した場合、まず免責分を自己負担し、残りを保険でまかなうということになります。たとえば、車両保険の免責金額を5万円に設定していて、クルマのボディに小さなキズがつく自損事故を起こして、その修理代が3万円ということになったとします。そうすると、車両補償の免責金額である5万円以内なので、保険による補償は一切でません。すべて自腹となります。
この免責がなぜ一般化しているかといえば、一つには「免責金額を設定することで保険料を安くすることができる」というメリットがあるからです。
また、クルマの修理などに保険を使うと「等級ダウン」が発生し、翌年以降の保険料が高くなるので、小さな自損事故の修理などは自腹ですますという人も多くいます。もともとそういう発想であれば、免責金額を設定しておいた方が保険料を安くできるので得だというわけです。
レンタカーで5万円以内の修理は借り手の負担
レンタカーの免責も同様です。レンタカーの料金に保険料がインクルードされているというリーズナブルさは、ある意味、免責があるからこそ可能になっているというわけです。
そして、その免責金額は、前編でもお話ししたように、対物補償と車両補償それぞれを5万円に設定しているケースが多いというわけです。ですから、事故を起こして保険が適用されるにしても、それぞれ5万円以内については自己負担しなければならないようになっているのです。
たとえば、信号待ちしているクルマに追突するという、100%自分が悪い事故を起こしたとして、相手のクルマの修理代が10万円で、自分のクルマの修理代も10万円ということになったとします。そうすると、対物補償の免責5万円と車両補償の免責5万円がそれぞれ適用されるので、その合計10万円は自腹となり、それを差し引いた10万円だけが保険で補償されることになります。
さらに、レンタカー会社の考え方をかなり捻じ曲げていえば、「自損事故で5万円以内の修理の場合は、お客さまにクルマを直していただきます」ということになるわけです。
免責をなくすCDWという制度
では、この免責、まったく動かしようがないものなのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
Wくんがレンタカーを借り受けするときに、受付の人が「免責補償のCDW加入料はどうされまか?」と聞いてきましたが、それこそが免責を帳消しにしてくれるキーワードとなっています(Wくんは、無視してしまいましたが)。
CDWとは、日本語でいうと車輌・対物事故免責額補償制度で、その名のとおり免責金額分を補償してくれるものです。これに加入しさえしておけば、上記で説明した自己負担はまったく発生しないことになるのです。
その加入料は、ほとんどのレンタカー会社で1,080円(ミドルクラスまで)~2,160円(ミドルクラス以上)という設定。軽自動車を借りたWくんのケースでいえば、1,080円を受付時に払っておけば、5万円の支払いを回避することができたというわけです。
Wくん、1,080円、支払っとくべきでした。それを払ったとしてもレンタカーに関する出費は合計で1日分のアルバイト代を超えることはなかったでしょう。逆に免責分の支払いはアルバイト数日分にものぼるわけですから。後悔先に立たずというか、安物買いの銭失いというか……(いろんな箴言が浮かんできます)。
なお、このCDW、免許取得後1年未満の人と、21歳未満の人は加入できません。また、過去に事故を起こした人も加入を断られる場合があります。加入を検討するにしても、その点については、ご注意ください。
NOCはレンタカー会社の休業補償
さて、免責とCDWについてはだいたい理解いただけたと思いますが、もうひとつ、Wくんが請求された2万円のノンオペレーションチャージ(NOC)というものがありました。これはいったいなんなのでしょうか?
じつはこれ、損傷したレンタカーの修理が完了するまでの休業損失を補償する一時金のことで、レンタカー会社に支払うものです。
休業期間によって金額が変動する可能性もありますが、ほとんどのレンタカー会社では、下記のような設定になっています。
このノンオペラーションチャージ、保険とはまったく関係のない出費なので、事故を起こした人にとっては「泣きっ面に蜂」のシロモノです。「なかなか納得し難い」という人もいるでしょう。ですが、自分がレンタカー会社の大切な商売道具を一時的にではあっても使えなくしたのだということを考えれば、社会通念上、致し方のない出費=補償であるともいえます。そもそも、その内容が盛り込まれた借り受けの契約を結んでいるわけで、そうであるならば、受け入れるよりほかに道はありません。
さらに、自走不可能なほどの事故を起こしてしまった場合、そのレンタカーを自動車整備工場までレッカー移動しなければなりませんが、この距離によってはレッカー代金を請求される場合もあります。
なお、レンタカー会社によっては、受付時にノンオペレーションチャージ支払い免除のための料金を支払う、オプションが設定されているところもあります。レンタカーを借りる際は、その制度があるかどうかを事前に確認しましょう。
いずれにしても、レンタカーを借りるときには、受付の人の説明をちゃんと聞いて、もろもろをどうするかをしっかり判断することが大切です。そして、起こりうる大きな出費のリスクを具体的にイメージして、「それは、困る」と思うのであれば、事前にわずかなプラスαの出費をもって対処しておくことをオススメします。Wくんのような残念な事態に陥らないためにも……。
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